プロローグ
「素晴らしいわ!!」
真っ直ぐに伸びたプラチナの髪が輝いている。
その髪が揺れる度、腰から下の小振りな臀部が見え隠れする。
澄んだ青色の瞳は陽射しを浴びて、ますます煌きを増す。
白く極め細やかな肌と整った顔立ちは人形のようにも見える。
細身の身体は着痩せするタイプだろうか。
そんな体躯であることから幼く見えるが、白を基調としたローブから神々しさを漂わせていた。
『女神ヘーベー』は異世界の様子を眺め、興奮している。
「自分のことでなく、他人のためにここまで熱くなれる人はなかなかいないわ!」
女神ヘーベーが見ている人物は、何かの応援をしているのだろうか。
この人物の様子を調べた女神ヘーベーは満足そうであった。
その世界を十分に堪能し、別の世界を覗こうとしたところで、ある少年に目が留まる。
その少年はパソコンの画面をずっと眺め、オンラインゲームをしていた。
ほとんど自室に引きこもったまま、睡眠時間がない日もあったりと……かなり短い。
誰かと一緒にゲームをしている様だが、全く無表情・無感情のままである。
同じゲームをしている他の少年の様子を見ると、突然独りで笑みを浮かべたり・声を出したり・怒ったり・溜息を吐いたりと、何かしらの変化があるのだ。
この少年の感情は、どうしてこうも平坦に感じるのだろう?
女神ヘーベーはこの少年に興味を持ち、調べ始めた――
「この少年の名前は『フウママサヨシ』で、高校生のようね。えーと……学業、運動はかなり優秀な様だけど……何か手抜きをしている感じがあるわね。性格は明朗で優しい感じがするけど……謙遜する気質があるのかしら? 何か遠慮があるような気がするわ。対人関係は誰とでも差し障りない感じで……!? 女性、特に同じくらいの世代とは、ほとんど話しをしないわ! 彼と同じくらいの年頃で親しい女性はいないのかしら?」
女神ヘーベーは整った相貌を顰め、首を傾げていたが……。
花が開くような笑みを浮かべた。
「彼の隣の家に幼馴染の女の子がいるわ! 子供の頃はいつも一緒に遊んでいたのね。成長してからも一緒にいることが多いわ。特に女性が苦手という訳ではなさそうだわ……でも、変ね? 特に不自由なく充実した生活を過ごしていて、どうして自室に引き篭りゲームばかりする様になったのかしら? 最近の様子は……高校に入学してからは、普通に生活しているわね。入学して初めての中間試験は……やっぱり、何か手抜きをしている気がするわ! 試験が終わってから、しばらくして……!? 分かったわ! そういうことね!!」
女神ヘーベーは、この少年のことを調べて決意した。
この女神さまの性格なのか、義務感なのか。
「では、早速準備しなくては!」
異なる世界を覗き見ていた女神ヘーベーは、この世界に対するアクセス手段も理解していたのだ――。
風間正義、十五歳、高校一年生。
代々に受け継がれた秘密を持つ。
それ故、幼少の頃より出来るだけ目立たない様に躾けられていた。
彼は高校に入学後、初めの中間試験が終わり、数日後から学校を休むようになる。
そんな彼は現在、自室でオンラインゲームのプレイ中――。
最近は学校にも行かず、ゲームに夢中な彼に運命的な出来事が起きようとしていたのであった――。




