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ユベントゥスの息吹  作者: 伊吹 ヒロシ
第十二章 アルヌス山脈
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5.アルヌス山脈のドラゴン

 俺とレベッカさんは厩舎にいる。

 今回は荷馬車でなくレベッカさんも騎乗するようだ。

 俺はジャスティスに跨り、少しペースを落として進もうと考えていたが不要だった。

 レベッカさんの馬はいつもの荷馬車の馬ではなく、ジャスティスと同じくらいの名馬であり、馬に詳しくない者でも、ひと目で分かる。

 「あのーっ……レベッカさん。ギルドの職員は、結構給料が高いんですか?」

 「えっ!? いきなり何を言ってるの?」

 俺は恐る恐る尋ねたが不躾であり、レベッカさんは訝しげに声を上げた。

 「いえ、失礼だとは思ったのですが、かなりの名馬だと……」

 「ああ、これはオルコットさんの家で借りた馬よ。最近、カザマの話とかを聞きに行ったりして、通うことが多かったから……」

 レベッカさんは微笑を浮かべ説明してくれたが、俺はその言葉に顔を引き攣らせる。

 「スミマセン……俺のせいで、忙しくさせてしまって……」

 「うふふふっ………冗談よ。カザマのこと以外でも用事があったのよ。でも、最近カザマがいなくて困ったのは、本当よ」

 レベッカさんは少しだけ俺に意地悪したかっただけのようだ。

 笑い声が爽やかで癒される思いがした……。

 (これから命懸けのクエストが待っているのに、こんなに暢気で良いのだろうか……)

 俺は違和感を覚え、心の中で呟いていたが声に出す。

 「あっ!? 今回のこれって、クエストになるのですか?」

 「あらっ!? クエストでも、賞金を取りに来ないのに気になるの?」

 「えっ!? いや、その……もう勘弁して下さいよ……」

 レベッカさんが表情を引き締め意地悪な返事したので、俺は顔を顰めた。

 「冗談よ。うふふふっ……クエストよ! もう、カザマは本当に可愛くて楽しいわね。私も候補の中に、入れて貰おうかしら……」

 レベッカさんは笑みを溢し、本当に楽しそうである。

 これまで俺が顔を出さなかった仕返しだろうかと思ったが、そうでもないようだ。

 俺をからかって遊んでいるのだろう……。

 (全く、こんなに楽しそうに笑われると怒る気にもなれない……!? 候補の中って、何のことだろう……)

 俺とレベッカさんがこんな感じのやり取りをしていたら、あっという間にカトレアさんの家に着いた。

 初めてレベッカさんと村に訪れた時を懐かしく感じる。

 厩舎に馬を預けると、モーゼスさんに挨拶して屋敷を後にした。

 

 ――アルヌス山脈南部の森。

 今はモーガン先生の家も通り過ぎて、森の中に入っている。

 レベッカさんは驚くべきことに、普段俺とビアンカが走る速さで森の中を進んでいた。

 「あのーっ……レベッカさんって、こんなに走るのが速かったのですか?」

 「あら、そんなに変かしら? 私はギルドでも、冒険者の担当だから、多少は動けても不自然ではないと思うけど……」

 レベッカさんは走りながら息も切らさずに、当然の事の様に説明する。

 だが、どう考えても多少動ける程度の体力とは思えない。

 単純に走っているだけだが、蹴り足に余力を感じる。

 しかも昼間といえ、森の中は暗い。

 そんな中を平然と、いつもの俺とビアンカのペースで走っている。

 明らかにレベッカさんは、普通の女の子ではないと分かる。

 身体能力だけなら、少なくともエリカよりも上だと感じた――。

 

 俺がそんな事を考えながら森の中を進んでいると。

 何となく予想はしていたし、僅かに気配を感じていたが……。

 「珍しい人と一緒っすね! アタシも行くっすよ!」

 あっという間に、俺たちにビアンカが追い付いて来た。

 「レベッカさん、どうしましょう?」

 「まあ、ビアンカの場合はコテツもいることだし、大目に見るわ」

 ここまで何も話してないが、コテツは元の大きさに戻り一緒に走っている。

 「ありがとうっす! それで、どこに行くっすか?」

 楽しげに声を上げるビアンカに、俺は渋々答えた。

 「これからアルヌス山脈のドラゴンに会って、宝石を返して貰う……」

 「本当っすか? カザマ、ドラゴンと戦うつもりっすか!」

 俺は仕方なく行くことになったのに、ビアンカもピクニックにでも行く様なテンションである。

 浮かれているビアンカに不安を感じた。

 「ビアンカ、頼むから早まった真似はしないでくれよ! 俺たちは話し合いで宝石を返して貰うのだからな!」

 「そうよ。これはカザマの戦いだから、友達なら黙って見守ってあげることも大切よ」

 俺をフォローする様にレベッカさんもビアンカを説得してくれたが、知らないうちに俺が戦うことが前提になっている。

 ビアンカも楽しそうに頷き納得いかなかったが、敢えて何も言わなかった。

 「ところで……レベッカさんは、途中までの案内だと思ってましたが、一緒に付いて来てくれるのですか?」

 「あらっ? 何だか酷いわね……まるで私が、カザマだけ危険な所に送り込む、卑怯者みたいだわ……」

 俺は何気なく口にしたつもりだったが、レベッカさんは表情を曇らせる。

 「いえ、決してそんなつもりでは……普段は事務仕事しかされていない印象だったので、ここまで動ける方だとは思っていなかったので、つい……」

 「それも酷い言い方ね。まるで私が引き篭もりで、ドン臭い女みたいだわ……」

 落ち込んで見せるレベッカさんに、俺はまたも慌てて誤解だと言い訳を考えた。

 「いえ、決してそんなつもりでは……あれっ!? 今も同じ様なことを言った様な……」

 「うふふふっ……カザマは、本当に楽しくて可愛いわね」

 俺は困惑してしまったが、レベッカさんは小聡明く口調と表情を変えて、楽しんでいる様である。

 俺はまたも遊ばれていると気づいて顔を引き攣らせたが、ビアンカが口を開いた。

 「あーっ!? ズルイっすよ! アタシもカザマと乳繰り合いたいっす!」

 ビアンカの言葉は爆弾発言だ。

 「お、おい! ビアンカ……お前、前も同じ事を言っていたが、言葉の使い方が間違っているぞ! その表現は誤解を招くから止めてくれ! それに若い女の子が、そんな言葉を使ってはダメだ! せめて、イチャイチャしてるくらいにしてくれ……」

 俺は取り乱しながらも、ビアンカを叱り付けた。

 ビアンカは意味を理解したのか不明だが、考え込んでいる様に見えた。

 「うーん……分かったっす」

 「カザマは、本当に面白いわね……」

 俺は主にレベッカさんだが、ふたりに言葉で遊ばれながら先に進んだ。

 時折、コテツに話を逸らす様、目で合図を送ったがスルーされた――。


 ――ドラゴンの洞窟。

 オーガの縄張りを抜けて、山を登って行くと巨大な洞窟があった。

 直径が十メートル以上はあろうかという洞窟は、真っ直ぐに下っている感じだ。

 俺とビアンカは洞窟の先を見ながら口を開けて眺めていると、レベッカさんが活気のある声を上げる。

 「この洞窟の先よ! さあ、気を引き締めていくわよ!」

 「あのーっ……レベッカさんは怖くないのですか? それから、どうして場所が分かるんですか?」

 怖いもの知らずなのかと思ったが、レベッカさんの態度は明らかに不自然だ。

 俺が怪訝な表情を浮かべていると、レベッカさんは察したのか目を逸らす。

 「なかなか鋭い突っ込みね……わ、私はそう! 冒険者ギルドの職員だから、これくらいの情報は当然よ。それに、変にオドオドしていても良いことはないわ……」

 俺の質問に戸惑い気味に答えたレベッカさんは、俺たちに見向きもしないで洞窟に入って行った。

 先程から静かになったビアンカが気になり様子を見ると、尻尾の毛が逆立っている。

 コテツの方を見ても、同じ様に全身の毛が逆立っていた。

 「ビアンカ、大丈夫か?」

 「すごい重圧を感じるっす……」

 ビアンカの声が震えていて、よく見ると身体も小刻みに震えている。

 「コテツ、そんなに凄いのですか?」

 「うむ、久方ぶりだな。これ程の威圧感は……」

 コテツでも怖いのだろうかと頭を過ぎったが、強敵を前に興奮している様にも見えた。

 そんな俺たちの様子を気に掛けない様子で、レベッカさんは下り坂を進んで行く。

 「あのーっ……本当にレベッカさんは怖くないのですか? ビアンカもコテツも気配を感じただけで、凄く緊張しているのですが……」

 「えっ!? そ、それは、怖いに決まっているじゃない……。私よりカザマの方が平然としている様だけど……」

 俺の場合は離れた脅威より、目の前の浮かれている人が気になっているだけだが……。

 「確かに、強大な力を感じるのですが……不思議と敵意を感じないので……」

 「そうなの? それより、そろそろよ!」

 今まで惚けた感じで、俺の問いに答えていたレベッカさんの表情が引き締まった。

 

 ――ドラゴンの住処。

 巨大な通路の洞窟を下っていくと、更に巨大な空間がぽっかり開いている。

 その奥を見ると、想像もしていない物があった。

 「な、何だ……これは……?」

 「うん、ここの主であるドラゴンの住処みたいね」

 俺は目の前の光景を見て、上手く当て嵌まる言葉が思い浮かばない。

 目の前には、こんな場所に不自然なこと極まりないような、貴族が住む大きな屋敷があったのだ。

 しかも、それは巨大なひとつの岩を削って作った様な、芸術的なものである。

 レベッカさんは、それを見ても驚きもせず、平然と答えたので俺は顔を顰めた。

 「はあっ!? レベッカさん……何を冷静に言っているんですか? ここにドラゴンがいるんですよね! 魔王が住んでいる訳ではないですよね!」

 俺が興奮するのも当然であろう。

 ドラゴンが洞窟の中に、屋敷を立てて住んでいる訳がない。

 「カザマ……ち、近いわ! あなたは興奮すると顔を近付けてくるから……」

 俺が取り乱す程驚いているのに、レベッカさんは何故か恥かしそうに頬を赤くして、俺から顔を逸らす。

 その時、この場の空気が変わった……。


 一瞬の静寂を感じたが、目の前にある屋敷の扉が開いた気がする。

 そして、扉から薄っすらと、人が出て来た様に見えた。

 だが、突然目の前に漆黒の鱗に覆われ、赤い瞳をした巨大なドラゴンが現れる。

 大きくてはっきり分からないが、三十メートル以上はあるだろう。

 「ヒィイイイイイイイイ――っ!? な、な、な……」

 俺は突然の出来事に言葉が出ずに、目の前の巨大なドラゴンの威圧感に呑まれ、腰を抜かしそうになった。

 しかし幸いなことに、すぐに襲ってくる様子でもない。

 ゆっくりビアンカの方に視線を移すと、先程の様子と変わりなく尻尾を逆立たせたまま震えている。

 コテツに視線を移すと、身体の毛を逆立たせた状態で身構えていた。

 この中で唯一、臨戦態勢を整えているのはコテツだけのようだ。

 冷静さを保っているコテツの様子を見て、少しだけ安堵する。

 俺は静寂の中、両手を広げゆっくりと深呼吸した。

 「あのーっ……突然お邪魔してスミマセン! 街の教会の使いで来たカザマという者ですが……お願いがあって来ました!」

 震える身体に気合を入れ拳に力を入れると、大きくしっかりした発声でドラゴンに話し掛ける。

 「あら、カザマ、やるじゃない……」

 俺に返事をしたのはドラゴンではない。

 この場の緊張感にそぐわない柔らかい口調で、レベッカさんが答えたのだ。

 俺は両目を見開きレベッカさんを見ると、腕を組んだまま平然としている。

 先程は頬を赤く染めて恥らっていたが、流石にレベッカさんの振る舞いに困惑してしまう――。


 突然、目の前のドラゴンが声を発し、憤りを顕にする。

 「おい、そこの人間! 先程、そこの娘に……如何わしい事をしようとしていたのではないか!」

 「ヒィイイイイイイイイ――っ! と、とんでもありません! 寧ろ、いつも意地悪されてばかりです!」

 身体が震える程の威圧感を漂わせドラゴンが話し掛けたが、何を思ったのだろうか。

 先程の俺とレベッカさんのやり取りを勘違いしている様である。

 俺はこんな事を訊ねるドラゴンに普段なら違和感を覚えただろう。

 だが、恐怖のため、問われるままに返事をしてしまった。

 「ヒ、ヒドイ言い方だわ……」

 レベッカさんは頬を膨らませ剥れている。

 (さっきから、何平然としているのですか……あなたの危機意識は壊れていませんか?)

 あまりに場違いなレベッカさんの仕草に、口をパクパクと動かしていたが、声には出せなかった。

 俺の弁明を聞くと首を傾げ、俺たちを眺めていたドラゴンが再び声を出す。

 「まあ良い……それで、この私に願いとは……!? まさか、私の宝をよこせと言うのではあるまいな!」

 「ヒィイイイイイイイイ――っ! え、えーと……あなたのではなくて、元々は俺が教会で世話になっている方の物です」

 俺は目の前のドラゴンに震えながらも、正論で答えた。

 だが、本当の事でなければ、答える事は出来なかったのであろう。

 ドラゴンは、ただでさえ怖いのに眉間に皺を寄せている。

 「何だと、私の所にあるものは……私のものだろう!」

 「それは盗まれたもので……それがどうして、ここにあるか分かりませんが……」

 俺はドラゴンに会って、一時は完全に存在感に呑まれていたが、会話が可能ということで少しずつ冷静になっていた。

 (このドラゴンは宝物のコレクターなのだろうか? それにしても、レベッカさんの様子が気になるが……恐怖心がなくて、勢いで突っ込んで行ったりしないよな……)

 俺は少しだけ余裕が出来たのか、レベッカさんの方を見る。

 「カザマ、話をしている時は、話している相手を見ないと失礼でしょう!」

 「えっ!? いや、その……スミマセン……」

 レベッカさんは冷静ではあるが、何となく違う気がした。

 そんな様子をドラゴンが赤い瞳を細めて、不思議そうに見つめている。

 「……ふむ、どうやら嘘を付く人間ではない様だな……」

 「では、分かってくれましたか?」

 ドラゴンがどうして急に俺の評価をしたのか分からなかったが。

 このまま話し合いで解決する糸口が見えた気がして、頬が緩む。

 「……だが、誰のものであろうと……ここにあるものは、すべて私のものだ!」

 「そこを何とかお願いします! とても大事なものなのです!」

 何となくドラゴンが言い淀んだ気がしたが、そこで何とか頭を下げて、お願いし続けようと昂った。

 「ふむ、そこまで言うのであれば……」

 「では、返してくれるのですか?」

 「私は自分の宝の次に、好きなものがある……」

 ドラゴンの言葉を聞いた俺は激しい緊張感から解放されて、安堵して気が緩む。

 思ったよりも早く、しかも平和的に話が進んでいる。

 何か依頼を受けるクエストでも起きるのかと、ドラゴンが次ぎに発する言葉を待つ。

 しかし突然、ドラゴンが輝き出した。

 驚いて顔を歪めたが、眩しくて片腕を上げ、目を隠した――。


 光が収まり、ゆっくり腕を下ろし、前を見た……。

 「はわわわわわわわわわわ……」

 先程ドラゴンがいた場所に、漆黒の鎧を纏った長い黒髪の男が立っている。

 身長は百九十センチくらいだろうか。

 年齢は二十代後半から三十歳くらいに見える。

 長い黒髪は紐で後ろに纏められ、鎧を纏った姿でも強靭な肉体を窺わせる。

 それよりも、目の前の男の髪の色と赤い瞳が気になった。

 俺はゆっくりレベッカさんの方を見たが、レベッカさんは無言のまま微笑んでいる。

 「も、もしかして……ご家族ですか? 何て……」

 俺の突拍子もない言葉に、レベッカさんは顔を引き攣らせた。

 俺の問いに、突然現れた男が口を開く。

 「ふむ、良く分かったな! 流石に、お前たちが気に入っただけはある……」

 ドラゴンの声で返事をして、俺は驚愕に顔を歪め大声で叫んだ。

 「はああああああああああああああ――っ!?」

 何となくそうかもしれないと感じたが、半分は冗談のつもりだった。

 俺はさっきから無言でいるビアンカとコテツを見る。

 「なんだ、やっぱりそうだったっすか……」

 「はあーっ!? ビアンカは気づいていたのか?」

 「何となく、気配が……それに、ニオイが似ている気がしたっす」

 「うむ、私は初めから知っていたが、黙っている様に言われた。貴様にとっては良い経験になるだろうと思い、互いに了承済みであった」

 俺はビアンカとコテツの話を聞いて、驚愕に歪んでいた顔から力が抜け。

 口を開けたまま茫然自失となり立ち竦んだ。

 「はーっ……バレテしまったわね」

 呆然と佇む俺に、レベッカさんは溜息を吐くと恥かしそうに舌を出した。

 俺はやっとこれまでの不可解な出来事を理解する。

 レベッカさんが、普通ではあり得ない体力を備えていること。

 ここまでの道案内をして、全く怖がっていなかったことなど……。

 俺は恐る恐るレベッカさんに訊ねた。

 「もしかして、マッチポンプというやつですか……」

 「ふむ、それは違う。先程言ったであろう。私が宝の次に、好きなことがあると……」

 「えっ!? それって、何かクエストを受けるとかでは……」

 ドラゴンではなく、既にレベッカさんのお父さんと言った方が良いだろう。

 レベッカさんの代わりに答えると、不敵な笑みを浮かべている。

 「ふむ、冒険者ギルドではそう言うのだったな……しかし、私を倒す事が出来るかな?」

 「はっ!? 何言ってるんですか……レベッカさんのお父さんですよね? もう戦う必要はないじゃないですか!」

 俺はいきなり馬鹿げたことを言い出すレベッカさんのお父さんに、恐怖を超えて声を荒げた。

 「カザマ、無理よ……一度言い出したら……これも、ドラゴンの習性かもね。――それよりも、カザマが相手よ! 絶対に殺さないでよね!」

 レベッカさんは呆れたように表情を弛緩させ、諦め気味の口調で俺に説明すると。

 お父さんの方に顔を向けて、表情を引き締めた。

 「ふむ……分かっている! 私は全力を出さないし……カザマが、私に傷をつければ勝ちとしよう」

 レベッカさんの言葉を聞いたお父さんは、眉間に皺を寄せて険しい表情を作っているが、声の方は取り乱している様に聞こえる。

 俺は、そんな親子の話はどうでも良いかのように、声を震わせた。

 「い、いや……何言ってるんですか? だから、レベッカさんのお父さん相手に傷付けるとか……」

 「もしかして貴様……私を馬鹿にしているのか……」

 レベッカさんのお父さんは、急にドス黒いオーラを出して、双眸を吊り上げ怒りを顕にする。

 「うむ、カザマ……これ以上刺激して、負のオーラを浴びると良くない。ここは胸を借りるつもりで、全力で戦ってみろ!」

 「そうっすよ! 羨ましいっす! アタシが代わって欲しいくらいっすよ!」

 コテツとビアンカは既に興奮して、俺の戦いを楽しみにしているようだ。

 俺とレベッカさんのお父さんから離れ出している。

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