表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ユベントゥスの息吹  作者: 伊吹 ヒロシ
第三章 初めてのクエスト
16/488

1.周囲の探索

 まずは、山脈から流れてくる川沿いを進み、釣りが出来そうな場所を教わった。

 魚料理はあまり好きではない様だが、狩りが好きな習性上、釣りのポイントも知っているみたいだ。

 それから、ここ数日狩りをしているウサギなど小型の獣の狩場、他にもイノシシなど大型の獣の狩場。

 また、周辺にはオオカミやクマなどもいると教えられたが、特にオオカミは群れで行動するので囲まれない様にと教えられた。

俺は移動しながら、使えそうな植物や木の実なども観察する。

 先程までは村に近い場所を案内してくれたが。

 最後は山脈に向かい森の奥に進んで、ビアンカは足を止めた。

 「ここから先はゴブリンの縄張りで、ここから先はオークの縄張りっす」

 ビアンカは左右を指さし、いつになく真剣な表情で言った。

 「そんなに危険なのか?」

 俺も緊張しつつ答えた。

 「アタシはそれ程強いと思わなけど、集落があって集団で行動してるっすよ。でも、最近は、ゴブリンとオークの縄張りの奥に入った境目辺りに『キラーアント』が巣を作ったらしいっすね。今は、それどころではないみたいっすけど……」

 ビアンカは意味あり気なセリフ吐くと、いつもの笑みを溢す。

 (俺のレベルでは、集団を相手にするのは無理だな……キラーアントって、アリのことか? そんなに危ないのか……)

 声に出さず呟いていたが、ビアンカの合図で帰路に着いた。


 ――スライムが生息する池。

 帰りの道中で、再びビアンカが足を止めた。

 目の前には池があったが、

 「この池の辺りにはスライムが生息しているっす。今は近くにいないみたいっすね……だけど、最近、凄く大きなスライムを見たから気をつけるっすよ!」

 俺はビアンカの言葉に一瞬身体を硬直させる。

 「大きなスライムって、モーガン先生が微笑みスライムとか言ってるやつか? それはそんなに危ないのか?」

 俺は興奮して、ビアンカを問い詰める様に訊ねた。

 「えっ……何っすか? そんなに気になるっすか? 元々刃が効きづらいけど、大き過ぎてほとんど効かないっすね。それから、触れられて吸い込まれると出られなくなり、ゆっくりと消化されるっす。ただ、近づかなければ、アタシたちには害はないっすよ」

 ビアンカは、何でこんな事を聞くのだろうと不思議そうに首を傾げる。

 (なるほど、モーガン先生に聞いた通りだが、吸いこまれると脱出不能で消化されるのか……)

 俺は色々と頭の中で分析したが、

 「そろそろ戻らないとお昼になるっすよ」

 ビアンカに声を掛けられ、二人で下宿先へ戻った。


 ――モーガン邸。

 「帰ったっすよ!」

 ビアンカは尻尾を左右に振りながら中に入り、俺は後に続く。

 「お帰りなさい。ビアンカがお昼に帰ってくるなんて珍しいわね」

 アリーシャが少し驚いた様な表情をしている。

 「あっ、えーっと……今日はさっきまで、カザマを森の中に案内してたっす!」

 ビアンカは、何だか決まりが悪そうに答えた。

 そういえば、いつも日中は勉強が嫌で外にいる事を思い出す。

 「へー……」

 アリーシャは、冷ややかな視線で俺を見つめると何も喋らなくなる。

 「アリーシャ、さっきは色々とごめんな……」

 俺はアリーシャの様子を見て取り合えず謝った。

 だが、俺はアリーシャに蹴られた被害者であり悪くない筈だ。

 しかし、アリーシャは何も答えてくれない。

 (何で無視するんだ? この年頃の女の子は色々と難しいのかな……)

 俺は声に出さずに呟いた。

 三人の昼食だったが、結局終始無言で終わった。


 ――青空教室。

 俺はまず、カトレアさんに謝った。

 カトレアさんはあまり気にしてない様子だったので、

 『熱しやすいが冷めやすい』

 そういう性格なのかと想像する。

 「さっきの弓ですが、もう少し小振りのものはありませんか?」

 「あるにはあるわ。でも弦の張りが強くなるわよ……屋敷に行けばあると思うけど、自分で探した方が良さそうね」

 俺は午前中の事を思い出し弓の事を訊ねたが、カトレアさんは時間がある時に屋敷に行く様にと言ってくれた。

 俺はカトレアさんとの話が終わり、昨日の本を読み始めたがエドナの視線が気になる。

 だが、俺はこういう視線には慣れていた。

 幼馴染のエリカがベタベタしてきたせいで、過去に嫉妬の視線を嫌という程浴びたのだ。

 それも、しばらく大人しくしていると自然と止んだ。

 だから、こういった事は放置するに限ると割り切っていた。

 

 ――二時間程経っただろうか。

 昨日アリーシャから教わった所から更に先を読んでいる。

 まだ曖昧で分からない単語もあったが、何となく先に進んでいた。

 「それではカトレアさん、村に買い物に行くのでお先に失礼します」

 アリーシャがカトレアさんに挨拶して席を立っている。

 それを見ても俺も慌てて立ち上がった。

 「カトレアさん、俺も買い物の付き添いに行くので失礼します」

 カトレアさんに声を掛けアリーシャの後に続く。

 その様子を、カトレアさんは小さく笑みを浮かべ見つめている。

 (昨日は、俺もエドナをそんな感じで見守っていた筈なのに……)

 俺は声に出さず嘆いた。

 そしてアリーシャに付き添い、村へ出掛けた――。


 俺とアリーシャは村の露店に来ている。

 村の露店は街ほどではないが、色々な物を売っていた。

 だが、それよりも気になることがあった。

 ここまで、アリーシャと話していないことなのだが。

 俺はアリーシャに機嫌を直してもらおうと、辺りに何かないか探す。

 アクセサリーとかの類は分からないので食べ物を探してみると。

 売っている食材や調味料から色々と作れそうだと分かった。

 (ホットケーキとか簡単で良いだろう……)

 などと考えていて気づいた。

 「あーっ! 金がない……」

 俺は思わず叫んだ。

 今までお金を使う必要がなくて気づかなかったのである。

 正確には、酒場で必要であったが……。

 突然の俺の叫びに、アリーシャは怪訝な表情を浮かべた。

 「何ですか? 突然……」

 「いや、俺はこの国に来てからお金を使う機会がなくて、お金を持っていないことに気づいたというか……」

 決まりが悪くて、アリーシャに顔を背けて答えると。

 「うふふふふっ……カザマは面白いですね」

 アリーシャは軽く口に手を当てて笑っている。

 「なあ、アリーシャ。この村に冒険者ギルドはないか? 何かお金がもらえそうな依頼を受けたいのだが」

 「冒険者ギルド? この村にあったかどうか……。カトレアさんの屋敷に行けば分かるかもしれません」

 俺はアリーシャにお願いして、カトレアさんの屋敷に案内してもらった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ