7.女神さまからのご褒美
俺たちは洞窟を抜けて、村に向かって走った。
そして、まずはエドナの家に寄ることになる。
刀が、グラハムさんとの戦闘で、使い物にならなくなったからだ。
ドラゴンの硬い身体への斬撃負担もあったが、新しいスキルのディカムポジションは武器への負荷が高過ぎるようである。
エドナの父親に刀を見せると、修復は無理だと言われた。
そして、俺がグラハムさんから貰ったドラゴンの爪部分を渡すと、エドナの父親は驚きのあまり口をパクパクして、しばらく動かなくなる――。
しばらくすると職人魂に火がついたのか、最高の鉱物も使って伝説級の武器を作ると意気込んだ。
以前作ってもらった刀にも十分満足していたので、エドナの父親に任せることにする。
それからカトレアさんの屋敷に行ったが、不在だったのでモーゼスさんに挨拶して街への岐路に着く。
街に着いた時には陽射しが大分傾き、辺りが赤く染まって見える。
厩舎にジャスティスを預けると足早に教会へ向かう。
――教会。
俺とレベッカさんとコテツは礼拝堂に入った。
祭壇の前には、自身とそっくりな容貌の女神像を背景にヘーベが佇んでいる。
レベッカさんは祭壇の脇に移動し、俺はコテツを後ろに従える様にヘーベの前まで進むと、屈んで膝を床に着けた。
「ああ……良く帰って来ましたね。我が従者カザマよ! アナタの活躍は聞いていますよ……さあ、取り戻した『怒』の宝石を、私の胸のペンダントに嵌めて下さい」
(今朝、出掛けたばかりなのに……ただ、自分が言いたいだけじゃないのか……全く、何が従者だよ……でも、これで最後なんだよな……)
ヘーベのセリフに呆れつつも、感慨深い思いに高揚する。
それからヘーベに言われた様に、ペンダントに宝石を嵌めようと近づく。
ヘーベの手前で、再び屈んで膝を床に着けて、手を伸ばした。
コテツは俺の後ろで、お座りの姿勢で大人しく見つめている。
レベッカさんは以前と同じ様に、赤い瞳を細めて俺を冷ややかに見つめている。
(ああ……これで最後なんだよな……。これで六度目だけどドキドキしてる……い、一度くらい触れてみたいけど……)
俺は色々な気持ちを抱きつつ、ゆっくりと『怒』の宝石をペンダントの窪みに嵌めた。
ヘーベが眩しく輝き、いつもの様に目を閉じる――。
しばらくしてゆっくり目を開けると、ヘーベの姿はほとんど変わっていなかった。
身体の成長は、前回聞いた通りで終わっていたようだ。
年齢も俺より少し年上でカトレアさんと同じくらいのままである。
但し、美しく輝いて見えた姿が、神々しくて圧倒される感じであった。
俺が膝を着いたままヘーベを見上げていると、ヘーベが口を開く。
「ありがとう……これで私の感情は、すべて戻りました」
俺は女神さまの微笑みを受け、感無量の思いで胸が高鳴る。
「これで、俺が受けた依頼は果たせでしょうか……」
「はい……では、約束のお礼をしましょうか……カザマ、しばらくそのままで、目を閉じて下さい……」
依頼を果たし終え、ヘーベに出会ってからの日々が思い浮かぶ。
ヘーベからお礼があると言われたが、何となく察しがついている。
今朝、出かける前に言っていたが、頬にキスをしてくれるのだろうと思い。
寂しさが紛れる気持ちで瞳を閉じた……。
(だが、これでいいのだろうか? 今、目の前にいるのは……以前、俺が何度も頭を引っ叩いたヘーベではなく、女神さまなんだ……)
だが、軽い気持ちでは受けられない。
意を決して、断ろうと言葉を発しようとした瞬間。
顔が勢いで、ヘーベに向かって突き出る格好になった。
「やっぱり、俺は……あっ!?」
唇に、これまで感じたことがない柔らかな感触を受け、身体が硬直する。
舌先には熱く力強いものが触れて、熱い息吹が注がれた。
こちらもこれまで感じたことがない衝撃である。
驚いて目を開けると、目と鼻の距離にヘーベの顔があり、互いの青い瞳が交差した。
ヘーベの長い睫毛から煌く青い瞳が覗かせ、驚いた様に見開いている。
驚きとこれまで感じたことない感覚に、一瞬時間が止まったかの様に見つめ合う。
(俺だけでなく、きっとヘーベも……)
俺は、心の中で続く言葉を遮ると、現実に引き戻された。
ヘーベも現状を理解したのかの様に、顔がみるみる赤くなる。
「はっ!? い、いやああああああああああああ――!」
俺から離れると声を上げ、俺の頬をビンタした。
頬を押さえ恐る恐るヘーベを見ると、その場で力を失った様に座り込んでいる。
口元を両手で押さえながら、呆然と虚空を見上げる様にヘーベは固まっていた――。
今まで突然の出来事に動けないでいたレベッカさんが声を上げる。
「はっ!? あ、あなたは……何やってくれてんの!」
そして俺に近づくと、いきなり俺の顔面を殴り出した。
俺は猛烈な衝撃を受けて壁に激突してしまう。
朦朧としながら辺りを見渡すと、コテツは床に寝転んで動こうとしない。
レベッカさんが俺に近づいて来る。
「カザマ、あなた、本当に何をやったか分かってるの! あなた、女神の唇を奪ったのよ! しかも、私の目の前で……」
レベッカさんは倒れている俺に馬乗りになると、叫びながら連打を浴びせる。
気のせいか、レベッカさんの赤い瞳が潤んでいる様に見えた。
それから、俺は気を失ってしまう。
ドラゴンの娘のコブシは、想像以上に強烈であった――。
俺を呼ぶ声が頭の中に響く。
「……ザ……カ……ザ……マ、……カザマ、カザマ!? ……大丈夫?」
俺が目を覚ますと、目の前にはヘーベの顔があった。
少しだけ赤い頬に、青い瞳は潤み、長い睫毛は揺れて見える。
ヘーベの長い髪が俺の顔に当たり、ヘーベに膝枕してもらっているのに気づく。
「あ、あの……俺はいったい……はっ!? スミマセンでした!」
しばらく俺は、後頭部に柔らかな感触を味わっていた。
だが、段々気を失う前の状況を思い出すと、ヘーベの膝の上から飛び起きてドゲザをする。
「確か、こういう時のセリフって……『それもいい加減、見飽きてきましたね……』で良かったですか……」
「エ、エリカ、何でお前がここにいるんだ……しかも、そのセリフは……」
俺は少しだけ顔を上げて、聞き覚えのある声の主を確認した。
そして、嘗て何度か聞いた対ドゲザ用のセリフに身震いする。
「マー君、もう夕方よ! 私も帰宅して夕食の支度くらいするわよ。マー君が教会に居た頃は、食事を作っていたんでしょう? 私だって夕食くらい作れるんだから……」
身震いしている俺を余所に、エリカは小聡明い視線を向けた。
そこへ、ヘーベが表情を曇らせたまま口を開く。
「カザマ、あなたはレベッカさんの負のオーラが込められた拳を浴びて、普通の治癒魔法では、治らない状態だったのですよ」
「ほ、本当だ!? 顔が戻って……身体の痛みもなくなってる……」
俺はヘーベの言葉を聞いて、顔と腕、肩を撫でて確認した。
周りを見た際にレベッカさんが視界に入ったが、レベッカさんは隅っこで俯いている。
「カザマ、ゴメンなさい……つい、カッとなって……」
「いえ、頭を上げて下さい。悪いのは俺の方ですから……本当は女神さま相手に幾ら頬とはいえ……マズイと思って、断ろうとしたんです。それが、こんなことになるなんて……」
俺は気落ちしているレベッカさんを励まそうとした。
「い、今……何て言ったのかしら? 私の聞き間違いかしら? まさか、私にあんな事をしておいて、間違いでした……で済ますつもりじゃ……ないですよね?」
俺はゆっくりヘーベの方を見ると、口元を引き攣らせて俺を睨みつけている。
「ち、ちょっと、待ってください! そんな顔をしてはダメですよ! 折角の美しさが台無しですよ! ちゃんと責任は取りますから……」
「そ、そう……分かっているなら、良いわ……。それから、分かってはいるけど、美しいだなんて……」
ヘーベはみるみると頬を染めて両手で頬を押さえると、少女の様に恥らって見せた。
女神さまの微笑みならぬ満面の笑み。
俺はヘーベがここまで喜んでいる理由が分からず、頬を掻きながら首を傾げた。
(もう約束はなくなったが……今まで通り、お願い事を聞いたりして暮らすだけなんだが……)
俺とヘーベの微笑ましい光景にノイズが入る。
「ちょっと待って下さい! それでは、話が違うわ! 幾らヘーベでも、マー君を譲るつもりはないわ!」
「私も今の話は聞き捨てなりません! カザマは十八の誕生日まで、結婚はしないとみんなの前で宣言しています。そ、それでは、みんなが納得しないと思います……わ、私もです……」
エリカとレベッカさんが険しい表情をして、ヘーベに向かって強い口調で言い放つ。
レベッカさんは途中で何故か、頬を赤らめてトーンダウンしたが……。
「二人とも落ち着いて下さい。決めるのはカザマですし……それに、もう済ませてしまいましたから……」
厳しい表情をしているエリカとレベッカさんに対して、ヘーベは勝ち誇った様な笑みを浮かべ、胸を張る。
俺には、ヘーベが鼻で笑った様にも見えた。
(何でふたりとも……あんなに向きになっているだろう? 確かに、レベッカさんが言う様に、十八の誕生日までに結婚相手を選ぶ約束をしたが……今関係あるのだろうか? それにふたりに対して、ヘーベの余裕の笑顔と『もう済ませましたから』の言葉の意味が分からない……)
俺は首を傾げていたが分からず、コテツの方を見る。
コテツは先程からほぼ同じ姿勢のままだが、何だかぐったりしている様に見えた。
俺はその様子を見て、それ程重要なことではないと思ってしまう。
しばらく気不味い雰囲気だったが、
「時間も遅くなりましたし……この話は後日にしませんか? これから大切な話がありますし、すぐにどうという事ではありませんから……」
ヘーベから大切な話があると言われて緊張感が和らぐ。
「そうね……すぐに結婚する訳でないのなら、まだチャンスはあるわ……」
エリカが矛を収める様に返事をすると、レベッカさんもエリカの発言に同意する様に頷いた。
「レベッカさんは聞いていると思いますが……カザマとエリカには、明日の朝から王都に行ってもらいます。今回もレベッカさんに案内してもらうけど……現地では、モーガンさんとも合流します。折角、王都に行くのだから、カザマは友達も誘って行くと良いわ」
俺はヘーベの話を聞いて飛び上がりたくなる程嬉しかったが。
「王都にですか? 嬉しいですけど……何で、俺とエリカが王都に行かないといけないのですか?」
エリカと一緒というのが、過去の経験から警戒心を抱いたのだ。
エリカは、俺の言葉を聞き柳眉を寄せて、俺を睨んでいる。
「何よ、私と一緒だと不満だと聞えるけど……」
「いや、俺はそういうつもりでは……はっ!? エリカ、話の腰を折るのは止めろ! 俺が知りたいのは、どういう理由で王都に行くかだ! 全く……」
俺は先程の余韻が残ってか、俺の話に突っ掛かってくるエリカを叱っておいた。
「私から説明するわね。エリカは、カザマと会う前の冒険者としての功績を評価されたのよ! それから、カザマは冒険者としての功績もだけど……村やゴブリンとオークの集落で、技術指導や学問の指導をした功績を王さまが評価してくれたみたいなのよ!」
レベッカさんが、まるで自分の事の様に嬉しそうに説明してくれた。
俺とエリカは、その勢いに押され気味に頷く。
「あっ!? それなら、どうしてモーガン先生が、途中で合流するのですか?」
「カザマ、モーガン先生は、あなたの師匠であり賢者よ。弟子を育てた功績もあるけど……初めに青空教室を始めたのはモーガン先生よ。それから同じ理由で、オルコットさんも王都に呼ばれているわよ」
俺は、レベッカさんの説明を聞いて頷いた。
「なる程……それなら、俺の手伝いをしたみんなも、一緒に呼ばれる訳ですね」
「いえ、確かに手伝いをしたかもしれないけど……今回評価を受けたのは、今話した人たちだけよ……。でも、カザマの言う通り、みんなも何かしら手伝いをしたのだから、せめて観光を兼ねて、王都に遊びに行ったらとヘーベさんから……」
俺とエリカはレベッカさんの説明を聞いて納得した――。
「あっ!? でも、それだとヘーベが、また独りで留守番になってしまいますよね……」
俺はヘーベの方を見ながら、申し訳ない気持ちになった。
「ありがとう、カザマ。でも、大丈夫です。私は忙しいですし、親しくしてくれる知り合いもいますから……」
「そ、それは女の人ですよね! 男ではないですよね!」
「ちょっと、マー君! 何で急に向きになってるのよ……」
俺がヘーベを問い詰める様子を見て、エリカは怪訝な表情を浮かべた。
俺とエリカのやり取りを見て、ヘーベが答える。
「ありがとう……もしかして、ヤキモチですか? マー君……」
「そ、そうですよ! 悪いですか! でも、その呼び方は止めて下さい。本当はエリカにも、止めて欲しいと思っています……」
ヘーベは楽しそうに笑っているが、エリカが頬を膨らませて剥れてしまう。
レベッカさんも何故か機嫌が悪そうだ。
「兎に角、私のことは心配ありませんから、皆さんは明日からに備えて準備して下さい」
「では、明日の朝に迎えに来ますので、早めに朝食を済ませて下さいね。分かってると思いますが、オルコットさんの家までは馬で移動して、それから馬車となりますから……」
レベッカさんはそう言うと顔を強張らせたまま、頭を一度下げて帰っていった。
――夕食。
俺は教会で初めて、ヘーベ以外の人と食事をしていることに気付いた。
「ヘーベは三人以上の人数で食事するのは久しぶりですか?」
「そうですね……久しくないですね……」
ヘーベはあまり関心がなさそうに答える。
「マー君、あまり変な事を聞いてはダメよ。ヘーベだって答え辛いじゃない……」
「はっ!? スミマセン……俺、何だか失礼なことを聞いてしまいましたね」
「うふふふふっ……そうね。二人の食事も嬉しかったけど、三人の食事は楽しいわね……でも、二人のその言い方だと……まるで、私がボッチみたいだわ」
ヘーベは笑いながら答えたが、俺とエリカは申し訳なそうに視線を逸らす。
夕食と片付けを終えてから、俺はヘーベとエリカに出掛けることを伝え、外に出た。
――酒場。
久々にやって来たが、相変わらずグラッドが先に来ている。
「おう、久しぶりだな!」
「ああ、久しぶりだ。妹さんには世話になったし、明日からも世話になる」
「わはははははは……お前、相当妹に気に入られてるみたいだな」
「笑い事じゃないぞ! 前にグラッドが相当怖い様なことを言ってたよな……でも、本当の意味をついさっき身を持って体験したぞ」
俺は頬を膨らませ向きになって話していたが、グラッドは赤い瞳を見開く。
「はあっ!? ついさっきって……山から下りてからも、何かあったのか?」
俺はグラッドに事情を説明する――。
「わはははははは……あの、レベッカが……わははははは……」
「笑い事じゃないぞ! あれだけ連打を浴びたんだ! お前のオヤジさんより酷かったぞ!」
グラッドは笑った後で真顔になったが、またすぐに笑い出した。
俺は、そんなグラッドに本気で愚痴を漏らしたのだ。
「まあ、今は元に戻った訳だし……そんなに怒るなよ。今まで妹が浮いた話をした事は、一度もないんだ。求める理想が高くて相手もいなかったが、オヤジがいてな……」
俺はグラッドの話に黙って頷いた。
「明日からは、いよいよ王都か? お前もやっというべきか……冒険者として、俺と同じレベルになった訳だよな」
「ああ、明日からだが……!? レベル?」
俺は慌てて冒険者のブレスレットのクリスタルを確認した――
『上級ニンジャ』で『レベルⅥ』……レベルが上昇。
ステータス……体力『A』、力『C』、素早さ『S』、耐久力『S』、賢さ『S』、器用さ『A』、運『B』、魔法『SS』……体力と魔法が上昇。
スキル……『各種アシ改』と『ディカムポジション』になっている。
(レベルⅥって……現状で最高レベルだよな! それから魔法のSSって……Sまでじゃないのか?)
俺は自分のレベルとステータスを見ながら、黙って突っ込みを入れた。
グラッドは俺の様子見ると、久々に先輩冒険者らしい威厳ある表情を浮かべ口を開く。
「ステータスは……『SSS』までだぞ。凡人には『S』も難しいが、それ以上は神が認める様な技量を示さないと与えられない。お前のそれはオヤジとの戦闘のせいだな。だが、それ以上は……今はまだ加減しとけ……」
「はあっ? 今のは……どういう意味だ?」
「何……今は、分からない方が良いだろう? 何でも知らない方が良いことってあるだろう……」
「ああ……俺は以前から、そのことは良く分かっているつもりだ」
俺は、グラッドの今はとか……それ以上とかの意味は分からなかったが、余計な詮索はしないことにした。
俺のあまりに聞き分けの良い態度に、グラッドは感心したようだが溜息を吐く。
「はーっ……そのお前の考え方に、俺たちは助かるが……。お前の女友達が聞いたらボコられるぞ……」
そして、俺を褒めた後で貶すという微妙な態度をとった。
「褒められているのか、貶されているのか分からないぞ!」
「お前、気づいてないみたいだからはっきり言うぞ! 女関係の問題なら、俺より質が悪い! お前が気づいているか分からないが、お前との結婚希望者は、現在六人から七人増えたぞ! ここまでくると羨ましくないな。コテツもかなり困ってるみたいだ。リヴァイも呼んだらどうだ? フラグ管理って……お前の世界の言葉だろうに……」
グラッドは先程に続き、珍しく真面目に語っている。
こういう姿を見ると、兄弟のいない俺は兄の様な感覚を受けるが、コテツだけでなくリヴァイも呼んだ方がいいというのは、相当酷い言い草だ。
(グラッドが只者ではないと改めて分かったが、フラグ管理という言葉まで知っているとは……はっ!? 俺はどこかでフラグ管理を間違えたのか? いや、実際、かなり困っているか……あれっ!? 何で、七人もいるんだ?)
俺は心の中で状況を整理したが、よく分からなくてうな垂れた。
「グラッドから言われるとは、初めて会った時には想像も出来なかったが……今は反論出来ない。コテツには苦労を掛けてばかりだし、リヴァイも呼ぼうかな……」
「俺は別に気にしない。勝手に意識してるのはアイツの方だ。カザマの好きにしろ」
グラッドにも助言されて、王都に行く前にリヴァイを呼ぼうと考える。
(どうせ、大勢だし構わないだろう……)
俺が考え事をしていると、またもグラッドが赤い瞳を見開く。
「おう、そういえば大事な話があったんだ……カザマ、明日から王都に行くからって、浮かれて大事なことを忘れるなよ」
「そ、それだ! 明日からはレベッカさんも一緒に行くだろう? だから、今回はグラッドしか頼むヤツがいないんだ。教会のヘーベが困らない様に気をつけてくれないか?」
俺は肝心の話をするのが遅れてしまいグラッドに突っ込まれたが、頭を下げてお願いする。
「なんだ、そのことか……お前って、本当に真面目というか几帳面というか……。そういうヤツだから、女が集まるのかもしれないな……。その件なら、初めから了解している。任せとけ!」
グラッドはまたも褒めているのか、貶しているのか分かり難い表現をした。
それでも、肝心な返答は力強くしてくれて、俺は安心してグラッドに任せることにした。
久々の酒場もグラッドと盛り上がり、教会に帰って自室に戻ると、疲れてすぐに眠ってしまう――。




