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アイドルへの第一歩!?

 よし、それじゃあまずはみんなの日記を読んでいくとしようか。


 僕は基本的に読者になってくれた人の日記の読者になる。

わかりずらいかもしれないけど、これを<相互読者>というんだ。


 だから僕のタイムラインには約千人の日記が流れているってわけ。

ああ、<タイムライン>もみんなよく知っている言葉だと思うけど、日記が流れている場所のことね。


 お、早速優しくしてあげる対象が見つかったぞ!


【ゆかりちゃん:彼氏に振られちゃった。。。一年もいっしょだったのに。もう戻れないのかな。。。?】


 僕はこの『別れちゃった系』の日記が大の苦手。

まず、振ってくれる恋人がいただけで幸せだろうが!


 いけないいけない。

こんなんじゃネットアイドルにはなれないよね。


 なんて言ってあげるのがベストなんだ。

まあ、適当に、感覚でいってみよう。

イマジネーションだ。


【有倉タカキ:ゆかりちゃんは可愛いから大丈夫だよ(にっこり)ゆかりちゃんにふさわしい彼氏がきっと見つかるはずだよ♪(ゆかりちゃんさんへのコメント)】


 こんな感じかな。

よし、送信だ!


 励ますことが優しさなのかはわからないけど、励ましてもらえてうれしいのはたしかだよね。


【マカロン:学校でいぢめられる。今日は生卵が上靴に入ってた。最悪~】


 なんだこの人。

いじめられてるのにどうしてそんなに余裕なんだよ!


 いや、もしかするとほんとうはすごく苦しんでいるのかもしれない。


【有倉タカキ:大丈夫ですか? 心配です。一人で抱え込まずに周りの人に相談してみてください。もちろん僕もあなたの味方ですし、あなたの読者の方も力になってくれるはずです。(マカロンさんへのコメント)】


 僕はどんどんコメントを付けていった。

最近は日記を書くだけでも精一杯で、タイムラインを見る暇はなかった。


 案外、みんな悩んでるんだな。

おかげで優しくする対象が増えて僕としてはラッキーだけど。


 あ、コメントに返信が来てる。


【ゆかりちゃん:た、タカキさん!(びっくり)タカキさんにそんなコト言ってもらえるなんて。。。感激デス♪めげずにがんばりますっっ(はーと)タカキさんありがとう!(有倉タカキさんのコメントへの返信)】


 この人、なんだかうれしそうだ。


 そういえば最近、コメントを付けたことなんてほとんどなかったな。

自分の日記に付いたコメントも、流し読みして終わりだった。


 あれ、なんか一気に日記が更新されてタイムラインの流れが速いな。


 は?

なんだこれ。

突然のタカキTL。


 今の状況を説明すると、更新される日記のほとんどの内容に<タカキ>って言葉が入ってる。

内容は『タカキさんからコメントもらった』とか『タカキさんマジかっこいい』みたいな。


 みんな、僕のコメントの何がうれしいんだよ。

そんな中身のない言葉でいいならいつでも言ってやるって。


 でも、なんだろう。

心臓がドキドキいってる。

緊張とかじゃない。

これは……興奮っていうのかな。


 あれ、僕ってもしかしてすごい人気者?

やっぱり僕もすごい人間だったんだ!

1号はエリート、2号はイケメン。

そしてこの僕はスーパーアイドル!

恐るべし三兄弟。


 それに『ありがとう』って言われるのってうれしいんだな。

今まで誰かのために何かをしたことなんてなかったから気が付かなかった。


 でも、まだまだこんなんじゃ足りない。

単純計算でいっても今の五十倍は読者が必要だ。


 僕は上から下まで全部の日記にコメントを付けて、返信も秒で返してやった。

あとは好きにタカキの話題で盛り上がってくれればいい。


「ふう、今日はこのくらいにしておきますか」


 パソコンを閉じてベッドにダーイブ!

僕はダイブが好きだ。

ネットとベッドに限るけどね。


 まだ夜の八時を過ぎたばっかりだけど、今日は充実感と満足感で満たされてる。

満足感に満たされるって、なんかおかしいかな。


 まあいいや。

これからは僕の時代がやってくるんだ。


「ふひひっ」


 おっといけない、一人で笑うなんて頭がおかしいみたいじゃないか。


「おいお前」


 突然2号が部屋に押しかけて来た。

なんだなんだ。


「なに?」

「お前、なにしたの?」

「なんのこと?」

「やまねこ」

「は?」


 2号は僕のやまねこのアカウントを知ってる。

もちろん日記の内容も知ってる。


 僕が空想日記を書き始めたころはめちゃくちゃバカにされた。


『こんな日記書くくらいならなんかしてみたら?』


とか、


『今日の日記つまんなかった』


とか。


 ムカついて殴ってやりたかったけど我慢した。

だって2号の言ってることは正しかったから。


「見てないのかよ」

「さっき閉じたばっかり」

「ふうん……ま、ネットだからってあんまり調子に乗らないほうがいいと思うぜ。じゃ」


 は?

なんだよ最後まで説明していけよ。


 とりあえずもう一度やまねこに行ってみるか。


 ザッパーン。


 どれどれ……って、は?


 なんかすごいことになってた。

僕の日記にコメントがたくさん付いてる。


 おそるおそるクリックしてコメントを表示。


【ゆかりちゃん:あの。タカキさんがよかったらなんですけど。。。付き合ってください!】

【mimi☆:タカキさん!好きです!】

【夏未:タカキさんのコメントで救われました。タカキさんのこともっと好きになりました】

【アップルパイ:すごく優しいタカキさんを見て一目惚れしちゃいました><】

【ヨシオ:付き合いたい】


 いやまてまて。

まず公共の場で告白してんじゃねえよ。

一目惚れとかなんだよ。

お前の好みのタイプは麦茶かよ。


 最後とかもう論外だろ。

誰だヨシオって。

お前絶対男だろ。

チクショウ。


 2号が言ってたのはこれのことか。

僕の適当なコメントで多くのやまねこユーザーが僕に惚れてしまった。


 僕はなんて罪な男なんだろう。

だけどごめんよ子猫ちゃんたち……その気持ちには答えられないんだ。


 なぜって?

それはね、ここだけの話。


 僕が、女の子だからだよ。


◆つづく◆

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