9「剣術の稽古!」
てことで再び中庭へと行くぜ!
剣術の稽古なんて、異世界に来たらやりたいことのランキングに入る。
今から楽しみで仕方がない。
「って…なんじゃこりゃ!?」
中庭へと繋がる扉を開けると、一面に白い塊が地面を彩っていた。
てかこれ雪だよな…?
空から降ってるし…。
いやてかさっきまでポカポカでしたやん。
何この異常気象。
「あぁ…水精霊達が風邪を引いちゃったみたいだねぇ…仕方ない、室内でやろうか」
と、ルナはこの異常気象など当たり前かのように答えた。
いや待てよ、説明足りねぇよ。
もっとよこせ、水精霊達が風邪を引いちゃったみたいだねぇ、だけでわかるか。
「あの~…ルナさんや…説明が足りんと思うのだが…」
「説明ってなんの?」
「いやなんのって…この異常気象についての説明を…と」
「異常気象って…廻、君は世間知らずにも程があるんじゃないのかい?箱入り娘じゃあるまいし…何処かの国の王子だったりするのかね」
ルナは呆れ顔の後、茶化すように言葉を並べた。
え?何?この世界だとこれが普通なの?
いや、やっぱ説明プリーズ。
「世間知らずのこの僕に説明をお願いできないでしょうかルナ様」
俺は苦笑いで説明をまた求める。
「えっと、まず、この世界には精霊がいるんだけど…ってこれは説明いらないね」
「ッ…!」
なんと、精霊とな。
説明は欲しいがまぁさすがに精霊の存在の認識くらい出来るさ。
何せ俺はゲームではよく精霊術を使ってたからな。
もしかしてこの世界にも精霊術とかあるのか?
やべぇ!だとしたらオラワクワクすっぞ!
と、廻の心の中の興奮は置いといて、ルナは説明を続ける。
「で、その精霊達が天候を左右してるって訳」
「つまり?」
「つまり!精霊達の体調とか機嫌とか、色々なあれで天候が決まるの!」
なるほどな。
つまり天候は精霊達の気分と健康次第って訳か。
分かりやすくするとこんな感じだ。
まずは火の精霊だ。
火の精霊が怒れば、猛暑日。
火の精霊が穏やかであれば、ポカポカ。
火の精霊が泣けば何処かしらの火山が噴火するらしい。
お次は風の精霊だ。
風の精霊が怒れば、台風。
風の精霊が穏やかであれば、心地いい風が吹く。
風の精霊が泣けば竜巻が起こる。
続いて土の精霊。
どうやら土の精霊は性格がものすごく緩いらしい。
大抵はなにもしない。
ちょっとイラッとしたら地震を起こすくらいらしい。
いやそれもそれで怖いけど。
そして最後が水の精霊だ。
水の精霊は基本、怒ることはない。
体調の悪さに水の天候は左右されるらしい。
水の精霊は風邪をひけば雪。
頭痛がすれば雨。
祓腹痛は大雨。
この三つらしい。
ちなみに、大体問題を起こす精霊は火と風の精霊らしい。
よくわからんが仲が悪いんだと。
おいおい、大変だな異世界の生活は。
金を持ってない奴等は一体どんな生活してるんだよ。
生活するのにも一苦労だぜ。
と、思ったが、そんなのは本当に希らしい。
基本は、さっき俺が中庭にいたときの、春の心地よさ程度が平常だ。
どうやらこの雪に関しては三年ぶりだと言う。
ずっと春ってのもなかなかに違和感だと思うけどな…。
と、ルナからこの世界の天候と精霊について教えて貰った所でいよいよ、剣術の稽古だ。
場所を変えて、城の裏へと移動した。
そこには、公園にあるようなwc程度の個室があった。
「えっと、ルナさん…これは…?」
と、俺はそのwcに指を指してルナに問い掛けた。
「いいから!いいから!開けてみて」
えっと…これから剣の稽古するんだよなぁ…?何でこんなwcに…って…ま・さ・か!このwcの中でルナとのピンク色の展開が…?
「ッ!!」喜んで開けますとも!!
そして、俺はwcに手をかけて、扉を勢いよく開けた。
そこにはなんと、このwcのサイズとは合わせようにも合わせられないほどデカイ白い空間が中に広がっている。
まっ四角だ。
「どう?すごいでしょ!」
と、ルナは自慢げに言う。
「えっと、ここって?」
「ここは、ネスが作った特訓ルーム!」
「ネスがって事は…魔術で?」
「ん~…魔術じゃなくて、ネスが作った魔道具かな」
と、ルナは心ときめく単語を俺の前で言った。
「魔道具…?」
「そ!魔道具!この魔道具は、パンドラボックスって言って、広い空間を作り出す事が出来る魔道具!そもそも、魔道具ってのは魔力が高い者にしか作れないから高級装備として出回ってるの、魔道具を作るには、ネスぐらいの魔力が必要になるからね」
と、ルナは自慢げに答えた。
本当に弟大好きだな。
まぁでも確かにすごいな。
そんな高級装備をネスは自分で作り出す事が出来る。
ネスはこの世界で言う゛天才゛と言う奴なのだろう。
天才と言うのは何処にでもいる。
恐らく、俺の場合この世界での立場は凡人以下って所か…。
自分で言ってて悲しくなってくるな。
いや!まだ俺の異世界ライフは始まったばかりだ。
そして、ルナのネス自慢が終わり、俺とルナは個室の中に入り、お互いに剣を抜く。
剣と言っても木剣だ。
ちなみにこの木剣はルナから貰った物だ。
木剣だ、害は少ないはずだ。
まぁいざとなればネスに治癒魔術をかけてもらえると言う話らしいしな。
そして、俺は木剣をルナに構えながら質問する。
「俺がこれから習う剣術ってどんな剣術なんだ?」
と、俺が問い掛けたその瞬間だった、ルナは、既に俺の懐に潜り込み、俺が持っていた木剣を素早く凪ぎ祓う、そして、木剣の柄を俺の顎へと持ってきて、答える。
「これから私が教えるのは…今の技術と、そして剣の基本だよ…」
「ゴクリ…」
と、俺は自然と唾を飲み込んでしまった。
そしてルナは俺の懐から離れ、先程のケロッとした態度で俺にこう告げる。
「廻!一緒に頑張りましょうね!」
「イエスマム」
この後、廻は、身体中をボロボロにされ、ネスに治癒魔術をかけて貰ったそうだ。