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ユベントゥスの息吹  作者: 伊吹 ヒロシ
第二十七章 アテネリシア王国
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5.二柱の女神さまからの褒美

 ――ヘーラさまの神殿

 試合後、俺たちはヘーラさまの神殿に移動し、礼拝堂の祭壇前にいる。

 「ああー、良く帰って来ましたね。我が娘婿とお友達の皆さん! アナタたちの活躍は聞いていますよ……!? おやっ? また顔の腫れが酷くなり、身体中が傷だらけの様ですが……」

 ヘーラさまは俺たちを見渡すと、ヘーベと同じ様な事を口にするが違和感を覚える。

 「はっ!? ち、違いますよね! 確か試合で勝ったらご褒美で、ヘーベの恋愛と結婚の自由を約束してくれた筈ですよね。それに顔の腫れは試合ではなくて、ヘーラさまがされた事ですから、もういい加減治して下さい。今回の試合も卑怯者とか厳つい顔と言われて、結構傷ついたんですよ」

 俺は思わず立ち上がって文句を言った。

 アレスは苦笑を浮かべているが、昨日は何度も俺の服を引っ張って止めようとしたアリーシャは俯いたまま動かない。

 「私もヘーベーの様に言ってみたかっただけです。そんなに向きにならないで頂戴」

 ヘーラさまは軽くウインクして可愛らしい仕草を見せると、いつの間にか俺の顔の腫れが引き、治っていた。

 俺は久々に元に戻った顔をペタペタ触りながら頬を緩めると。

 「ヘーベの件の約束もよろしくお願いしますね……!? そうだ! アテナさまに対しても恋愛と結婚の自由を認めて下さい。あちらの方は、ヘーラクレスが敗者の褒美を受ける筈ですが、アテナさまを結婚相手にされると喜ぶと思います。ふたりは両思いですから、アテナさまの自由を認めるのが難しくとも、結婚相手をヘーラさまの方で選べば立場的に問題ないかと思います」

 「分かっていますが……!? カザマ、あなたは何を言っているのかしら? ヘーベに対しては何度もあなたが願い出て、私が与えた試練を果たしたので特別に許したのです。本来、女神に婚姻の自由はありませんよ……ただ、カザマの提案は面白いわね。ヘーラクレスという条件が付くのであれば、不可能ではないわ。考えておきましょう。それにしても、カザマは少しせっかちではないかしら。不遜だわ……」

 俺はヘーベの話題の最中にアテナさまの話題もお願いしてしまい、叱られる覚悟していたが、意外にもヘーラさまは検討してくれるそうだ。

 俺が気に入られているのは間違いないとはっきりした。

 それから、ヘーラさまは俺を諌める様な言葉を呟いたが、頬を膨らませて剥れている。

 綺麗なお姉さんが剥れている姿に、俺は先程よりも更に可愛く感じてしまい頬を赤く染めてしまう。

 「ねえ、君、邪魔をして悪いのだけど、話が進まないからいいかな」

 俺とヘーラさまの良い雰囲気をアレスが遮り、俺の顔を見つめ嬉しそうに微笑んでいる。

 「あら、失礼したわね。カザマは約束を果たしてくれたし、私たち神々もそれに報いなければなりません。今月の中頃に神々の会議があるので、カザマが話した通りに提案しておきましょう。会議で可決されれば、北欧の神々との交渉になりますが、カザマに任せることにします。ヘーベーに知らせることにしますので、頼みましたよ」

 「はい、お任せ下さい……!? ヘーラさま、念のため付け加えさせて頂きたいのですが、何か問題が生じてヘーベに迷惑を掛けるかもしれません。ヘーベには関係がない様にして頂けませんか?」

 女神の女王らしい威厳を見せ答えてくれたヘーラさまに、俺は頭を下げよく通る声で返事をしたが、ふと気づいてしまう。

 新しく決まりごとが出来ると反発する捻くれ者がいることを。

 しかも今回は、事が大きいために用心するのに越した事はない。

 「分かったわ。私が何とかしておきましょう。カザマ、一歩前に足を進めなさい」

 ヘーラさまは微笑を湛え俺の願いを聞き入れ、俺は安堵と喜びで頬が緩む。

 そして、ヘーラさまに言われた様に、一歩前に移動して再び膝を着けた。

 ヘーラさまが祭壇から降りて、真っ直ぐ俺に足を進めてくる。

 俺は思わず訝しげにヘーラさまを見つめてしまったが、目線を下げた。

 (落ち着け! 願い事は聞き入れてもらったし、既に叱られて後で、特に悪い事もしていない筈だ。また何かお願いされるのだろうか……)

 俺は厄介事ではなければと思いつつ、ヘーラさまを待つ。

 ヘーラさまは俺の目の前で足を止めると、しばらく無言でいたが。

 「カザマ、顔を上げて、目を閉じなさい」

 俺はヘーラさまの言葉の意味が分からずに、まだ顔の腫れが残っていて治してくれるのだろうかと思った。

 そこへ、突然アリーシャの声が響く。

 「だ、駄目です!」

 「へっ!? ……あっ!?」

 俺は驚いて目を開け、振り返り掛けたところで硬直し息を漏らす。

 目の前には瞳を閉じたヘーラさまの顔が目の前にある。

 そして、口を半開きにしている俺の唇にヘーラさまの唇が重なる。

 ヘーラさまは驚いたのか双眸を見開き、目と鼻の先にある俺の目と重なる。

 ヘーラさまの熱い息吹が俺の口の中に注がれる。

 蕩ける様に甘く、柔らかくもある力強いものが俺の舌に触れる。

 俺はヘーベにも負けない熱くも刺激的な情熱を受け呆然とする。

 一瞬の静寂が続くが、ヘーラさまの顔がみるみると赤く染まる。

 「キャアアアアアアアアアアアアアア――!?」

 ヘーラさまは乙女の様な甲高い叫び声を上げると、俺から離れ。

 俺の頬にビンタを浴びせた。

 俺は頬を押さえながら茫然自失する――。

 

 またしばらく静寂が続いたが、両手で頬を押さえ乙女の様に恥らっているヘーラさまの代わりにアレスが口を開く。

 「ねえ、君、わざとかな? 今のは僕にも分からなかったのだけど……ヘーラが君の頬に、ご褒美に口付けをするつもりの筈が……」

 アレスは苦笑を浮かべ、自身にも分からないとばかりに両掌を肩の高さに上げる。

 そこへ、アレスとは反対側の隣から人の気配がした。

 「ヒ、ヒィイイイイイイ――っ!? な、なに、なにするんらー!」

 俺はアリーシャに右の頬を引っ張られ、上手く出せない声を上げる。

 「わ、私が途中で止めたのに! どうして避けなかったのですか! 昨日も私が注意していたのに、突然癇癪を起こしましたよね」

 ヘーラさまの前だということも忘れたのか、アリーシャが顔を真っ赤にして声を荒げた。

 「ち、ちがふ! 急らったから……ごめん」

 俺は不可抗力であると訴えが、怒っているアリーシャの瞳が潤んでいることに気づいてしまう。

 「ねえ、君たち、いい加減にしないか。アリーシャも痴話喧嘩は後にして欲しい。カザマの行動に関しては、さっきも言ったけど僕にも分からない。わざとではないと思うけど……」

 アレスが珍しく俺の肩を持つ様に弁護してくれて、アリーシャを諌めるが何故か途中で口篭ってしまう。

 そこへ、乙女の様に恥らいもじもじしていたヘーラさまが口を開く。

 「……アレス、新しくお父さんが出来ても良いかしら? 女神に重婚は可能なのかしら? ゼウスも人間であれば許してくれるかしら?」

 アレスは右手で顔を押さえ俯いてしまい、俺はアレスの口篭った理由を理解する。

 俺は呆然として動きを止め、隣で立っているアリーシャも俺の頬を掴んだまま固まっている。

 「ねえ、ヘーラ、取り合えず落ち着こう。ヘーベの恋愛の自由はカザマと結婚するためでもある訳だし……娘婿を奪っては体裁も悪いし……ゼウスも黙っていないと思うよ。取り合えず冷静に考えて、日を置いて答えを出しても良いと思うよ。カザマは、結婚は初めてで、初めての相手を選ぶことさせ戸惑うヘタレだから……彼が益々混乱しそうだしね」

 アレスはしばらく考え中だったのか、顔を押さえていた手を下ろすとヘーラさまを説得し始めるが、俺が勝手にヘーベの婿扱いされた挙句、ヘタレ呼ばわりされ色々と俺の悪口が交ざっていた。

 俺は頬を引っ張られたまま、顔を引き攣らせ我慢する。

 「そ、そうね。娘と同じ相手と結婚するのなら、母親である私が第一夫人となるのかしら。うふふふふ……」

 ヘーラさまはアレスの話を聞いていたのか、それとも途中まで聞いていたのか、別の解釈をし始め、両手で頬を押さえたまま虚空を見上げる様に小さな笑い声を漏らした。

 俺はこの隙を逃さずにアレスとアリーシャに目配せをすると、頬を引っ張ったままのアリーシャに膝を着かせ、一緒に頭を下げる。

 「そ、それでは、お話も終わりましたし、俺たちはこの辺で失礼しますね。吉報をお待ちしています」

 呆然と虚空を見上げたままのヘーラさまを置いて、俺たちはヘーラさまの神殿を後にした――


 ――アテナさまの神殿。

 俺たちはヘーラさまの神殿を出ると、アテナさまの神殿を訪れた。

 昨日と同様にアテナさまの礼拝堂で、祭壇の前に立つアテナさまの前で膝を着ける。

 だが、今日は先に訪れていたヘーラクレスが祭壇の脇に立っていた。

 「よく参られました。特に極東の男、先程の戦いは見事でした。ヘーラクレスもこれまでにない経験を積んだようです」

 「はい、ありがとうございます。ところで、ヘーラクレスの怪我の具合はどうですか?」

 アテナさまの俺に対する印象が変わったのか友好的な言葉を掛けてもらい、俺もそれに対して月並みな返事を返す。

 「ヘーラクレスなら大丈夫ですよ。彼は凄く丈夫ですし、私の加護を受けていますから」

 アテナさまは頬を薄っすら染め、祭壇の脇で立っているヘーラクレスも頬を染めて俯いてしまう。

 俺はふたりの様子を窺い、頃合いだと早速本題に入る。

 「……そうですか。先程、ヘーラさまの神殿に赴いた際、お願いして参りました。以前話した北欧と条約の件とヘーベに関することですが、両方とも承諾されて……北欧の件に関しては、今月の半ばに開かれる神さまの会議で取り上げて下さるそうです。アテナさまもご協力お願いします」

 「分かりました。私は約束を果たしてみせるわ」

 「ありがとうございます……実は他にもお願いしてきました。アテナさまの恋愛と結婚の自由をお願いしました」

 俺の言葉にアテナさまが双眸を見開く。

 「えっ!? どうして……極東の男は、私の加護を受けてもいないのに、しかもこれまでヘーベーの国とはあまり良い関係でもなかったわ……!? まさか、アレスが言っていた女神キラーという如何わしいスキルを使うつもりなのかしら?」

 俺はアテナさまの言葉を聞き狼狽するが、口元を引き攣らせながら。

 「お、落ち着いて下さい。俺が良からぬ事を考えたら、アレスからお仕置きを受けます。それはご存知ですよね。それに、誤解から生じたいざこざであれば、誤解を正せば解決すると思います。互いに争っても利益はありませんからね。それからヘーラさまが、結婚の自由は簡単に認められないと言われましたが、ヘーラクレスとの結婚であれば検討してくれると言ってくれました。どこの誰だが分からない相手なら兎も角、ヘーラクレスであれば幸せになれるかと……」

 「はわわわわわわわわわわ……」

 アテナさまは余程驚いたのか、顔を真っ赤にして両手で顔を覆い戸惑いの声を上げる。

 ヘーラクレスも余程驚いたのか、顔を赤く染め双眸を見開いたまま固まった。

 「ねえ、君、アテナに恩を売っておいて、何か企んでいるのかい。さっき、ヘーラとあんな事があったばかりなのに、君の女神キラーのスキルは僕の想像を超えて威力が増している様だね」

 アレスが苦笑を浮かべ口を開き、反対側に視線を向けるとアリーシャが先程の事もあってか物凄い形相で俺を睨んでいる。

 先程から大人しいビアンカとコテツは明らかに眠っていた。

 「そ、そういう怖い事を言わないで下さい。俺が悪い事すると電流が流れるのですよね」

 「うん、だから、女神キラーのスキルは判別が出来ないのかもしれないと……」

 「わ、分かりましたから、アレスは少し黙ってて下さい。アリーシャが誤解しているじゃないですか」

 「はあっ!? 私は何も誤解していません! 綺麗なヒトを見ると見境のないカザマのことなんて知りません!」

 アリーシャは否定しているが、どう見ても拗ねていると分かる。

 俺は後からしっかり説明して、念のため謝っておこうと思った。


 アテナさまが落ち着いたのか、再び口を開く。

 「コホン……極東の男、色々気になることもありますが、私に対する配慮には感謝するわ。ところで、何か望みはないのかしら?」

 「はい、アテナさまには先程の北欧の件の協力と、俺の悪口の訂正と悪口を広めるのを止めさせて欲しいです。ペールセウスが仕掛けていると思いますが……もし気に入らない様なら、今度はこちら側の闘技場で相手をして、力ずくでも言う事を聞かせるつもりです」

 「分かりました。その条件なら容易いでしょうが、ペールセウスの性格から決闘になると思いますよ」

 アテナさまは、そんなことで良いのかと言わんばかりに首を傾げる。

 俺は自分で提案しておきながら、また闘技場かと嘆息仕掛けて、拳に顎を載せて考えた。

 闘技場での戦いは観客も喜ぶし、大きな収入になるが、人殺しはしたくない。

 それに、今回の様な国際試合みたいなイベントにしては、何か物足りない気がする……。

 しかし、俺は閃いてしまう。

 「アテナさま、近隣の国々に国歌はあるのでしょうか? 旗があるのは航海の時に知りましたが……」

 「国歌? 歌ですか? 国の中で良く歌われるものなら幾つもあると思いますが……」

 「それでは、この機会に国歌を作られてはどうでしょう? 俺の国の周辺では国歌があり、今回の様な国々の威信を掛けたイベントでは必ず試合前や試合後の表彰の際に、演奏と共に歌われます」

 「面白そうね……先程の北欧の件と一緒に、極東の男の提案として議題にあげましょう。北欧の件も議会の承認を得る事は出来る筈ですが、面白く思わない神もいるでしょう。しかし、この国歌というのを並べて提案すれば、他の神々の関心を得られるでしょう。私の国では早速取り掛かりましょう」

 アテナさまは笑みを浮かべ、声も弾んでご機嫌な様子である。

 俺はアテナさまにペールセウスを叱ってもらい、俺の悪口を止めさせてもらう筈であった。

 しかし、俺が戦うのは決定になったみたいで、複雑な思いで顔を引き攣らせた。

 俺は話を進めようと話題を変える。

 「……ところで、ヘーラクレスに対してのお願いがまだですが……」

 「わ、私は、極東の男に敗れました。約束通り、何でも申しつけて下さい」

 ヘーラクレスは祭壇の脇から返事をしたが、以前とは別人の様に謙虚で丁寧な話し方に変わっていて、思わず俺は口を開け閉めして声が出なくなってしまう――。


 「ねえ、君、自分で話題を振っておいて、何も答えないのは失礼だと思うよ。君が幾ら年下の男の子が好きでも、彼はアテナの結婚相手になるんだよね」

 「はっ!? ……ち、違います! 俺は以前から言っていますが、独りっ子で兄弟や姉妹がいなかったので憧れているだけです。特に、年下が少なくてアレスと出会った時は弟的な存在が少なかったのです。でも、今はアリーシャも成長したので、そろそろ妹的な存在が欲しいかなと思っているんです。勘違いは止めて下さい」

 とんでもない事を口走ったアレスに驚き反論が遅れてしまったが、日頃誤解されてばかりなので、俺の思いをしっかりとみんなに伝えた。

 「ねえ、君、何もそこまで力強く口にすることではないと思うけど……」

 「アレスが誤解を与えたみたいで済まなかった。俺が望むのは、俺の正体……つまり極東の男が、俺であることを秘密にして欲しいという事だ。これは、昨日アテナさまに話して了承してもらっている。――それから、さっきアテナさまがお願いした俺に対する誤解を解いて欲しいんだ。盾が汚れて気に入らないのなら、へファイトスさまにお願いすれば直してくれないかな? 北欧との貿易が成功すれば、間違いなくデンマルク王国が利益を上げるからな。――二つ目は、君の名前を変えることだよ。アテナさまに聞いたけど、ヘーラさまが試練を受ける前に名付けた名前なんだろう。この機会に改名したらどうかな? 俺としてはヘーラさまとヘーベと似た名前がいるから『クレア』とか良いと思う。女の子っぽい名前だけど、俺の国ではそういう感じの名前でイケメンが多くいるんだ。きっと、君に似合うと思う」

 俺の話を聞きアテナさまが頷き、アレスも右拳を左掌に叩いて頷く。

 「流石は極東の男だわ。ヘファイストスとは、これまであまり仲が良くなくて頼めなかったけど、今後は頼み易くなるわ。それから、ヘーラクレスの名前も『クレア』で異存ないわ。賢者である極東の男が名付けた名前ですから、誇らしいわ」

 「うん、そうだね。流石にカザマは小聡明いね。確かにヘファイストスは引き受けると思う。君が絡んでくるとなると、アフロディーテも関わってくるから断れないだろうね。ヘーラクレスの名前については、試練を受けて褒美を得る訳でないのなら改名しても良い筈だよ」

 二柱の神さまに絶賛されたが、違和感を覚えた。

 (今、アテナさまが、俺の事を賢者と言った気がするが……それに、アレスは小聡明いって悪口じゃないよな……)

 「うむ、先程から少しずつ話が面白くなってきたが、貴様は既に『大魔導師』から『賢者』に称号が変わっているぞ。そもそも、アウラの様に大規模な魔法を使える訳でもないのに、不自然であったのだ」

 俺の心の声を聞いたのか、突然コテツが俺に突っ込みを入れた。

 「そ、そうですか。後から確認してみますね……」

 俺はコテツから何気に悪口を言われ、口元を引き攣らせ簡潔に返事をする。

 そこへ、祭壇の脇にいたヘーラクレスが祭壇前に足を進めた。

 ビアンカの横に膝を着いたヘーラクレスが、アテナさまに口を開く。

 「私は只今をもって、ヘーラクレスから『クレア』へと改名致します。それから、先程アテナさまにお願いした件ですが……」

 「分かりました。では、クレア、しばらく極東の男の下で修行する事を許します」

 「はい、ありがとうございます。このクレア、必ず極東の男の下で強くなり、生涯アテナさまを守ると誓います」

 アテナさまとクレアが見つめ合い、感動的な光景である。

 だが、俺とアリーシャは驚き声が出なかった――。

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