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ユベントゥスの息吹  作者: 伊吹 ヒロシ
第一章 間違った異世界召還
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2.職業選択

 俺はヘーベの言っている事が分からずに首を傾げている。

 「良くぞ、聞いてくれました。あなたの職業は、今日からニンジャよ!」

 ヘーベは再び同じ言葉を繰り返し両手を腰に添え、細身だが美しい体躯を反らした。

 誇らしげな姿を見せたかったのだろうか。

 しかし、表情が平坦でイマイチ分からない。

 ちなみに俺は、驚きのあまり顔が引き攣り表情を作れないでいる。

 不意に俺は、剣や鎧の装備がなくなっていることに気づいた。

 さっきまで余裕がなくて気づかなかったが。

 いつの間にか、黒ずくめの衣装を纏っている。

 俺は幼い頃から目立たない様に躾けられたため、目立つのが苦手なのである。

 (何だか周りの視線が気になる。正直、恥ずかしい……)

 「あのー……俺の装備は、どこにありますか?」

 「それなら、あなたが『ニンジャ』にジョブチェンジする際、必要だった経験やスキルもろもろと一緒に使わせてもらったわ。これでも少し足りないくらいだったのよ。あなたが着ているニンジャ服は防御耐性だけでなく魔法耐性も高く、自身の魔法が掛かり易くなる効果が付いているの」

 ヘーベは堂々と得意気な様子で説明してくれた。

 「それは、後から元通りに……なりますよね?」

 俺はどう話せばと良いのかと困惑しつつ、ヘーベに訊ねた。

 「もしかして、不満なのかしら? ニンジャという職業は、本来はこの世界にないわ。あなたのために設定した職業なの。それで、かなりコストを使うことになったわ。それに、あなたの世界のニンジャを調べてみたら、凄いスキルをたくさん持っていたわ。武器は剣みたいものから、ダガーみたいなもの。武器を投げての攻撃。体術も使えるみたいね。縄を使って高いところに登ったり、相手を拘束したり……!? 拘束といえば、罠の類も色々と使えるみたいね……何かの魔法なのかしら? 幻を見せたり、相手をかく乱することも出来るみたいね……それから、魔法が使えるみたいだわ」

 ヘーベは胸を張り、誇らしげに語り続けた……。

 俺は呆然とヘーベの話を聞いていたが。

 「あのー……それって、チート過ぎませんか? でも、色々とスキルはあるみたいですが、肝心の高い攻撃スキルがない気がする……!? 今、『魔法』が使えると言いましたよね?」

 色々と困惑しつつ返事をしたが、最後の魔法という言葉に遅れて反応した。

 「ニンジャって、火・水・風・土・雷属性の術が使えるのでしょう? それって、魔法よね? こんなにたくさんの属性の魔法が使えるなんて凄いわ」

 (確かに、忍者の『火遁』、『水遁』、『土遁』、『風遁』、『金遁』は有名だが!? 『雷遁』って、せめて光属性とかで言って欲しかった。それに、それらは魔法というより逃げるための手段ではないか?)

 俺はニンジャのスキルの多さと魔法という響きに一瞬興味を持ったが……。

 (ヘーベのいうニンジャって、盗賊の上位職のような……)

 俺は更に色々と考え始める。

 (以前はソードマスターで前衛職だったが、このニンジャという職業は支援職に近い感じなのだろうか? ということは、他に誰かパーティーメンバーがいるのではないか? それにしても、ニンジャという職業はこの世界にない様だが、どうしてヘーベはわざわざこんな玄人好みな職業を選んだのだろう?)

 そして、段々不安になった……。

 ヘーベは黙って俺を見つめていたが、口を開く。

 「あなたが不安に思う気持ちは分かったわ」

 (この女神さまは色々とお節介な性格なのかと感じたが、女神さまだけあって人の気持ちが分かるのだろうか……)

 俺はヘーベに外見以外で初めて敬意の気持ちを持った。

 「ここは、異世界よ! あなたが居た世界とは違うの。少なくとも、あなたのニンジャという職業は魔法が使えるわ。但し、習得するためには条件が必要ね。それから、威力は習得するための条件と関係があるみたいだわ。パーティーは、まだいないわよ。あなたが自分で、どういう構成にすると良いか考えるといいわ。あなたは、こういう事を考えるのが好きよね? 最後に、ニンジャの職業を選んだ理由よね……」

 ヘーベは坦々と説明を続けたが、ここで先程と同じ様に、腰に両手を添え身体を反らすと瞳を閉じ、一息吐いた。

 (ここで、間を取ったのは大切なことだからであろうか?)

 俺は、単に威厳を見せようと余計な間を作っているだけではないかと想像してしまう。

 女神さま相手に不謹慎かもしれないが、 

 「あなたの名前は、風間正義よね。その名前からニンジャに縁のある家系だと思ったわ。それからあなたを召還した理由だけど、ニンジャの家系だけという訳ではないの。あなたは最近アニメやゲーム、特にネットゲームばかりして……初めはゲームが好きなだけなのかと思ったけど、全然楽しそうに見えなかったわ。同じゲームをしている他の人たちは、ゲームをしている時に突然独りで話し出したり、笑ったりと気持ちの悪い……熱中しているわよね? だけど、あなたはただ作業をこなしているだけの様にしか見えなかった……全く、無感情だったわ! きっと、片思いで仲良しだった幼馴染の子に、最近恋人が出来たのが辛かったのよね?」

 この女神さまは出会って僅かなのに、これで何度目であろうか。

 堂々と誇らしげに振舞っているが、余計なことばかりしてくれる。

 (きっと親切な方なのであろう。でも、色々と俺とは感性が違うようだ。決して、頭が変だとか、頭が悪いとか……そんな事を思っては、いけないのであろう。そう思ってはいけないのだ……怒った方がいいのだろうか? もしかしたら、怒らせようとしているのだろか?)

 俺はこの可憐な女神さまの容姿と立場にかなり遠慮していたが、

 「ヘーベが思っているのは『風魔』で、俺は風間。忍者に縁があるとか、そんなことはない……それから、幼馴染のエリカに特別な恋愛感情はない! むしろ、子供の頃から、どこに行くにも有無を言わさず連れまわされていた相手だ! ストーカーと言ってもいいかもしれない。本当に毎日、あの強引さにはウンザリしていたんだ。それに、最近は彼氏が出来たとかで、毎朝通学に家まで迎えに来ることもなくなり自由になった身だ! お陰でインドアライフを満喫し、集中してネットゲームも出来るようになった訳だ!」

 ヘーベのニンジャに縁があるという言葉に驚かされたが、少しずつ苛立ちを昂らせ、柄にもなく力説してしまう。

 「えーっ!? 失恋で引き篭もりになって……無感情なネトゲ廃人になったんじゃないの?」

 ヘーベは俺の力説にも相変わらず拍子抜けするような淡白な口調で返事をした。

 俺は呆気にとられた様に呆然とする。

 何気にネトゲ廃人とか、そんな日本語まで知っているヘーベを暇な神さまなのだろうか想像してしまった――。


 ヘーベはしばらく考え中だったのか、黙って見つめていたが口を開いた。

 「もしかして、とは思うけど……!? じ、実はあなたを召還したのは、もうひとつ理由があるの……」

 ヘーベは戸惑いつつも、無理やり話を進めようとしている様に感じられる。

 「あなたを召還する前に、奪われた感情を取り戻したいとお願いしたわよね。私の感情を取り戻すと、もれなくあなたにも『感情の加護』が与えられるの」

 「感情って……何ですか? あー……えーと……つまり、俺は色々と勘違いで、この世界に召還されたのですか? 選ばれた勇者的なもの、とかでなく……もう怒ってもいいですよね」

 俺は厄介な幼馴染の影響で巻き込まれるのにはすっかり慣れ、我慢する事にも慣れていた筈だ。

 それでも、とうとう我慢出来ずに、目の前の女神さまの頭を引っ叩いた。

 「い、痛ーい!」

 ヘーベにとって、恐らく生まれて初めてのことであったのだろう。

 女神の身でありながら人間に頭を引っ叩かれ、両手で頭を押さえ蹲った。

 俺は女神さまを叩いてしまい、罰があたるかと心配するが……。

 これは世間を知らない年下の子供を叱ったのである。

 もう俺の中では、幼げだが同じくらいの年齢というイメージはなくなっていた。

 「あ、あなたは感情を失った訳ではなかったのね……」

 (感情を失くしていたから召還って……ここは療養所かよ!)

 俺は心の中で突っ込みを入れた。

 「でも、大丈夫よ! この世界での冒険は、きっとあなたを満足させてくれる筈よ!」

 自信に溢れたヘーベの言葉と表情から、一体何を根拠にと考えるのではなく。

 どうしてこんなに自信満々なのかと疑問を懐き、呆れてしまう。

 この女神さまは、ポジティブの神様さまなのだろうか……?

 ここで、俺は重要なことを聞き忘れているのに気づく。

 「ところで、ヘーベは感情を奪われたと言いましたが、具体的にはどういうことでしょうか?」

 俺は重要なことに話題をシフトしつつ、ヘーベに対する態度を改めた。

 『天罰』というものを警戒したのだ。

 「その話は外でなくて教会の中でしたいわ。立ち話にしては、少し長くなってしまったし……それに冒険者ギルドで、あなたの登録をしないといけないから」

 (こんな人通りのある場所で、異世界とか、召還とか色々と話をして人に聞かれても良いのだろうか? それにしても、立ち話にしては長過ぎる。この女神さまは段取りとか、そういった事が苦手なのだろうか? それから、この教会はヘーベに関係したものなのだろうか?)

 俺は疑問や不満を声に出せずにいた――。

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