2.久々の下宿先にて
――モーガン邸。
教会で話をしたため、帰りは夕方近くになった。
俺以外は毎日帰宅していたため、夕食の準備はそれ程時間が掛からずに済む。
アウラは既に帰宅しており、モーガン先生が帰ってきて久々に顔を合わせた。
正確にはビアンカも一時、俺と一緒に泊まりで旅をしていたが、今では懐かしく感じる。
「アリーシャ、今回の旅行で稼いだお金っす。カザマが後から渡して喜ばせた方がいいと言ったっす」
「えっ!? ちょっと、お前、何で……!? 中身のことは良く知らないが、プレゼントなら落ち着いてから、渡せば良いと言った気がする……」
ビアンカはいつも通り、早々に食事を終えるとアリーシャに闘技場で稼いだお金の袋を渡そうとしたのだ。
俺はビアンカから自分の名前を出されて慌てたが、途中でシラを切ることにした。
「うーん……カザマの今の態度が気になりますね……。それにしても、かなりたくさんある様ですが、こんなに小銭をいっぱいどうしたのですか……!? えっ……」
アリーシャは俺の顔を不審そうに見つめていたが、ビアンカから袋を受け取ろうとして床に落とす。
床に落ちた衝撃で十万ゴールド金貨が袋から飛び出した。
「へっ!? 何これ? ビアンカ、このお金はいったい……」
「えーと、これはっすね……!?」
「ご馳走様でした。俺は、急用が出来たから、今日は手伝えなくてゴメンな」
アリーシャが身体を震わせながら、ビアンカにお金のことを訊ねる。
ビアンカはアリーシャが喜んでいると思ったのか、アウラの真似の様に誇らしげに勿体ぶった。
俺はその隙に逃げ出そうとしたが、
「カザマ、ワシからみんなに話しがあるから少し待て……」
モーガン先生に真相がばれたと思ったが、お金には目もくれずに難しい表情をしている。
何事だろうと思いつつ席に戻った。
「これは闘技場で、極東の男に賭けて儲けたお金っす」
「えっ!? そういえば、ザグレスの街で評判になっていたし、カザマが何か言っていましたね……!? でも、賭け事をするには、初めにお金がいるでしょう?」
「カザマが選手で出場するからと言って昼食代をくれたっす。それで、ずっとカザマに賭け続けていたら、お金が増えたっすよ」
ビアンカはアリーシャに訊ねられ、得意気になって説明している。
「はっ!? ビ、ビアンカ! ふたりだけの秘密にしようと約束しただろう!」
「あっ!? アリーシャがびっくりして喜んでくれて、忘れたっす……」
俺はビアンカを問い詰めたが、ビアンカは頬を掻いて笑みを浮かべている。
ビアンカは何か勘違いしているようだが、余計に不味い状況になったと身体を震わせた。
「カザマ、教会でもヘーベさんが言い掛けていましたね。極東の男って……もしかして、カザマのことですか? それから、まさかと思いますが……あれだけダメだと言った賭け事をビアンカにやらせたのですか? この前は酒場に連れて行き、ソーダ水を飲ませましたよね?」
「い、いや、確かにそうなんだが……!? ソーダ水って、ノンアルコールのソフトドリンクだよな。――それに簡単に説明出来ない事情があって……」
「カザマ、言い訳は男らしくないですよ。後からゆっくり話を聞きます」
アリーシャは、俺が必死に説明しようとしているのを厳しい表情と口調で遮って、顔を逸らした。
俺は、テーブルに肘をつけて頭を抱える――。
モーガン先生は先程から真剣な表情をしながら黙っていたが、俺たちの会話が途切れると口を開いた。
「そろそろ、ワシが話をしても良いか……」
「へっ!? あ、あのー、先生、どうぞ……」
モーガン先生のあまりに真剣な様子にアリーシャは驚き、険しい表情が緩んだ。
「ビアンカのことなのだが……」
モーガン先生はビアンカの名前を出し、ビアンカを見つめた。
ビアンカは大きな瞳を丸めて、モーガン先生を見つめ返す。
「アタシのことっすか……」
「今から十五年くらい前になるだろうか……。街の教会の前にハーフの獣人の赤ん坊がいたのだ。初めは赤ん坊が捨てられたのではと思ったが……捨てられたにしてはあまりに身持ちが少なくて、教会から相談を受けたのだ。それでワシは、誰かが何かの事情で突発的に置き去りにしたか、赤ん坊が自分で移動したと考えた……」
「えっ!? でも、まだ赤ちゃんだったのですよね? 自分で移動することが出来るのですか? 隣の家から偶然這い這いして来た訳ではないのですよね?」
モーガン先生が過去のことを話し出すと、アリーシャは水色の瞳を丸め、先生を問い詰める様に口にした。
俺はアリーシャの様子と言葉を聞いて、思わず笑みが溢れてしまう。
(アリーシャのやつ、這い這いだって……いつもしっかりした物腰だが、こういう何気ない言動に、可愛らしさを感じるんだよな……)
「人の顔を見て、何を笑っているのですか? 今は大事な話をしている最中ですよ。さっきの話も終わっていないのに反省して下さい」
「アリーシャ、落ち着くっす。カザマが変なのは、初めて会った時からで……そんな急に、普通の人にはなれないっす」
俺はアリーシャに叱られて俯いたが、ビアンカが俺のために言ってくれた弁明を聞いて、アウラが言いそうな言葉だと思い身体を震わせた。
「まあー、待て……親に事情があり、子供を教会に託したのであれば……もう少ししっかり感じで置かれていた筈だ。それが高価な衣類を着ていたものの、身なりは汚れていたりと不自然であった。当時も教会にはヘーベさんがいて、教会の周りというか、街には結界が張られている。悪意のある者は進入出来ない。そこでワシは考えたのだ。この子供は何かしらのトラブルに巻き込まれて、赤子であるにも関わらず身を守るために本能で移動してきたのではないかと……」
アリーシャは余程驚いたのか、両手を口に添えて動きを止める。
「そんなことが可能なのですか……」
「ワシも初めはそう考えたのだが……赤ん坊が普通のオオカミの獣種のハーフではなく、ウェアウルフのハーフだと思ったのだ。ウェアウルフのハーフであれば、すぐに身元が分かると思ったが、状況を考えると不安で……ヘーベさんとも相談して、ワシが預かることにしたのだ……」
「アタシは、森で先生に拾われたんじゃなかったっすか……」
モーガン先生は、当時の状況を推測も含めて説明したが、ビアンカは先生の顔を見つめたまま呆然としている――。
「何となく経緯は分かりましたが、ビアンカという名前は先生が付けたのですか?」
「あっ!? 名前か? 服に名前が縫われていた。たまにどこかで迷子になっていたかも……!? やっぱり自分で移動して来たのか……」
俺は何気なくビアンカの名前の由来を尋ねたが、モーガン先生は名前の説明しつつ、ビアンカが自分の力で教会まで辿り着いたと気づいたようだ。
「あれっ!? 俺は何か変なことを聞きましたか? 先生、そんなに落ち込まないで下さい。ちなみに、名前だけでなく家名は縫われていなかったのですか?」
「ヤ、ヤカマシイ! お前にだけは哀れみを掛けられたくないぞ! それから、名前だけで家名はなかったぞ」
俺が折角先生を励ましたのに、先生は俺に突っ込まれて悔しかったのか、逆切れの様に返事をした。
「そ、そんなに怒らなくてもいいじゃないですか? それから、俺がロマリアのティラミスで情報を聞いた感じでは、首都から離れた街でも王女さまは有名だったみたいです。ビアンカという名前だけで、判別出来たのかもしれません」
「フン! お前に言われると癪だが、確かにその通りかもしれんな……」
「先生、そんなに怒らないで下さい。私も普段ふざけた言動が多く、みんなから叱れているカザマに突っ込まれると腹立たしく思います。でも、今はビアンカのことを考えないと……それで、これからどうするのですか?」
「ちょっと、二人とも、まるで俺が悪いみたいな言い方じゃないですか? 俺は何も悪いことをしてませんよ。それに、ティラミスの街で北の貴族のヴァンパイアに攫われたという噂があったと聞きました。もし事実なら、その目的が分からないとビアンカが危険な目に遭うかもしれませんよ」
モーガン先生とアリーシャは奥歯を噛み締める様に悔しそうな表情を浮かべたが、俺を睨んでも返す言葉がないのか無言でいた――。
「おい……ちょっといいか? お前たちの話に口を挟むつもりはなかったが、カザマが偉そうにしてアリーシャを困らせている様子に腹が立った。――お前の国の童話か御伽噺で、オオカミ少年の話があっただろう。いつも周りに迷惑を掛けて、自分は悪くないと嘯いている……そんなヤツの話を信じる訳がないだろう」
「うむ、私もリヴァイと同じだが、分からないことなら知ってそうなヤツから聞けば良いであろう。出来るだけ身近からだ。貴様の主は知らないようだが、一応アウラに、レベッカ、グラッド、この国の王、最後はラウル自身に聞けば良いではないか?」
リヴァイとコテツは初めて口を開いたと思ったら、リヴァイは俺の悪口を言い出してアリーシャを困らせているとまで言ったが、コテツは今後の方針について説明も加える。
俺はリヴァイの話を聞き身体を震わせ拳を強く握りながら耐え、コテツの話には頷いた。
「おお……流石に、おふたりは神話クラスの傑物だ! 口ばかり達者な弟子とは違う……」
「ええ、本当ですね。リヴァイは、いつも私のことを気に掛けてくれて本当に嬉しいです。コテツもありがとう……」
モーガン先生はリヴァイとコテツを称えて、俺の悪口を付け加える。
アリーシャは花が開く様な笑みを見せた。
(何でいつもこうなるんだ。リヴァイとコテツは俺が召還したのに、俺の悪口ばかりで、みんなの味方ばかりして……)
「おい、お前、心の中で悪口を言うのは止めろ。いつもそんな風だから、こういう目に遭うのだろう。以前も言ったが因果応報だ」
「うむ、本来は貴様の主である教会の管理者が行うことだが、貴様を甘やかしてばかりだ。仕方がないから、私たちがやりたくもないことを代わりにしているのだろう」
「えっ!? ふたりとも急に……!? 以前話に聞いた念話ですか? また、カザマがみんなを困らせる様なことでも考えていたのですか?」
俺は心の中で不平や不満を留めて我慢しようとしたが、リヴァイとコテツには筒抜けで、またも説教を受けて、アリーシャまで食いついてきた。
(何でみんな俺の悪口になると、こんなに協力的で元気になるんだ。リヴァイも難しい言葉を知っているし、アリーシャまで……)
「おい、お前、お前の事はアリーシャに任せる。お前はアリーシャから叱られるのが、お前の主と同じくらい効果があるようだ」
「うむ、そうだな。こうして普段の生活を見ていると、七にんの内ふたりに絞れるのだが……」
リヴァイの話を聞いてアリーシャは笑顔で返事をしたが、コテツの話を聞くと顔を赤くして頷く。
俺にはコテツの言っていることが理解出来なった。
取り敢えず明日は、村や森で帰ってことを伝えて、挨拶のついでに情報を集める事にする。
そして夕方から、エリカと交代で教会に行くことにした――
久々に自分の部屋でくつろいでいたが、ビアンカの服のことを思い出す。
以前王都に行った時にビアンカのために購入したが、ビアンカの尻尾の部分の加工のため渡し忘れていた。
ビアンカの部屋を訪ねるとビアンカが扉を開け、首を傾げる。
「ビアンカ、ちょっといいか」
「なんすか……」
「王都に行った時に、お前に服を買ってあげただろう。帰ってからお前の尻尾の部分の加工をしていたが、旅に出たりして渡すのが遅くなった」
「アタシの服っすか?」
「ああ、アリーシャにも一着俺の好きな服をプレゼントしたが、ビアンカにも他所行き様の可愛い服を選んでおいた。他の服は普段着用だが……」
ビアンカはあまり衣類に感心を持たないと思ったが、ヒマワリの様な大輪の笑みを浮かべる。
俺は照れ臭くなり、頬を掻きながら渡した。
ビアンカは両手で大切そうに抱えて、
「嬉しいっす。ありがとう……」
珍しく語尾が普通に聞えた気がしたが、俺は聞かなかったことにして自室に戻る。
――自室。
俺はビアンカに服を渡し、久々の自室でやる事がなくて落ち着きなくしていた。
密命を受けて他国に潜入してから気が休まる暇がなくて、多忙なことに慣れてしまったのかもしれない。
この世界に来てもうじき四ヶ月になるが、以前の生活からは考えられないと懐かしくも感じる。
(学校では体育祭も終わり、もうじき文化祭か……)
「おい、お前、お前はどうせ家の留守を守る仕事があるとか言っていただろう。そんなに長く引き篭もっていた訳でもないのに……。リア充のイベントを考える前に、自分の結婚相手を考えろ」
「うむ、だが、その前に来客だぞ……」
「カザマ、今、良いですか……」
リヴァイから不愉快な突っ込みを受けて、コテツからもと思ったがアリーシャが扉を叩いた。
俺は扉を開けると、いつも通りアリーシャを部屋に通して、久々にベッドの端に並んで座る――。
「……何だか久しぶりだな。そういえば、最近あまり会ってなくて気がついたが、少し背が伸びたんじゃないか?」
「ほ、本当ですか! 私も何となくそんな気がしていました……。私はまだ成長期ですから、色々と成長しているのですよ。うふふふふ……」
(えっ!? 叱られると思っていたが、違うじゃないか。それにアリーシャが可愛過ぎだぞ! 流石は俺の妹だ……)
俺は満足気に頷いた。
「!? 何を想像しているのですか? カザマのエッチ……」
「えっ!? 違う……俺はそんな邪なことは考えていない……ただ、アリーシャが順調に成長しているのが嬉しくて、満足していただけだ」
俺はアリーシャに破廉恥扱いされて驚いたが、いつも通り大人の対応をする。
「えっ!? どうしてカザマは、私が順調に成長すると満足なのですか……!? もしかして、私のことを異性として意識しているのですか……」
アリーシャは、俺の大人の対応に頬を赤く染めた。
「ああ、もちろん意識しているぞ。初めて会った時にも言っただろう。俺はアリーシャを実の妹の様に思っている」
俺は興奮してアリーシャに代わらぬ思いを伝えたが、左頬に衝撃が走る。
「!? ど、どうしたんだ。急に……何か、気に障ることでも言ったか?」
「そ、そうですか……みんながあれだけ怒っているのに、またですか? 私にもなのですね……」
俺は、アリーシャからビンタを受けた理由が分からずに困惑したが、俺の言動でアリーシャは益々機嫌が悪くなった様に見えた。
「そういえば、先程の話がまだでしたね……。これでは話し難いので、カザマは私の前に座ってくれますか……」
「えっ!? さっきから、急にどうしたんだ……」
アリーシャは眉を寄せ険しい表情をすると、俺に対して視線をずらし、座る場所を移動しろと言っているようである。
俺は良く分からないまま、アリーシャをこれ以上怒らせたくないと思い、アリーシャの目の前に座った。
「!? な、何をしているのですか?」
「えっ!? アリーシャが目の前に座れというから、椅子がないし……こうするしかないだろう……」
アリーシャは、俺の姿勢に目を丸くして見つめている。
俺は椅子がないので、エア椅子に座っていることを説明したのだ。
「ば、馬鹿にしているのですか!」
「ヒィイイイイイイ――っ!? ア、アリーシャ、怖いぞ……」
俺はアリーシャに叱られ言葉にならない悲鳴を上げると、ゆっくりと正座をした――。
アリーシャはしばらく俺の姿を見つめていたが、ゆっくりと口を開いた。
「賭け事はしない約束をしましたね。まさかビアンカにやらせるとは……!? もしかして、カザマはやっていませんよね? 冒険者のクリスタルを見せて下さい。ロックする機能があると聞きましたが、外して見せて下さい」
(誰だ! アリーシャに余計なことを教えたやつは、ただでは済まさないぞ……)
俺はクリスタルを見つめ密かに報復を誓うと、恐る恐る左手をアリーシャに差し出す。
「はっ!? な、何ですか? 以前コテツが壊した店内の修繕費で千五百万ゴールド程掛かったと聞いていましたが……五千五百万ゴールド? 以前と同じではないですか? まさか、ビアンカを使って二重に賭けてもらっていたのでは……」
アリーシャは、俺がギルドに預けている金額を知ると、俺を疑り深く見つめ疑いの言葉を掛けた。
俺は身の潔白を信じてもらおうと必死に叫ぶ。
「ち、違うんだ! 俺のお金は賞金でもらったお金なんだ! 本当はもっと多くもらえる筈だったんだが、闘技場の主催者が毎回の賞金を払い忘れて、最終戦のお金だけしかくれなかったんだ。それでも俺は文句を言わずにいたんだぞ! 俺は決して、お金欲しさに戦っていた訳ではないんだ! ビアンカのことは、日中は戦っているか選手用の控え室にいて知らなかったんだ!」
「そのことは取り合えず分かりました。明日ビアンカに、今後賭け事はしない様に話しておきます。それとは別に聞きたいことがあります。リヴァイとコテツからも言われましたが、カザマがいない間に女の子たちだけの集まりで話をしました。付き合いの長さでは圧倒的にエリカが上です。日頃何かとビアンカと一緒に居て構っていますし、最近の付き合いの長さではビアンカが上です。――でも以前は、カトレアさんを相手に破廉恥行為を繰り返していましたが……今ではセクハラやパワハラ行為がアウラに集中しています。ビアンカの証言では、キ、キスしようとしていたみたいですし……。カザマから異性として扱われている度合いではアウラが一番高いみたいです。本来ならアウラが圧倒的に優位で話が終わる筈でした。――ですが、ヘーベさんがカザマに……く、唇を奪われたと言いました。そして、レベッカさんが証人となりました。古今東西、女神の唇を奪ってシラを切る大罪人を過去に聞いたことがありません。カザマはどの様に思っているのですか?」
俺はアリーシャの話を全身から汗を流しながら聞いた。
今日のヘーベの話を更に細かく問い質されている様である。
俺は悪くない筈なのだが、これでは今まで通りみんなに近づくなと言われている気がした。
アウラの話は被害妄想が雑じっているとはいえ、ヘーベのことは言い逃れ出来ないと戦慄する……。
「そのことだが、一つ一つ話せば些細なことだと思うんだ。だけど、何故か色々と重なってしまい、俺もどうしたら良いのか分からないだ。以前、コテツとリヴァイに、アウラに関わり過ぎると言われて、相手にしなければいいと言われた。――それで、この前はしばらくアウラが俺を馬鹿にしても相手にしないで我慢した。その時、アリーシャも怒っていただろう? それから、アウラはストレスを発散させるかの様にザグレスの街を業火で焼いたじゃないか? 俺もどうしたらいいのか分からないんだ。アリーシャまで俺が悪いと言うなら、どうしらいいのか教えてくれよ」
俺は途中から興奮して膝を着けたまま身体を起こし、アリーシャの膝に抱きついた。
自分でもどうしようもない気持ちが止まらずに、またもアリーシャの前で涙を流してしまう。
アリーシャは厳しい表情が崩れて、落ち着きがなくなり困惑した様子だ。
それでも段々落ち着いたのか、俺の顔を膝に置いて頭を撫で始めた。
「カザマ、大丈夫ですよ。今の私では力になれないかもしれませんが……私も年内には十四歳になります。カザマと二つしか歳が離れていませんし、大人になります。これからは、私がカザマを支えてあげますから……」
「へっ!? 誕生日……それって、いつなんだ?」
「私の誕生日は十二月二十四日ですよ。何もいりませんが、お祝いの言葉を掛けてくれたら嬉しいです」
アリーシャは、俺が妹扱いしているのを気にしていたのだろうか。
唐突に再来月の誕生日を教えると、俺を励ましている様にも感じた。
(誕生日プレゼントは何もいらないって……アリーシャのことだから本当にそう思っているのだろうが、聞いてしまったからには……。それに俺の誕生日には飛び切りのプレゼントを貰っている……)
俺はアリーシャの誕生日プレゼントを忘れない様にしようと記憶した――。




