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ネットアイドルになりたい僕

 みなさんどうも、こんにちは。

僕の名前は小林世恋(こばやしせれん)。世界に恋する十六歳。


 僕は現在ニートという仕事をしているんだ。


 ニートの仕事内容は至ってシンプル!まず、夕方に起きる。

適当に冷蔵庫の中を漁って、目ぼしいものを見つけたら食べる。


 腹ごしらえした後はネットの海を泳ぐ。

ここからが本格的な仕事の開始だ。


 そうだなあ、ネットの海は波が高い日と低い日の差が激しい。

ネットの波の予測は不可能に等しいから、飛び込む際は心して飛び込むこと。

へたしたら死ぬからね。


 海の泳ぎ方は人それぞれだけど、僕の場合はまず動画サイトに飛び込む。

次はアカウントを持っているSNSに順番に飛び込んでいく。

ここでは今外の世界で流行っていることをすぐに知ることができるからとっても便利!


 午前零時から一時までは休み時間。

この時間は好きなことをしていいんだけど、僕は休憩時間にも泳いでるよ。


 一時から仕事再開。

好きな海に飛び込んで泳ぎます。

何をするのも自分の自由!ただし、何をしでかしても自己責任。


 気づいたら窓の外が明るくなっているので、仕事は終わり。

布団に入って、今度は携帯からネットの砂浜でゆたーりタイム!


 そして好きな時間に寝る。

夕方から仕事ができれば問題ないから、六時くらいまではゆたーりしていい。

知らないうちに寝てしまうパターンもよくあるからね。


 まあ、僕の仕事はこんな感じ。

どう?みんなもニートになってみたいと思った?


 僕もね、ずっとニートになりたかったんだ。

中学生のとき、毎日ほんとうに忙しくて大変だった。

 

 でもさ、案外ニートも楽じゃないんだ、これが。

まずは時間がありすぎること。

ほんとうに暇。

果てしない暇の砂漠。


 『暇すぎて死にそう』って言葉があるけど、ほんとそれ。

でも、僕は暇死で死ぬわけにはいかない。

なぜなら僕は大いなる野望を抱いているから。


 特別に、僕の野望を君たちに教えてあげよう。

それはズバリ『ネットアイドルになること』だ!


 意味がわからない?うーんそうだなあ、今の時代はネットが普及しているからね。

僕が説明するよりもわかりやすい答えがきっと見つかるハズだよ。


 僕はわかってる。

現実はそう甘くはないってことをね。


 僕にはお母さんが一人とお兄ちゃんが二人いる。

お父さんは僕が生まれてすぐに天界へと召されたらしい。


 一番上のお兄ちゃんはほんとうにすごい人ですごい人。

どれくらいすごいかと言うと、もう世界をひっくり返すくらいすごい。

そんなお兄ちゃん1号は今大学三年生。

外国の大学に進学した。

もう何も言えない。

雲の上のお兄ちゃん。


 二番目のお兄ちゃんも結構すごい。

モテモテ学園王子。

僕とお兄ちゃん1号はお母さんに似てるんだけど、お兄ちゃん2号はお父さんに似てるらしい。

なんかもう、家族の僕から見てもかっこいい。

今は高校二年生。

毎年バレンタインデーにはものすごい数のチョコレートをもらうから、僕も一緒に食べてあげてる。


 お母さんはふつうのお母さん。

仕事して、ごはんを作って、掃除して、洗濯して、僕の世話をしてくれる。

いつも笑ってるいい人。

なんか町では有名人。

あ、やっぱりお母さんもすごい人だったね。


 僕は最近、危機感を感じている。

『僕はこのままでいいのだろうか』と。


 僕は思う。

このままニートのお仕事を続けるのもそう悪くない。

タダ働きだけど自由だし、何より楽しい。

僕の苦手な対人関係に悩むことも少ない。


 でも、でもだ!

もし仮に、お兄ちゃん2号も外国や遠いところへ行ってしまって、お母さんも天界へと召されたとしたら……


 残された僕はどうなってしまうんだ?

僕は社会の勉強だけなぜか苦手だったからよくわからないけど、お金とか、どうしたらいい?


 だからこのままじゃダメなんだ!

僕はどうしても、どうしてもアイドルにならなくちゃいけない!


 こうしては居られない。

まずはお母さんに相談だ!


「お母さん!」

「なあに?」

「ネットアイドルになるには、どうしたらいいと思う?」

「ネットアイドル?」


 そうだ、お母さんはネットアイドルなんて言葉知ってるわけないか。


「ネットでね、有名になることだよ」

「ふうん……世恋、そのネットアイドルっていうのになりたいの?」

「うん!」

「そうねえ……お母さんはネットをしないからわからないけど、まずは人に愛されなくちゃ」

「愛される?」

「そう。ご近所付き合いと同じ。まずは人から愛される努力をしなくちゃいけないのよ。世恋は、世恋をいじめた人たちを愛することができる?」

「できない」

「そうよね。まずは人に優しくすること。偏見を捨てて、差別をしない。そして絶対に自分がいやだと思うことを人にしないこと」


 僕はメモ用紙にお母さんの言葉の断片をメモしていく。


「愛されれば、有名になれる?」

「そうね、『愛されるイコール有名になれる』ではないわ。有名になりたいのなら歴史に残るような猟奇殺人でも犯せばすぐになれる。でも、世恋はそんなふうにして有名になりたいわけじゃないでしょう?」

「うん」

「だったら、愛されて有名になる道を選びなさい」

「わかった。ありがとう」


 お母さんの話は少しだけ難しい。


 仕事場に戻って、メモ用紙に書いた<やさしさ><へんけん><さべつ>という言葉を口に出してみる。


「よくわからないけど、実践あるのみ!」


◆つづく◆

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