1.初めての弟子
――異世界生活七ヶ月と十五日目。
モミジ丸は早朝、俺の初めての弟子ヘーラクレス――改め『クレア』を新しく仲間に加わえて、オリンポス港を出航した。
クレアは俺が教育したクルーたちや、俺が開発に携わったモミジ丸に感動して、船内を興味深そうに行き来している。
ちなみに昨日は、首都のアテナポリスの観光にクレアが付き添ってくれて、色々と見物することが出来た。
オーストディーテ王国のディーンの街も歴史的な建築物に感嘆させられたが。
アテナポリスの街はこの時代最も発展した都市を思わせる様な、伝統的な建物から三階建て以上の近代的な建物も見られ、主にアリーシャとアウラが目を丸めていた。
俺は途中からストレスが溜まっているだろうビアンカを連れて、ふたりで別行動したが、本当の理由をまだ誰も知らない。
――異世界生活七ヶ月と二十一日目。
モミジ丸は母港であるベネチアーノに帰港した。
モミジ丸の帰港に、人々が歓声を上げ出迎えている。
クレアはハンカチを振る船員と人々の様子を興味深そうに見つめていたが、次第に薄れる人々の歓声に怪訝な表情を浮かべる。
「兄さん、人々の歓声が段々弱まっているみたいですが、何か理由があるのですか?」
「流石だな、クレア。みんなモミジ丸が極東の男の船だと思い、彼が現れるのを待っていたのだ。だが、彼は姿を現さない事が多い。今回は比較的長い航海だったので、みんな極東の男が乗船していると思ったのだろう……気を悪くしないでもらいたい……」
「はい、兄さん分かりました。極東の男は北に向かう程、英雄として名を馳せているのですね」
俺はクレアに頷いたが、どうも気恥ずかしい。
ちなみにクレアが俺の事を「兄さん」と呼ぶのは、初めお兄ちゃんと呼ばせていたら、アリーシャとアウラに叱られて、みんなで話し合い兄さんで落ち着いたのだ。
俺はモーガン先生の弟子であるため厳密には違うが、他のみんなはクレアにとって姉弟子であり敬愛すべき人々になっている。
俺たちは頃合い見計らい、グリフォンでヘーベルタニアの街へと飛び立った。
アーラには俺とアレス、ルーナにはビアンカとアウラにオルトロスが乗っている。
オルトロスはこれまで牛の番をしていたが、牛をヘーラさまに返したのでやっと主であるビアンカと行動を共にすることになった。
勿論、コテツ同様に身体を小さくして、頭もひとつだけになっている。
コテツは元の大きさに戻り、アリーシャとリヴァイを乗せているがクレアが驚いたことは言うまでもない。
クレアは自分のグリフォンを持っており、俺たちの後に続いている。
――ヘーベルタニアの街。
俺たちは厩舎にグリフォンを預けると教会に向かった。
比較的大きな街とはいえ、どこか長閑な雰囲気を醸し出す街並みにクレアは興味深そうに眺めている。
――教会。
扉を開け中に入ると、俺たちは礼拝堂へと足を進めた。
礼拝堂に入ると、祭壇の前に自身と同じ姿をした女神像を背景にヘーベが立っている。
祭壇の脇にはいつも通り、グラッドとレベッカさんが立っていた。
俺はいつも通りヘーベの前に足を進め膝を着けたが、今回はクレアを紹介するために俺とアリーシャの間にクレアがいる。
「ああー、良く帰って来ましたね。我が従者カザマとお友達のみなさん! アナタたちの活躍は聞いていますよ……!? おやっ? 自慢の厳つい顔の凹凸が少なくなり、急に幼い顔立ちになりましたね」
『!? ぷふふふふふふ……』
みんなが一斉に頬を膨らませ、笑いを堪えたが声が漏れていた。
「ヘーベ、いきなり酷いじゃないですか! やっと顔の腫れが治ったのに、闘技場では散々悪口を言われて、クレアにも何度も説明してやっと分かってもらったんですよ。全く……」
俺は頬を膨らませ剥れてしまう。
ヘーベはそんな俺からクレアに視線を向ける。
「ヘーラクレス殿、クレアと名前を改名されたのですね。しかもカザマの弟子になるとは……大丈夫かしら? 卑怯な戦い方が移ったり、破廉恥になってしまったら、アテナがさぞ気落ちされるでしょう……」
「はあーっ!? まだ、俺の悪口を……!? イッテー! アレス、何するんですか?」
俺は久々にアレスの電流を浴びて、左手を振りながらアレスを睨む。
「うーん……故障しているかと思っていたけど、正常のようだね。女神キラーのスキルだけは反応しないのかもしれない……改良しないと……」
アレスは俺の事を気にも留めず呟いているが、聞き捨てならない内容であった。
俺は怒りを抑え、顔を引き攣らせながらも黙って耐える。
「お初にお目にかかります。青春の女神さまにお会い出来て光栄です。私の名前ですが、兄さんからヘーラさまとヘーベーさまと名前が似ていて紛らわしいと指摘を受け、改名致しました。それから、兄さんは卑怯なのではなく、百戦錬磨の猛者で戦い上手なだけだと思います。それにヘーベーさまのために、ヘーラさまにあれ程強く懇願される方が、破廉恥だとは思えませんが……」
クレアはペールセウスに汚染されていると思ったが、その堂々とした振る舞いと俺を弁護する言葉に、俺は感激した。
「そ、そう……確かに、私のために色々と頑張ってくれたみたいですね……それから、私の事は気兼ねなくヘーベと呼んでも構わないわ」
ヘーベはクレアに言い負かされただけでなく、自分のために俺が頑張ったと聞いて、悪い気も起きず複雑そうに美しい相貌を顰めた。
「アリーシャ殿、今回もカザマのお守りご苦労様でした」
「はい、モミジ丸が知らない内に改造されて、大砲というのが装備され驚きました。以前エリカが教えてくれましたが、カザマが中二病という病に罹り、興奮が収まらずにアウラにセクハラをするだけでなく、リョウマさんという自分の国の名前を連呼して大変でした。ヘーラさまの神殿では初めて謁見したというのに、許可もなく話し始めた挙句、アテナさまを嫌らしい目でジロジロ見つめたり、クレアの事も女性と間違えて嫌らしい目で見つめていました。そもそも決闘になった理由も、カザマの態度にクレアが腹を立てたのが原因でした」
俺はアリーシャを黙らせようとしたが、間にクレアがいて頬を染めて俯いている。
「それから、自分の振る舞いのせいで決闘を受ける嵌めになったにも関わらず弱音を吐き、励まそうとしたヘーラさまに大声を張り上げる無礼を働きました。更に、アテナさまに自分の事を『エージェント』と訳の分からない言葉を使い混乱させた挙句、アテナさまのことを自分の国で一二を争う程有名な女神さまだと口にし、畏れ多くもヘーラさまよりも有名だと言ったのです。それにヘーベーさまのことも引き合いに出されて、知らない人の方が多い女神さまだと言ったのですよ。それから、散々アテナさまの事を持ち上げておきながら、突然アテナさまを怒鳴り散らして、雑草がどうのと……信じられません!」
アリーシャはヘーベに告げ口している内に段々興奮してきたのか、突然声を荒げた。
俺は間にいるクレアが邪魔でアリーシャを止められないが、クレアも初めて知ったのか顔を真っ赤にして震えている。
「ア、アリーシャ、もう、その辺で……クレアもいるしな……それに、状況説明もなしに俺の言葉を告げ口しても、俺の意図までは伝わらないと思う。アリーシャは『現場主義』という言葉を知らないか? 上で決められた事が、必ずしも状況に当て嵌まる訳ではない。その状況に応じた判断が必要になるんだ。勉強熱心で賢いアリーシャなら分かるだろう」
俺の必死の説得が通じたのか、現場主義という初めて耳にする言葉が気になったのか。
アリーシャは首を傾げ、表情が穏やかに変わっていく。
俺はアリーシャの告げ口が止まっている内に話題を変える。
「ヘーベ、アテナさまには先に話しましたが、俺の国に国歌があるのをご存知でしょうか? 今回クレアと戦って気づいたのです。国際試合には試合の始まる前、両国の国歌の詠唱をするのです。両国の国旗を揚げるのも良いと思います」
ヘーベは柳眉を吊り上げ俺を見つめ、体を震わせていたが。
「ほ、本当に良く回る舌ですね。賢者になったそうですが、大商人という称号も提案した方が良いかもしれませんね。カザマの懺悔の時間は最後にしていますから……取り合えず、国歌の方は直接国王に会って決めて頂戴。私が口を挟むことではないから……」
ヘーベは意地悪な事を言いつつも、国歌に興味を持ったのか相貌が緩みそわそわし始める。
青春の女神だけあって、こういう熱くさせるものは好ましいのだと理解した。
「アウラ殿は、またカザマからセクハラを受けたそうですが、後から反省させます。今回は船の留守を守ってくれたそうですね。ご苦労様でした」
「はい、カザマは恥かしがり屋ですから、私の事は気にしないで下さい。ただ、以前から気になっていましたが……カザマは女性ではなく、男性の方が好きなのかしら……」
「はあーっ!? お、お前、何言ってるんだ! 俺は健全な男子だぞ! 俺の恋愛対象は普通に女性だ! あまり訳の分からないことを言ってると……!? イッテー!」
俺は周りを混乱させる発言したアウラを牽制しようと拳をチラつかせようとするが、電流を浴びアレスに遮られてしまう。
「……カザマの話は聞き流しましょう。ビアンカ、今回もご苦労さまです。本当は闘技場の観客席の中でも、神々専用のブースでは声を出してはいけないのですが、カザマが心配で応援したのですよね。カザマは不安に震えていましたが、ビアンカの声を聞いて勇気を得た様ですよ。ありがとう」
「はいっす。カザマはたくさんの人に見られて緊張していたので応援したっす。それから、今回も極東の男でたくさん儲けたっすよ。五十三万をカザマに貰って、一度で一千万くらいに増やしたっす。それから、神殿では退屈していましたが、カザマがヘーラさまと乳繰り合っていたっす。ヘーラさまが母親なので、第一夫人とか言っていたっすよ」
ビアンカは闘技場の賭けで儲けたお金の入った袋を見せつけ、尻尾を左右に揺らしながらハニカンだ。
俺は恐怖で身体を震わせながら周囲を見渡すと、クレアの奥でアリーシャとアウラが顔を真っ赤にして震えている。
ヘーベは柳眉を吊り上げ身体を震わせていたが、我慢出来なくなったのか。
俺の元へ足を進ませると、俺の胸倉を掴んでビンタを往復させ、幾度も俺の頬をぶった――
「はあ、はあ、はあ……クレア、あなたの事はアテナから任されています。決してそこの破廉恥君の様な真似はしないように気をつけて下さい。それから、コテツとリヴァイにアレス、今回もありがとう……」
「うむ……」
「おい、お前……いや、なんでもない……」
コテツとリヴァイが珍しく口篭り、アレスは満面の笑みを浮かべ、みんなはクレアを連れて礼拝堂を後にする。
「お前、またとんでもないことを仕出かしたな。流石の俺も引くぞ。また、夜に酒場で待ってるからな」
グラッドは俺の事を誤解している様だったが、いつも通り声を掛けてくれた――
――酒場。
みんなは俺が礼拝堂で一人取り残された後、食堂で旅の話をして盛り上がったらしい。
しかも話が終わると、俺に何も言わず村に帰っていった。
夕食もヘーベの機嫌が直らずに、コテツとアレスは気にしていない様子だったが。
クレアは緊張していたのか、育ち盛りの割りに食が進まない様子。
俺はそんなクレアを気にして、
「さあ、今日はクレアが弟子入りしたお祝いを兼ねて、リヴァイは村にいっていないが、男同士で集まったんだ。遠慮しないでどんどん頼んでくれ!」
「はい、それでは遠慮なく……夕食はヘーベが怖くて緊張しました。青春の女神さまは戦争が嫌いで、穏やかだと聞いていましたが……」
「クレア、それは違うぞ。戦争は嫌いだが、物凄く情熱的で熱い女神さまなんだ。何せ、ヘーラさまの実の娘なんだぞ。分かるだろう?」
「はっ!? そんなことはないと…………はい」
クレアは戸惑った様だが、俺の言っている事が正しいと思っていたのか頷いた。
「よし、そんな気の滅入る話は止めだ! クレアも飲んで食え! 今日はカザマの奢りだ!」
グラッドはいつも通り俺たちが来る前からソーダ水を飲んでおり、調子のいいことを言うと勝手に俺の奢りだと叫ぶ。
「あ、あの、私は未成年ですので……」
「えっ!? そういえば、十三歳だったな。俺より三つ下だが、この辺りの国は何歳から大人なんだ。俺の国では二十歳からなんだが……!? 大丈夫だ。俺も知らなかったが、酒場で普通の人が飲んでいるのは、ソーダ水でアルコールは入ってない。他の国は知らないが、この国では青春の女神さまの加護でソーダ水でも心地よい気持ちにさせてくれるようだ」
「そうなんですか? ワインとかではないんですね。庶民の方と面識がなくて知りませんでした。――それで話を戻しますが、ほとんどの国は十四歳から成人として扱われます。成人していきなり結婚はあまりないですが、成人の日に婚約するのは特別な意味があります」
クレアは頬を薄っすら染めて鼻息を荒くしたが、自分がそのつもりなのだろうか。
「クレアはいつ誕生日なんだ?」
「はい、七月七日です。それまでに強くなりたいです……」
「そうか、エリカとアウラと同じ誕生日だな。それに強くなりたい気持ちも分かるぞ」
俺は頬を染め頷くクレアを見て、ふとアリーシャを思い出す。
(確か、俺がイヴの夜アリーシャにプレゼントしたのは、十四歳の誕生日だったな……)
「なあ、十四歳の誕生日の女性にサファイアの指輪をプレゼントして……キ、キスまでしたら、特別な関係なのかな?」
俺は恐る恐るクレアに訊ねるが、クレアはグラッド以外で俺にいなかった同じ年頃の同性であり、一般的な見識がある。
「はい、常識的に考えたらプロポーズですが……!? もしかして、姉弟子の誰かと……アリーシャ殿ですね? 女神さまたちを前にした態度も風格がありましたが、兄さんの第一夫人として申し分ないですね……!? そうなると、ヘーベは第二夫人になるのですか? 女神さまを人間の身分で第二夫人にされるとは聞いたことがないのですが、型破りな兄さんですから、互いに同意の上なのですね」
クレアは先程の緊張から解放されたせいか、次々に料理を口に運びながら時折双眸を見開き坦々と説明しれくれた。
俺はクレアの話を聞き、頭を抱える。
「アレス、クレアの話は本当ですか?」
「うん、一般的にはそうなるね。でも、女神が相手となると、アリーシャにお願いして第二夫人に代わってもらう事も出来るかもしれないね。アリーシャ次第だけど……」
俺は意外と強情な性格のアリーシャは納得しないだろうと想像するが、まだ何も決まってない事に、何故自分が悩んでいるのだと首を振って気持ちを切り替える。
アレスだけでなく、コテツも嘆息した気がするが見なかったことにする。
「ところで、クレアのレベルとステータスを見せてくれないか? 勿論俺のも見せるから、ちなみにグラッドのを見せてもらったら驚くぞ」
クレアとグラッドは双眸を見開き驚いた表情を浮かべるが、
「よし、いいだろう。今日はクレアの歓迎会だから、特別に大陸最高の冒険者の力を見せてやる」
「私も構いません。グラッド殿はドラゴントレイヤーですし、興味があります。それに、兄さんの偉大さも見たいですし……」
俺はふたりの返事を聞き頷くと、言い出しっぺの自分からクリスタルを手にした。
『至高のニンジャ』で『レベルⅧ』……称号『勇者』『賢者』『影の英雄』
ステータス……体力『S』、力『S』、素早さ『SS』、耐久力『SS+』、賢さ『SS+』、器用さ『S+』、運『A』、魔法『SS』
スキル……『各種アシ改』と『オート防御』と『ディカムポジション』と『スパティウムセクト』と『女神キラー』と『文明開化』
資産『百億六千五百万ゴールド』、前歴『無銭飲食』
レベルがひとつ上がり、魔法以外のステータスも軒並み上がっている。
スキルは新たに『文明開化』がプラスされて、これは大砲のせいであろうか。
グラッドとクレアはこれだけでも驚いたが、俺の資産に驚愕した。
「まあ、全財産をこの前の闘技場で使ったからな。クレアには悪いが、自分のオッズが数百倍差をつけられたら普通怒るだろう」
「はあ、まあ、私も同じ立場であれば自尊心を傷つけられていましたが……」
クレアは引き攣った笑みを浮かべながら、包帯の様なもので隠していたクリスタルを見せた。
「へーっ……アテネリシア王国のクリスタルは青色なのか……」
「はい、国が海に囲まれているからではなく、アテナさまの知的で冷静な人柄が反映され青色なのだと思います。それでは私のをお見せしますね」
『神の子』で『レベルⅦ』……称号は『勇者』『英雄の卵』
ステータス……体力『S+』、力『S+』、素早さ『S』、耐久力『S+』、賢さ『A』、器用さ『C』、運『B』、魔法『C』
スキル……『狂乱怒涛』、『傷病平癒』
「神の子って格好良いな……それに、このステータスで前回の戦いは、ちょっと考えものだぞ。逆にいえば、コツを覚えればすぐに強くなれるな。それから、この二つのスキルは何だ。俺と違って格好良過ぎだろう」
「えへへへへ……ありがとうございます。私のスキルは怒りを解放させて大きく能力を解放させるものと怪我や病気を治すスキルですね。力を解放させると乱心状態になるので、心の制御が出来るまで人前で使えません。もうひとつは、病気や怪我を治すスキルです」
「へーっ……まだ能力が上がるのか、この前の戦いで上がってたら少し危なかったかな。グラッドと同じくらいってことだろう。でも、怪我が治るなら……」
俺はクレアの治癒スキルを聞いて、前回の戦いで立ち上がれたのではないかと訊ねようとして話を止める。
「――よし、次は俺の番だな。ひよっこども、俺の能力を知って驚くなよ。冒険者になって、半年やそこらのカザマと俺の違いをとくと見ろ」
『カヴァリエーレ』で『レベルⅧ』……称号『覇者』『ドラゴンキラー』
ステータス……体力『SS』、力『SS』、素早さ『S』、耐久力『SS』、賢さ『B』、器用さ『B』、運『B』、魔法『A』
スキル……『上級ドラゴン種能力』、『各種呪いと解除』、『デバフ無効』
資産『五百ゴールド』、前歴『セクハラ及び痴漢行為多々……』と『無銭飲食多々……』と『傷害多々……』と『器物破損多々……』
前回と変わりないかに思われたが、資産がほぼなくなっていた。
「ほーっ……流石はドラゴンキラーですね。兄さんより力は上ですね。でも、何故か耐久力は兄さんが上なんですね……!? グラッド、今、半年かそこらと言いません出したか?」
グラッドは調子に乗って口が滑った自覚が合ったのか、顔を逸らす。
「クレア、俺は本当に苦労しているんだ。能力では自分より高いグラッドより耐久力が高くなる程、いつもいつも巻き込まれて自分より強い敵とばかり戦っているんだ。大体、俺の親しい仲間の中で、人間のアリーシャ以外で俺が一番弱いんだ。いつも自分より強いヤツとばかり戦っていれば、自然と戦略を考えるだろう。クレアは運が良いぞ。俺と一緒にいれば嫌という程強いヤツと戦えるからな」
俺はグラッドの代わりに説明したが、話しているうちに自分が惨めに感じた。
だが、クレアは瞳を輝かせて俺の話を聞いている。
俺は益々クレアから尊敬されたのであった――。




