6 魔力切れで死にかけたんだけど。
敵の数は、地上、上空、合わせてざっと一万以上。残っているのはほとんどが歩兵、しかし空にはさらに新たに千機程の戦闘機が現れていた、だが苦戦しそうなものはいない。
問題は倒す方法。
エリナ達を覆う形で守っている、俺は近接攻撃は出来ない。
遠距離か、それとも、エリナ達を手に持って戦うか。
遠距離攻撃何てしたこと無いのに出来るだろうか、しかし、手に持って戦うのは、危険過ぎる。
「ええい、こうなったら、一か八かだ」
イメージしろ、口からレザーが出て敵を一掃する。
イメージは現実にかわる。レザーが真上に発射され、太陽のように激しい光を放ち空中で弾ける。
レザーは、槍の雨に変わり全てを貫いていく。
「…………」
戦場は、沈黙し、そこには死体の山と僅かに生き残った人の姿。敵軍は全滅、施設は必死の防衛のお陰か、ほとんど傷ついていない。
「うぉおおおお。軍神様だ、軍神様だぁ」
生き残りの老兵はそう言い地面に跪く。それを始めに生き残った兵士達は歓声を上げる。
軍神、一騎当千したものへ与えられる称号。これだけ、子供泣かしておいて貰える言葉じゃねえな。
「全員、大丈夫か?」
「う、ん、大丈夫だぜ、ガルダ」
「やべ、力が抜けてきた……」
涙まじりに返事するジーク。
突如として現れる脱力感。身体は強制的に霊体化される。
「大丈夫、ガルダ!? 魔力切れだよね、これ、どうしよう」
「デブから奪い取った魔力が切れたのか、大丈夫、エリナ、これくらい」
霊体化した体ですら、維持するのが難しい。
「早く魔剣を使わないとガルダが消えちまうぞ」
「そう、魔剣を早く魔剣を使わないと」
「消えるのか、まあ、あれだけ無茶すれば当たり前か」
「ちょっと待ってガルダ、諦めないで! 私達を救ってくれた英雄で召喚獣様なんだから」
ロイのアドバイスでエリナは、ごそごそと腰に巻いてあるウエストバッグから、小さな剣を取り出す。
少しずつそれはペンダントに吸収されていく。
「体が軽くなっていく。力がみなぎってきた、何なんだこれは」
「よかった、治ったみたいだね。魔剣を使って魔力を注入したんだよ。でもあと九本しか無いから大事に使わないと」
「帰りの馬車、来たわよ」
「そうか、ライラ、エリナ、ありがとう。帰るぞー」
■■■
揺れ動く馬車の中、涙を流すジーク。あの光景を見れば当然だ。逆に皆立ち直りが速すぎる。
「ごめんな、地獄に連れて行っちまって」
「いいんだ、ガルダ。これは俺が望んだんだ」
「でも、俺一人で戦っていれば。こんなもの見せずにすんだ……」
「でも、俺は、俺らは、この戦争を終わらせる事を決めた。そのために受け止めないと駄目なんだ! 皆でそう決めたんだ、絶対逃げないで、絶対終わらせるって」
「そうだよ、ガルダ。僕らは決めたんだ。あの日、奴隷にされていた頃、ガルダとまだ出会っていなかった頃に」
皆の決意は硬い。今更どうにも出来ないだろう。きっと、俺に会う前の全員で決めた約束なのだろう。
「もう、泣かない。ガルダと一緒に戦う。役に立ってみせる」
バーン、と鳴り響く銃声。馬車を狙った狙撃だろうか。しかし、今実体化したら馬車を壊してしまう。
刹那、飛び散る火花。被弾する前に剣によって弾は真っ二つに切り裂かれた。
「俺の唯一の取り柄は、目の良さと反応速度なんだ、役に立つには、ここで生かさなくてどうする」
ジークは、二刀流で剣を構え、弾の飛んできた方向を睨む。
「爺さん、馬車をもっと速く走らせてくれ! 狙われている!」
御者の爺さんは頷き全速力で馬を走らせる。しかし、馬や爺さんを狙われては、ジークも対応出来ない。
「透明化の魔結晶使うよ」
「エリナ頼んだ」
バッグから魔結晶が光だし、透明化する。
「私、弓が、得意……だ、からジーク……敵の場所おしえ、て……!」
「五時の方向、草むらの中」
弓は、真っ直ぐ飛んでいき、見事に命中する。
「ガルダが戦えないときは、俺らが戦わないと駄目なんだ!」
次々と敵は、サクラに射抜かれていく。五人目を射抜くと、完全に銃弾は飛んでこなくなる。
「終わったのか」
「どうだ、ガルダ。俺ら役に立っただろ!」
「ああ、ありがとう」