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ユベントゥスの息吹  作者: 伊吹 ヒロシ
第二章 修行と異世界での日々
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1.オルコット村

 ――オルコット村。

 俺たちが乗る荷馬車が村の入り口を通過する。

 この村を覆う壁は、街の石のブロックで出来た壁と違い木材で出来ていた。

 周囲を森で覆われた村にとって、自然に感じる。

 結局、途中でヘーベの話題になってから、レベッカさんとまともな会話が出来なかった。

 もっと色々と話したかったが、これまで女の子とほとんど話したことがない経験不足は否めない。

 俺はその様に思っていたが、

 「カザマは意外と節度のある人なのね。ヘーベさんと親しくなったからと頭を引っ叩いたり……そ、そのー……兄さんと酒場では、色々と盛り上がっていたみたいだから……」

 レベッカさんの言葉を聞き、俺の気分は再び急降下する。

 「あのー、レベッカさん。色々と誤解してますから……」

 色々と言いたいことはあったかが、否定だけに留めた。


 ――村の中心付近。

 道中の建物は木造の平屋建てが主流のようで、建物も街ほど密集して建てられていないのに気づく。

 道路も綺麗にはされているが、石で舗装はされていなかった。

 ヘーベルタニアの街は、この国ではそこそこ大きいのかもしれない。

 途中レンガ作りで、この村の中で一番大きな建物があり、この村の領主の屋敷なのだろうか想像する。

 村の住人は人種が多いのだろうがドワーフや獣種。

 ちらほらとエルフっぽい感じの姿を見掛け、街よりも人種以外の亜人種が多いと印象を受けた――。

 

 しばらくして、村の外れから森の入り口を少し進むと、村で見かけた民家より大きなコテージ風の建物が見えた。

 そして、目的地である賢者『デューク・ド・モーガン』の住む家に辿り着く。

 家の前には、俺たちが来るのが分かっていたかの様に、それらしい人が立っていた。

 俺とレベッカさんは馬車を降り、その人の前に足を進める。

 『デューク・ド・モーガン』……俺より少し背が低く普通の体格。

 茶色の質素なローブに、右手には身長より少し短い程度の長い杖を握っている。

 白髪で七十歳くらいに見えるが、生気に漲った雰囲気から年齢よりも若く感じた。

 兎に角、いかにも賢者というのが第一印象である。

 まずは面識のあるレベッカさんが、社交辞令の様に挨拶をした。

 「お久しぶりです。モーガン先生……例のカザマを連れて来ました」

 俺はレベッカさんの『例の』という言葉が気になったが。

 事前に連絡してくれていたのだろうと思い。

 失礼がないように、余計なことは話さず無難に挨拶をする。

 「初めまして、カザママサヨシです……遠く離れた東の国から来ました。ヘーベの勧めで冒険者のニンジャになったのですが、遠くから来たのでこの国のことや魔法のことが良く分かりません。これから色々と学ばせてもらいます。どうかよろしくお願いします」

 「よく来たな、カザマ! ――デューク・ド・モーガンだ! モーガン先生でよいぞ!」

 モーガン先生の仕草を見て、賢者で偉いのだろうが。

 この威風堂々とした立ち振る舞いが、ヘーベとダブって見えた。

 この世界の偉い人は、イチイチこんな演出をするものなのかと思いつつ、

 「おーっ! 流石、賢者であるモーガン先生だ! 威風堂々としていらっしゃる」

 俺は思ってもいないことを口にした。

 それを聞き怪訝な表情を浮かべたレベッカさんは、

 「カザマ、幾らモーガン先生の前だからといって、ヘーベさんに対する態度とあまりに違うわよ……」

 「うううううううう……」

 ぐうの音も出ないとは、まさにこういうことを言うのだろう。

 俺は街を出る時にクールになると決意したばかりである。

 「まあー、このへんで良いだろう。ヘーベさんに対する不遜な態度というのは聞き捨てならないが、これからワシの指導で追々と……。それにしても、ワシの偉大さを所見で看過するとは見所がある!」

 モーガン先生は俺をフォローしてくれたが、些か誤解もあるみたいだ。

 俺は色々と思うところもあったが、話しが進まないので我慢した。

 先程は怪訝な表情を浮かべたレベッカさんだが、今はこれまで通りの笑顔を浮かべている。

 「挨拶も済んで落ち着いた様なので……それではモーガン先生、カザマ。私は街に帰りますね」

 俺は荷馬車で帰ろうとするレベッカさんに手を振る。

 「気をつけて!」

 初めてまともに話した少し年上の女の子に、架空の姉を思い浮かべた――。

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