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4 自己紹介して街に行った。

 悪夢だ。大きな獣の目の前で男が燃え上がり焼け死んでいる。男の死体から青い光が溢れ出し、獣に吸収される。その光景は、何とも残酷で非情で。


 ――そして意識は覚醒していく。


 身体が震える。正確には身体はブレスレットの中の意識体である俺には身体がなく、震える感覚だけに襲われる。恐怖心による震えはじきに止み、冷静さを取り戻す。

 あれは全て俺がやったことだ。だが俺はそれを迷い無く選んだ。


 俺の感覚が狂っている、この世界に適応しているのだろうか? 戦争が起きている世界に平和ボケした感覚はいらないということだろうか? 全てあの痛みが消していったのだろう。ましてや前世の記憶すらほとんど残っていない。


 あの痛みは異世界に俺を適応させた。人殺しをどうとも思わないのもそのせいだろう。


 何より子供達が人が死ぬ光景を観て泣き声や悲鳴では無く、歓声が聴こえてきたことがこの世界の非常性と非情性を物語っている。


 何を考えているんだ俺は。そんな事は契約の達成にも子供達を幸せにする事にも関係ない。


 ……意識がはっきりともとに戻った頃にはもう一度狂っていた。


 ■■■


「朝の掃除があるので少し待っていてください。ひとりぼっちにさせてすいません、か」


 霊体化してペンダントから出たがエリナは部屋に居なく、机の上に置き手紙一枚と悲しい状況だ。奴隷だった、子供達はほとんど字の読み書きが出来ないはずだが、契約交わしある程度の知識を共有出来るようになったエリナは、おそらく俺の知識を使って学んだのではないかと考えた。


 異世界の字は読めないが読める、不思議な感覚におちいった。

 例えるなら原文を知っているせいか、不思議と読めてしまう英文、とでも言おうか。


 カチャッと、扉を開く音。屋敷の廊下からエリナが部屋に入って来る。


「すみません、私の身勝手で一人にさせてしまって」

「いや、別に良い。それより服を買いに行くぞ」

「服、誰かにプレゼントですか」

「プレゼントって訳じゃ無いが、お前ら用の服が無いとな、流石にボロ雑巾一枚だと困るだろ」

「了解しました。召喚獣様」


 太った男から奪った屋敷の部屋から二人で出ていく。


 エリナの指示で子供達は全員集まり、俺の前に整列する。学生時代の朝会を思い出す光景だ。校長の話は長かったなあ、と。


「じゃあまず、服を今から買いに行くのだが、歩きながら自己紹介しようぜ、前から順にまずはロイからだ」

「えーと、俺の名前はロイ。その、好きな食べ物は骨付き肉だ」


 自己紹介に慣れていないせいか、照れながら自己紹介していく。ロイは明るく素直でまさに好青年である年齢は奴隷だったため詳しくは分からないが中高生あたりであろう。


「僕の名前はユース。好きな遊びは読書」


 ちょっと静かな感じの子だが、顔がとてつもなく整っていて、かなりの美男子。年齢は小学校高学年か中学生あたりであろう。


「赤毛で黒色の目をしているのがユースな、はい次」

「私の名前は……サクラ……です」


 少し引っ込み思案な茶髪の女の子で、獣人なのだろうか、小動物の垂れ耳が生えている。年齢は中学生あたりであろう。


「照れ屋さんの子がサクラな、はい次」

「俺の名はジーク。夢はおおさまになることだぜ」


 元気溢れる男の子で、クラスで面白い奴ランキング一位を獲ってそうな感じだ。小学生のようなことばかり話しているが、年齢は高校生あたりであろう。


「面白そうで黒髪の奴がジークな、次どうぞ」

「私の名前はライラ。好きな食べ物はピーマン」


 緑色の髪で、気が強そうな女の子だが、その反面野菜好きという以外性がある子だ。小学校六年生のように身長が低く生意気だが年齢はガルダ以外のメンバーの中では一番歳をとっているらしく大体二十歳あたりらしい。


「強そうな女の子がライラね、はい次ー」

「私はエリナ。召喚士になっちゃったけど宜しくね」


 エリナの自己紹介が終わり、最後に俺の番がくる。


「俺はガルダ。あと召喚獣様とかじゃなくて普通にガルダでいいぞ、ガルちゃんとかでもいいぞ」

「ガルちゃんは無いかな」


 ユースのツッコミで自己紹介は全て終わり。丁度良く町に着く。


「さあ、服屋行くぞー」

「「おーー」」


 一同の声と共に服屋へと入っていく。


 ■■■


 服屋で服を買い、ある程度の装備が整った。驚いた事に試着室で見た自分の姿が鳥頭の鳥人間だった。

 霊体化して自分の大きさを縮めていたのだから、あの鳥人間が自分の姿そのものなのだろう。


「おーすげー、ここが酒場かー」


 酒場の中で驚きはしゃぐジーク。子供だけで酒場にくるのは珍しいらしく、周りの大人がざわついている。


「ギルドを作るには、酒場に来る必要があるしな、ジーク騒ぐな窓口まで行くぞ」


 ギルド設立窓口と書かれた看板、そして美人なお姉さんがそこには立っている。


「お姉さんすみません、ギルドを作りたいんですけど……」

「ごめんねー、ギルドは子供だけじゃ作れないのよ。少年兵だとしても、雇い主がいるでしょ。せめてその人が居ないと……」

「ごめんなさい、お姉さん。少し手を握ってくれませんか」


 半ば強引な感じに手を握るエリナ。霊体化した姿は契約者と少しでも関わりが無いと見えないらしく。

 手を握られ、俺の姿を見たのか驚くお姉さん。


「召喚獣が雇い主、その内容で登録したいんですか」

「ええ、まあそうなんですけども」

「まあ、召喚獣様の意思ならば逆らうことはで来ませんし、いいでしょう。それにしても物好きな召喚獣様ですね。少年兵とギルドを作るだなんて」

「まあ、これも契約なんでね」

「最初のクエストは、私の方で用意させていただきます。正式な設立が完了しましたら連絡致しますので、これを……」


 エリナの手に手渡されたのは魔結晶である。電話のような機能を持っており、通話魔法の使えない者でも通話出来るものだ。


 それにしても、この世界の召喚獣に対する信仰は凄い。戦場で一騎当千する姿は軍神と歌われ、戦場の神とされる。なかなか便利なものだ。


 信仰力に助けられながら、ギルドの仮設立は終わり、今日は家に帰ることにした。

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