2 転生したら召喚獣になってた。
目が覚めた、長い長い夢を観ていた気分だ。それにしても酷く激しい強風だ、髪型が崩れてしまうじゃないか。
いや違う、風が強いんじゃ無くて俺が落ちてんだ。
「うあ、えぇええ」
体が頭から急降下していることに気付き変な声がでる。そして本能が告げる羽を使えと。
すると、背中に生えている羽が動き体制を整える。
羽、おかしい、俺は人間だぞ。
そのときに思う、本当に死んでしまったのだと、転生したのだと。
地面への着地。
着地したさきにはまだ幼い子供たちと、一人豪勢で金のかかってそうなピカピカした服を着た太った男が居た。
「よくぞ来てくれた召喚獣ガルダよ。私と契約を結びこの戦いに勝とうぞ。生け贄ならばここに用意した、さあ喰らうが良い」
見た目も太っているがだが、声も太っている男が生け贄と言いながら幼い子供たちに指を指した。
よく見たら子供たちの服はぼろぼろの布切れ一枚だ。
そして俺は召喚獣に転生したんだな、と単純な感想と子供を生け贄扱いする大人に少し腹がたった。
「黙れ、生け贄はこんなんじゃ足りない」
「ほう、ならば何を望む」
頭が痛い、転生の副作用のようなものだろうか? 痛みと同時にこの世界についての知識が流れ込んでくる。きっと何語かわからない言葉を理解できるのも、この痛みのお陰だろう。
「あーそういうことね、なるほど。生け贄はテメェの魔力全てだ」
「冗談はよしてくれ召喚獣ガルダよ、私は最上級の召喚士であるぞ。契約相手はどうする、依り代もこちらで用意する」
「冗談じゃねーよ」
依り代、どうやらここに姿を留めておくには住む所が必要らしい。契約者が常に身につけておけるものでなければならない。そして契約相手は、バカを選ぶと困る。契約相手の言う事はある程度、従わなければならない。
さあ、誰を選ぶ? 全ての条件があっているのは誰だ、依り代になりうる物を持ち、契約者になってもいいと思える者。
「契約相手はそこの金髪碧眼ショートカットの女の子。そして依り代は首にかけているペンダントだ。生け贄はお前、それでいいな」
俺が選んだは理由ははっきり言って一目惚れだ。
綺麗な青い目に華奢な身体ぼろぼろの布切れと、しばらく風呂に入っていないだろう格好だが、おめかしをすればどこまでも化けるだろう美少女だ。年齢は大体高校生あたりであり、ぜひ仲良くなっておきたい。
そして彼女は小さく頷き、俺は太った男を喰らう。太った男の身体は燃え上がり、消えていく。
共に響く歓声、どれほど太った男が恨まれていたかがわかる。「流石、召喚獣様だ」「ざまあみろ」と子供たちははしゃぎ始める。
俺はそんなことよりも確認しなければいけないことがある。
「俺なんかと契約してよかったのか」
「はい、私を選んで下さりありがとうございます。召喚獣様が居ればきっと私達に平和が訪れます」
流れ込んでくる知識を確認する。どうやらここでは召喚獣が一番強い兵器らしい。しかも、三つまで願いを叶えるオプション付きだ。
「じゃあ、三つ願いを聴いてやる。さあ言え」
普通の人ならば願いを何にするか迷うだろう、だが彼女は違う。何の躊躇いも無く言い切る
「まず一つ、私達を守ってください。二つ、私以外の子たちにも優しくしてください。三つ、私達と共に戦争を終わらせてください。これが私の願いです」
そのとき真っ先に感じた感情は悲しさだ。こんな幼い子供が「自分の願いは戦争を終わらせることです」と言うもんだ。
もっと子供らしい願いを持たせてあげたい、それが俺の願いになった。
「わかった、ここに正式な契約を結ぶ。我が名はガルダ。汝の名はなんと申す」
「私の名はエリナ。姓名はありません」
すると、エリナのペンダントが光だし身体だけが吸い込まれる感覚を味わう。
霊体だけになった俺は、うっすら透けた状態になった。
「契約も終わったし、まず貴様らにはその汚い体と布切れを綺麗にしなきゃいけないみたいだな」
「召喚獣様の最初の目的ですね」
「ああ、そうだな。おい、そこのガキ。お前らの拠点に案内しろ」
「はーい、召喚獣様」
こうして召喚獣になった俺の新しい物語が動き出した。