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ユベントゥスの息吹  作者: 伊吹 ヒロシ
第一章 間違った異世界召還
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3.冒険者ギルド

 ――冒険者ギルド。

 ゲームやアニメの世界では、酒場と隣接したスペースにカウンターがある場合が多い気がする。

 だが、この世界のギルドは役所の様な組織らしい。

 そしてギルドは冒険者のためだけにあるのではない。

 そこでは冒険者の管理もされており、受付は冒険者用のカウンターで行われる。

 それから親切なことに、新人冒険者には担当のアドバイザーがついてくれるそうだ。

 早速俺は、自分の担当アドバイザーに登録と説明を受けることになった。

 「初めまして、ギルド職員のレベッカといいます。これから冒険を始められるあなたのアドバイザーです。よろしくお願いします」

 営業スマイルだろうか。

 俺より少し年上に感じる女性は十八歳くらいに見える。

 黒いストレートの髪に、魅惑的な赤い瞳と健康的な容姿。

 そして、明るい雰囲気の女性に好印象を懐く。

 これまで俺の周りの女の子は、見た目こそハイスペックな方々ばかりだったが、中身は色々と考えものであった。

 ここにきて、やっと普通に可愛く感じる女の子との出会いに心が躍る。

 「は、初めまして……ジャスティスといいます。い、以前はソードマスターをしていました……。ま、まだ、この街に来たばかりで、色々と分からないことが多いですが、よろしくお願いします!」

 自分より年上の女性を意識してか、俺の挨拶はぎこちなくなってしまった。

 「あれっ!? 変ですね……名前は『フウママサヨシ』になっていますが? それから、以前の職業は『ガクセイ』? どこかの問派のお弟子さんでしょうか? 現在は『ニンジャ』になってますが……」

 レベッカさんは、不思議そうにこちらを見つめ首を傾げた。

 「えっ!? あっ、あの……そのとお……ちがーう!!」

 俺の顔は赤くなっているだろう。

 表情が上手くつくれない。

 身体が小刻みに震えている。

 この世界は以前のゲームとは、関係がなかったのだ。

 俺は久々に恥ずかしい思いを体験し、取り乱した勢いのまま後ろを振り返り、ヘーベの頭を引っ叩いた。

 「い、痛―い!」

 ヘーベは再び両手で頭を押さえ蹲る。

 「何てことをしてくれたんだ!! キャラクターネイムは、初期設定で職業の選択と同じくらい大切なんだぞ!! 両方とも勝手に決めた挙句、名前に至っては間違えてるぞ!!」

 俺はとうとう女神さまを怒鳴りつけてしまい、またも引っ叩いてしまった。

 何だかんだ言っても、俺はこの世界での冒険を楽しみにしていたのだろう。

 「う、うーっ、痛い……あなたは二度も私を叩いたわね。何が不満なの? ゲームの中の名前は、恥ずかしい感じだったし……色々と気を使ったのに、ひどいわ」

 頭を抱え痛がるヘーベを見て、周りの視線が俺に集まった。

 「ヘーベちゃん、可愛そう!」

 「あー…ヘーベさんに何てことを!」

 ヘーベを労わる言葉が聞こえる。

 ヘーベが女神だということは秘密な筈 なのに、かなり人気者の雰囲気が漂う。

 俺は異世界にやって来て早々、悪目立ちしてしまった。

 俺は悪くないのだが、知らない世界でいきなり周囲の印象を悪くしたくない。

 出来れば目立ちなくないのだ。

 「へーべ、ごめん!」 

 俺は頭を下げて謝った。

 俺は悪くない筈なのに、世の中はどこに行っても理不尽である。

 しばらく静観していたレベッカさんは、

 「す、すぐに頭を下げて謝ったことですし、寛大なヘーベさんですから許して下さると思います……」

 オドオドしながらも間に入ってくれた。

 「私なら大丈夫だわ。あなたがこんなに怒るなんて難しいわね。レベッカさん、名前を『カザママサヨシ』に変更して」

 色々と余計なことはあったが、やっと普通に登録が終わった。

 「それでは、このリストバンドを着けて下さい。このリストバンドは冒険者の証とともに、登録した情報が入力されています。また、ステータスや戦闘履歴等も自動で更新してくれます。それから、ニンジャという職業は初めて知りましたが、私も色々と勉強させて頂きますね」

 レベッカさんは初めに会った時の様な笑みを浮かべる。

 そして、赤いクリスタルの様なものが付いたリストバンドを渡してくれた。

 レベッカさんに対する印象がますます上がる。

 この世界に来て知り合ったのは二人目だが、今のところ唯一まともな会話が出来そうなところも印象を底上げしているのだろう。

 俺はリストバンドを左手首に着けた。

 赤いクリスタルの部分を見ながら、魔法的な作用があるのだろうかと首を傾げる。

 そんな俺の様子を見ていたレベッカさんが尋ねた。

 「先程も言いましたように、私はニンジャという職業を初めて知ったのですが……大丈夫でしょうか? 現在『レベルⅠ』ですよ。知能と素早さに器用さが高いようですし、魔法適性もあるようですが……現在は『シノビアシ』と『初級ニンジャ』? というスキルが使えるだけです。ソロでは厳しいのではないでしょうか?」

 心配そうなレベッカさんの問いに、ヘーベが腰に両手を添え誇らしげな姿で答える。

 「大丈夫よ。私が色々と考えているから……」

 俺は本当に大丈夫なのだろうかと不安を覚える。

 これまでの流れから全然信用出来ないが、一向に進展しない展開にもウンザリしていた――。

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