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Jazzの数え方  作者: 秋月ナイフ
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JAZZの数え方

1st. set

その年の秋、俺とガンちゃんは、スパムのツケをどうやって返せばいいかばかりを話していた。

仕事の打ち合わせの合間、他に誰もいないところで。

どちらかが切り出すのはいつもその話しばかりだった。

元はと言えば、前の会社を潰して禁治産者になり、カードが作れなくなったガンちゃんがスパムの今野の「粋な計らい」により、ツケを許され、調子に乗ってツケをつけ続けたのが悪く、さらに調子に乗った俺がガンちゃんとともに数人の悪友や悪友女子達と散々スパムで飲み続けたのが悪い。

ここら辺で、なにが元はと言えばなのかがわからなくなっていると思うが、とりあえず今野がアルカィックな微笑みとともに「いつでもいいっすよ」と言ってくれたのを良いことに、はて、困ったことにまた年末に調子に乗って、俺の部下と悪友と六本木の朝キャバの女子達と(そしてガンちゃんと)シャンパンを派手に開けてしまったことが、俺らの胸をさらに苦しくさせていた。

もちろんその胸の苦しさは、二日酔いのせいもあったけれど。


ガンちゃんは、元々は小さいけれど優秀なCMプロダクションの役員兼プロデューサーだったけれど、小さいミス、たぶん資金繰り、で、そのプロダクションを潰してしまい、今は大手のCMプロダクションで契約プロデューサーをしている。

大手に移ったのなら、よかったじゃないかと思うかもしれないが、そこらへんはまた話すけどいろいろあってたいへんなんだ。

バツイチ、子供あり、53歳契約プロデューサー、

それがガンちゃん。

ガンちゃんガンちゃん言っている俺は、実はガンちゃんの10個下で、広告代理店で働いている。そういえば、ガンちゃんに会った当初はちゃんと岩崎さんと呼んでいた気がするが、いつからガンちゃんになっちゃったんだろう?まぁ、いいやw


今日も今日とて、傾向ばかりで対策が浮かばない「スパムツケ問題」の傾向と対策会議に疲れ、というか飽きて、さすがに今日はスパムじゃないだろうと、新橋のテッパンに向かうべく、赤坂のガンちゃんの会社を出てタクシーに乗り込んだ。

「ミノル、なんだか俺は、ツケやら負債の傾向と対策ばっかり考えてここ数年生きている気がするよ」

「気がするんじゃなくて、そうなんじゃないの。」

「ま、そうだな」

新橋のテッパンは元々、今ガンちゃんのいる大手プロダクションのプロデューサーだった木田さんが、「経営になんない限り、年取ったプロデューサーなんて、やっかいもの扱いされるだけだ。だったら、僕は小さくとも一国一城の主になる!」と50歳の時に宣言したので、てっきりみんな独立系のプロダクションを立ち上げるのかと思っていたら、蓋を開けてみれば一国一城は新橋の小さな居酒屋だったので、みんな膝が抜けた。

新橋国のテッパンの主=一国一城の主には変わりはないわけだが。

この木田さんもなかなか癖があって面白い人なんだが、それもまた後で話すとして、とりあえず新橋のテッパンには実は鉄板がない。

俺は木田さんが最後に手掛けたCMを一緒に作っていたのだが、

その合間の飲み会や打ち上げで、なぜか木田さんのセッティングする店が鉄板焼きの店ばっかりだったので、そのこだわり方にただならぬものを感じてはいたのだけれど、とりあえず新橋テッパンが出来た時に鉄板はなかった。理由はわからないし、木田さんに尋ねてもその理由を一切語らないし、尋ねるといつも陽気でマイペースの木田さんが無口になり、注文した料理が来るのがやけに遅くなるので、みんなもうそんなことは聞かない。

たまに来る一見さんが、地雷を踏むことはあるが。

とにかくテッパンには鉄板はない。形而下的に。

・・とか書くと村上春樹っぽい。そして、ちなみに木田さんは村上春樹が好きだが、そこにヒントはまったくない。

木田さんがテッパンを立ち上げた年齢が50で(現在55歳)、

ガンちゃんは、なにも立ち上げず、プロダクションを一軒立ち下げて、53歳な秋が今。

なにも立ち上げず、なにも立ち下げず、

いい感じのウイスキーのコピーみたいな状態でガンちゃんの隣で瓶ビールをちびちびやりながら、福井風おでんが来るのを待つ43歳の秋が俺である。

ちなみに福井風おでんには、とろろ昆布がかかっている。

木田さんは福井出身で一応新橋テッパンは福井の酒と肴と燻製の店ということになっているが、今俺の目の前には生絞りレモンサワーとエビ玉子サラダがあり、言うまでもなく、福井の酒と肴でも燻製でもない。でも、木田さんが作るレモンサワーはちゃんとレモンを絞って丁寧に作るのでとてもうまい。一応PRw

とくに話すこともなく、ただ黙々とテッパンのカウンターでガンちゃんと飲んでいたら木田さんが、「これ食う?」とコロコロコロッケの失敗したコロコロコロコロッケを出してくれた。普通のコロッケより小さいコロコロしたコロコロコロッケの端数?を揚げちゃった奴で実はこっちの方がコロコロコロッケよりうまい。魚の中落ちみたいなニュアンス?常連へのサービスだが、当然のごとく福井名物でも、燻製でもない。

「で、どうよ?赤坂は?」と全く興味なさげに木田さんが聞くと「どうもこうも」とガンちゃんが抜けた歯の隙間からハイライトの煙を吐き出す。

「そう。」以上話題終了。

これでかなり二人は意思疎通ができているのだから、言葉のつまらないあれこれで悩む俺らの商売あがったりだ。

と言っても、そんな大層なものばかりを作っているわけでもない。

今日もスパムツケ対策会議の前にちょこちょこっとやった企画打ち合わせは、五分くらい?福岡の明太子屋さんの福岡空港で流すというCM?というか映像の企画でまったく普通の明太子を本場というか、元祖というかでふわっと盛り上がり、討論になったが、ガンちゃんの「とりあえず、なんだかんだ言っても 明太子は明太子じゃねえか?」という一言で打ち合わせは終了。

最初っから、俺もそう思ってたし。

そういえば、後回しとか言いつつも、また木田さんの話しに戻りますが、木田さんが影ながら水面下で一国一城の主を目指しつつ(居酒屋主人ね)現役プロデューサーをやっていた頃、会社を移ったばかりの俺はまったく仕事がなくて、かなりヤバイ状態で少し鬱に入っていた。

前の会社はいわゆる外資で、そこそこの地位にいたものだから、放っておいても仕事は来るし、放っておいてもそこそこチヤホヤしてくれるし、前の前の会社に比べると(転職計2回)やっぱ外資はいいなぁ、クリエイティブにリスペクトがあって、なんて思っていたんだけど、ヘッドハンターに騙されて、ノコノコいわゆる国内大手代理店に移ってきたら、とんでもなく放っておかれて、仕事もないし、誰もチヤホヤなんかしてくれない。じゃあ、なんでまたわざわざそんな所に移ってきたかは、また後の話しで、問題はそういういきなり干されて鬱の人間の元にニコニコしながら来て、

「なんか仕事ないすか!?」と聞く木田さんである。

そして読解力のある人ならもうお分かりかも知れないが、その時木田さんはすでに着々と居酒屋の準備を始めていて、新規の仕事なんかさらさらする気がなかった、のに、なんかないすか、である。

その証拠に俺が気力を振り絞ってやっと勝ち取ってきた山形のお米屋さんのCMを満を時して、木田さん仕事もぎ取りました、また一緒にどうすか!と電話をしたら、間髪入れずに、「うっそ。」と言ってから、15杪黙って、

「悪い、俺、今月一杯で業界やめんすよ」だって。

じゃあ、なんでなんかないすか、なんて言うわけ?

「いやー、長年Pやってると、クセで」

クセかよ。


ところで、また話はいきなり唐突に飛ぶが、俺には今彼女がいる。26才、そして僕には妻と双子の娘がいる、しかもその26歳の彼女は僕の部下だ。

つまり本格的な社内不倫、何も足さない、何も引かない押し問答、、それもまた後々話すが、というか薄々お分かりかと思うが、この文体でもわかるように後々後々と問題引き伸ばすのが俺の悲しい性であり、ご想像の通り、問題は色々深刻になりつつある。

山形のお米屋のCFはなぜか爆発的にヒットし、当然というか、今までの実力通りというか、はっきり言って「ツイテタ」というか、その後なんだかんだとヒットを続け(やっぱ実力!)今の会社でも一応確固たる位置を築いて(なんとか)スタークリエイターなんて呼ばれて(へへん。)ちやほやされている時に出会ったのが、

その部下、桜野華。

仕事の問題は割りとスパッと気持ち良く解決していくできる男、それが俺(実力!)らしいのだが、プライベートは華やら、酒やらのおかげでまったく持ってグダグダ。

ガンちゃんにも、もちろん他にもまだまだ問題はあって、離婚した奥さんがアル中になりつつあるとか、それに業を煮やした娘さん16歳、いい子なんだこれが、が家を飛びだしたとか、今つきあってる彼女、通称カーサンが既に立派なアル中だったとか、あーもうキリないけど、おまけにも一つ、持病の痛風が最近どうも良くない、とか、、、とにかく問題だらけの現状で、もっか二人の共通の話題はツケと女性問題、たまに仕事の問題、という感じ。

もうこうなっちゃうと仕事の問題なんて全然楽勝で、むしろ仕事に問題があった方が、他の問題を考えなくても済むのだが、ま、この業界の仕事なんてたぶんに好、不況、運、不運に左右されるもので(実力はあんま関係ないのだ、ほんとは)ただいま、二人とも不運の方に左右されている状態で、二人で明太子なわけである。

結構、暇。

「ミノルは、どうなんだ、華ちゃんは?」

「どうっていうか、あんま変わってないよ状況は。」

「今日、来るのか?」

「んー、来ないと思うよ、まだ仕事してたから」

「あれか、お前の仕事か?」

「いや、違う、なんかあいつ、最近売れっこでさー」

「嬉しい限りじゃねぇか、育ての親としてはw」

育ててるウチに、こんななっちゃって最低だよ、俺ぁ。

桜野華と言う冗談みたいな名前のその部下は、かなりいわゆるエキセントリックな人で、その伝説にはことかかないのだが、例えば新商品のCMの競合プレの時に、誰にも知らせずにいきなりクライアントの研究所にアポなしで出向き、体良くお土産を貰って帰ってきたとか、生活態度(二日酔い、遊び好き、机汚い他)に業を煮やした管理職にワントゥワンで説教されている最中に面と向かってるのに寝てしまうとか、言ってるそばからメモを取っていたと思ったら、全然関係ない漫画書いてたとか、打ち合わせを平気ですっ飛ばすとか、まあ、他にも色々あるけど、今はそのくらいで勘弁してやる。

・・でも天才だ。

誰にも手に負えないという華を自分のチームに預けられた当初は、これは何か社内政治的な陰謀だと思っていた俺は、ある日、そのエキセントリックさは、天然な才能の発露であることに気づいた。(実はまだ社内陰謀説は捨てきれないのだが)まったく人の言うことを聞いてない、という噂は色々なところからもれうけたまわっていたのだが、それは聞くに値しないことを直感的に嗅ぎ分け、思考が何かくだらないことを言ってるオヤジやババアや業界ずれしたオタク達の先を行っちゃってるからで、猛獣使いもさにあらん、俺のように先に先に頭が回る優秀なディレクターの手によれば、先に先にが見事にマッチングして、それこそ、我が社の先に先に、業界の先に先に行き着いて、あれよあれよ、という間に華は才能を開花させ、華を中心に俺らのチームは社内の花形の仕事をするようになっていた。(華が開花w)

結果というか、その反動というか、華は超売れっ子になり、俺は育ての親として上司や同僚からお褒めの言葉を少なからずいただいたけれど、スタークリエイターの栄誉は花形の若い女子クリエイター=華に移り、親父ロートルクリエイター=俺は取り残された感じで、細々とガンちゃんと元祖だか、本家だかわからない明太子の仕事などをしている今日この頃。業界って怖いよ、ほんと。

そして、プライベートでは、俺と華の関係は、お互いの感情が後手後手に回り、恨みつらみが先へ先へと行き着きそうで、結構酷いことになっている。「結婚するって言ったじゃん!」するわけないじゃん!あと言ってねぇし!な、感じなので必要最低限の仕事の話以外で最近、華と言葉を交わしたことはない。

ガンちゃんは華と俺が付き合ってることを知っていて、てか元々アル中三人組と呼ばれながら、仕事の後、俺と華とガンちゃんで飲みまくっていたのが、僕と華のことの始まりだから、隠しようもない。そして、今非常にめんどくさいことになってることも薄々知っているが、知らないふり?大人だね~。しかっし、あー、めんどくさ。しかも、華にはまだまだ想像をぜっするような、めんどくさーい性質がある、それはまあ、おいおい解るゃw

面倒くさいから今はやめとく。


やっぱり、まだ飲みたりないからスパム行こうぜ、え、でも金あんの?ないからスパムなんだろ、てかツケどうすんのよ?うーん、ツケなー。ツケなー、じゃないよwwお客さん、ミッドタウンつきましたが、あーはいはい、いいよ俺が払うよタクシー代くらいは、あ、はいすいません領収書、はい、あーあ、また来ちゃったよ。

ほんと、ツケどうすんだよー、てかガンちゃん、ガードレールで寝ない!ちわーす、という感じで結局、新橋テッパンからスパムという、いつもの定番ロクデナシルートに突入。

「いらっしゃい!」

いつものアルカイックな笑顔、カウンターでグラスを磨きながら今野が迎える。最近全然目が笑ってないや、こいつ。不景気かな。

まだ、12時過ぎなので、店内は割と空いている。

スパムが混み出すのは、他の店が上がる3時過ぎ、早朝満員という変な店。(なんせ24時間営業すからw)

奥のテーブル席に合コン帰りの、これからが勝負のサラリーメンとOL女子計四名、カウンターにはいつもの常連タカナシと、ナン。ナン、おー、久しぶり。なんだナン仕事順調か?ん?無視か?酔っ払ってるのか?俺にも聞いて、超順調っす!うるせータカナシ、ナンと話してんだよ俺は。つめてーなーナカタさん、シャンパンおごってくださいよ!うるせーよw金ないっつーの。

・・副業柄、

とりあえず回りの状況をとっさに掴んでしまう癖がある。

・・あとたぶんトイレに若い女が一人、それの連れ合いのいけすかないお洒落な30代前半の男が一人、あれ?こいつどっかで見たことあんなー?業界?ま、いいやw

しかし、ナンとタカナシ噂通り仲良いな、この二人ホモ、ではなく、制作現場にフリーの職人を派遣する会社を経営しているナンと、服のデザインの会社を最近立ち上げたタカナシ、二人は若き経営者ならではの悩みも共通らしく、ウマが合い、結構二人で最近飲んでいるらしい、最近ナンとはご無沙汰だったが、まぁ、仲が良いってことはナンにしろ良いことwすまん、オヤジギャグwにしても、こちらが見ていて眩しくなるほどの熱くて、夢に向かって邁進しているヤングな勝ち組って奴か、いいなぁ。

ナンはその昔、裏稼業をやっていた頃からの、俺や今野、そしてガンちゃんの知り合いで、彼女のカナちゃんと本気で付き合い始めたのをきっかけに、スッパリ副業から足を洗い今の会社を立ち上げた。生まれが不幸で親も兄弟もない生い立ちも俺らと似たりよったりだから、特に今野が可愛がり、足を洗わせ、会社を立ち上げる前はこのスパムのカウンターにも立っていた。その時カウンターの中で、バーテン仲間として知り合ったのがカナちゃんで、あれよあれよという間に付き合い結婚した。いつも明るく、キレイなカナちゃんも、ナンのその滲みでるような優しさがわかるほどに苦労をしていそうで、二人はこのスパム関係で誰もが羨むおしどり夫婦。

あーいう人生いいなー、こっちは何も立ち上げず、、、立下げてばかりの二人組み、

「ガンちゃん、いつものー?」どーでもいいように今野が聴く。

「がー!」ガンちゃん、いきなりイビキでアンサーw

「ナカタっちは?」

「んー、なんにしよっかなー」かわいく言ってみた。

「ブッカーズ、いつものねw」

選ばせろよ!てか、俺も今野に「~っち」呼ばわりされるようなロクデナシになったか。

長髪細面チャームポイントはメッシュを入れたように光る銀色の一束の髪と右頬にスラリと入った傷の後、大人しそうで歌舞伎役者っぽい育ちの良さそうな顔してるからヤクザ系?なんとて思われることはなく、六本木のイケメンバーテンダーとして活躍しているが、無論、銀色の髪はメッシュなどでは、なく、昔、さることがあり、あまりの恐怖を体験し、それからはそこには白髪しか生えなくなった。自戒の念を込めて、染めずにいるんすよー、と六本木で再会した時は敬語で言ってたのに今はナカタっちかよ。

異常に若く見えるが、これでこいつも今年39、ウェルカム中年ワールド、お互い歳を取ったのうwちなみにあまりの恐怖の体験は、俺によるものだし、頬の傷を作った張本人も俺は知っている。

それはまたもっともっと後で話すとして・・あ、ガンちゃん、起きた。おはよ~。

そしてなんと華が来た。

トイレにいたのは華だったのか!て、笑えないやwでも笑え!

「なんだよーwお前、トイレなげーよwうんこかーw」

最低だな、俺。

「がー」あれ?ガンちゃん?狸寝入り?

華はもちろん無視、はいんだけど、あれあれ?当たり前のようにさっきのいけすかない30代前半の隣にピタッと座る。

あ、そうかー、こいつ、、、、

は、息止まった、でもまた吸おう、すーはーすーはー、心の深呼吸!なんかダサい不動産のキャッチコピーのようだな。

仕事以外で話しかけるなってか?

そっちが無視ならこっちも無視だ、ふん、すーはーすーはー、、、

それとはわからないように飲みものを用意しながら、今野が聴く、

~どーしちゃったの?あんたら?www

「がーーっ!」だからガンちゃんに聞いてないw

かっくじつに狸寝入りっすね、ガンちゃん。

〜連れの男誰?

いわゆる闇がたりと言う奴で今野が聞く、普通の人は今野が口を開いてることさえ、気がつかない。さすが、少年窃盗団元代表、業界テク使ってんじゃねぇぞ、ばーか。

「知らねーよ、そんな奴」

やべ、声でちった。とーぜんのごとく、僕には、そんな闇なんたらなんかできんぜよ。

「あれ?もしかして、Y&Hのナカタさんじゃないすか?」

〜あー、気づいちゃったw

うるせーよ、今野。俺も心の闇がたり!

「ですよね?あー失礼しました、お顔はいつも例のクライアントのロビーで拝見してるのに、たっいへん失礼しました私、」

「名刺見なくても知ってるよ、アオバの井上君、てかガンちゃん、いや岩崎さんの後輩だろ?俺より先に岩崎さんに挨拶するのがスジだろ?」

俺もガンちゃん呼ばわりだがw

「あ、たしかに岩崎さんだーww気づかなかったw」

「てめえの会社の先輩にすぐ気がつかないんじゃ、プロデューサー失格だな、自分が生え抜きのエリートだからって、契約のロートルなめてんだろ?」

がーっ!

「ちょっと!」

「なんだ、華?俺とは話したくないんじゃないのかよ。」

「さいってい、やっぱりあんた」

「それが元上司に向かって言う言葉か」

「あのー、ナカタさんも華さんも、落ち着いてw」今野半笑い、もっとやれってか?

「そーだ!ですよね!華ちゃんの上司ですよね、ナカタさん。てか元ですか?」

こいつマイペースだなー、神経あんのか?

「…華ちゃん?そこは桜野さんじゃないの?井上さん」

「あ。」

「やめなさいよ!」

「ちょっと代理店の女とヤッタたからっていい気になってんじゃねぇぞ!ヘナチョコPが!」

〜あっはははは、おもしれぇー。

がーがーがー!ん?ガンちゃん、Go?Goなの?

「ふ、ざ、け、ん、な!」

華がカウンターの上のジンフィスを井上越しに俺に投げつけようとした瞬間、

バリバリバリバリという音がして、俺らの前、カウンターの後ろの鏡張りの壁が崩れ落ちた。え?なに?なに?キャリー?

華、キャリーなの?

〜え?

「え。」

カウンターの隅で、仁王立ちになったナンがカウンターに置いてあったボトルを握り、再び投げつける、今野がふわりとカウンターを飛び越したが、間に合わず、メーカーズマークがガラスに飛び込む。ナンは荒れ狂ったように手当たり次第に壁にボトルをたたきつける。

「きゃー!」他の客。

「きゃー!」井上。

「なに!?なにこれ?!」華。

「ナン!」俺。

今野がナンの後方にしがみつく、得意の固め技だがナンには効かない。

なんせナンも元々裏稼業、185の80、170の50の大野では裏稼業で本気な時でもなければ敵わない。ちなみに175の60の俺だって可能性なし、で、こうゆう時は、そう、我らが190の90のオッさん、ガンちゃん!

「おはよ、」

「ん!」

「じゃ、よろしく」

「ん!!ん??」

寝ぼけてんじゃん!本気で寝てやがった。

とあきれている間に、音もたてずに床にナンを組み伏せたガンちゃん、さすが柔道3段!免状取り上げられてっけどw

「ナン!落ちつけ。」低いが強い今野の声、この気合いに大概やられる、ギャルもキャバ嬢もチンピラもヤクザも。

「タカナシ、なに言った?どうしたんだ、こいつ。」

「な、なにも」ヤング経営者の、裏の顔見ちゃった?

「あれ、あれ?」

ナンがまだ寝起きのガンちゃんの隙をついて立ちあがる。

「ナン、やめろ!」俺の叫びも虚しく、ガンちゃんに固められたまま立ちあがったナンはガンちゃんの右手が若干離れたのを見て、

突き飛ばしながらの〜、右フック!

はい、ガンちゃんダウン、カンカンカンカン!

からのー、振り向きざまに、軽いジャブ、今野に。

吹っ飛びました、今野。

軽いからなー、体重も性格もw

そうナン、こいつ、元ボクシング練習生。

実は裏稼業やってる時は、モンスタージジィと言われているガンちゃんより強かった。

ただ性格が優しすぎたんだけどナ。

華は、私関係ない、知らない、あージンフィズおいしい、平然とカウンターに座り煙草をふかす、また、こいつあっち行ったな。

そう、こいつ、病的な二重人格、今はさっきまでいた華じゃない。

他の客は誰も声も出せずに震えてる。もちろん井上もw

だっせー、こんなん全然平気だっつの、ね、ナン、話せばわかる。

ん、なに?あれ?ファイティングポーズ?なに?ん?

俺?!

「ナンやめろ!警察呼ぶぞ!」鼻血出てるぞ今野。

「がー」ガンちゃん、そこで寝たふりはシャレになんねぇぞ。

「警察呼ばれて、困るのは、あんたたちだろっ!」

カチーン。

「ナン、つまんねぇぞ」ちょい怒ったよ。

「殺すんすか?」

「は?死にたいなら相談のるが、今日はやめとくw」

「カナも殺すんすか!ナカタさん!」

え、なに?

ちょい待て。

あ、ヤバイ、油断した。

はい、衝撃!頭、まっしろ、カンカンカンカン、あ、でもなんか気持ちいい、、

起きたらナン殺す!

ん?カナを?

ん?殺す?

ん?俺が?

んー……


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