7「魔法を使う上で大事なこと!」
「風を起こす》!」
「お!?」
廻の右腕から放たれた風の斬撃は勢いよく、一瞬、飛んだ。
飛んだのはその一瞬だけで斬撃は姿を消していた。
「…ネス…何も言わないでくれ…言いたいことは分かるから…」
「うん…」
ネスは引きつった笑顔で汗ダラダラな俺に視線を向ける。
いや~…この異世界召喚さ…戦うように設定されてないっしょ?
だって…魔法を一回使っただけでここまでの消耗って…やばい…フルマラソンを一気に走った気分…いや走った事ないけどさ。
突然、魔法を使った、と言っていてビックリしていると思うが、そのまんまなのだ。
俺は今、ネスに魔法を教えて貰っているのだ。どうやら魔法と言うのは訓練すれば誰でも使えるらしい。
そして、何故俺が魔法を教わっているかと言うと、俺が魔法も剣術も使えないと知ったネスとルナは絶句していた…あの顔はこの世の終わり見たいな顔だった。
まぁ俺も馬鹿ではない。
そりゃレベル一の冒険者がいきなり魔女と戦うと言うのだから驚くのは当たり前だ。
てか俺の場合レベルゼロに等しんだけどな。
だって体当たりも切り付けるも覚えてないからな。
うん、ドやれることじゃないな。
んまぁそんな訳で、始まったのが魔術訓練と剣術訓練って訳だ。
滅びの魔女と戦おうとする奴何て俺しかいなそうだから、と言う理由だけど…。
ちなみに魔術の方はネス、剣術の方がルナだ。
この世界には時間の概念がない話はしただろうか。
そのため一日のスケジュールはこうなる。
朝、魔術訓練。
昼、昼ご飯を食べ、少々の休憩。
そしてご飯を食べた後は日が落ちるまで剣術の訓練と言った感じだ。
う~む…なかなかなハードスケジュール。
この俺が耐えられるだろうか…体育の成績を人生でオール三しかとった事のない俺が。
見たいな心配をしてたけど…案の定だ。
てか…まだ教わって十分しか経ってないんですけど…!
ちなみに魔術訓練をしているのは城の中庭だ。
とても綺麗な緑の草が一面を彩っている。
「なぁ…はぁ…ネス…これキツくないか…?」
まったく息が整わない…マジで辛いなコレ。
ちなみに俺が使った魔法は初歩の初歩の物で、ウィンド。
と言う魔法だ。
魔術師なら誰でも使えて当たり前の術。
剣士でも使えるものがいるくらいだ。
詠唱文は《我、人は、この身を精霊に捧げ、風を起こす》てな感じだ。
詠唱とは魔法を使う上では必須な物。
その種類は数百億を超えるらしい。
てか漫画とかでもよくあるし説明の必要はないか。
とまぁここまでが俺がネスに教えてもらった魔法についての事だ。
「廻…君ね、魔力制限を忘れているよ」
「あ…」そういえば…。
「さっき説明したはずだよ、魔力は使わなきゃ増えないし、意識しなきゃコントロール出来ない、この二つは魔法を使う上では基礎中の基礎なんだ、この二つが完璧に出来なきゃ魔術師とは呼べない、この二つが出来て初めて魔術師と呼べるんだ」
「すっかり忘れてました…」
「廻は調理法を見ないで料理をする人種なんだね」
ネスは口に指をあてクスクスと笑う。
こっちで言う、説明書を見ないでゲームをやるタイプ、をここではそう言うんだ…人種て…。
「でもさネス、この魔力のコントロールってどうやんの?」
大事な事を聞き忘れたので聞いてみる。
「魔力は自分の体力に左右されるって話はしてよね?」
「ああ」
「なら簡単な話さ…自分で想像するんだ…これくらいの体力を使えばそれなりの威力は出るかな、てね。まぁ簡単に言えば想像さ、想像!」
「本当に簡単に言ってくれるな…」
想像…想像か…ん~…とりあえず腹筋を五十回やった程度の想像でやってみるか、よし。
俺は右腕をゆっくりと持ち上げ前に右の手の平を広げ、構える。
「廻、落ち着いてやってね」
「あぁ…《我、人は、この身を精霊に捧げ、風を起こす》」
その瞬間、廻の右腕から放たれた斬撃は最初とは明らかに違う鋭さと勢いで一本の木に向かって飛んだ。
その斬撃によって、太い木の枝が、スパン!、と切れた。
最初のウィンドはただ暴れる風、と言う印象だったが二度目のウィンドは鋭い風の刃、と言う印象に変わった。
明らかに変わって、廻は驚きを隠せていない。
「どう体力の方は?」
「いい具合の汗だ」
「それはよかった!それと初めての魔法の発動成功おめでとう!」
「サンキュー!」
これでやっとレベル一…かな。