23「私の後悔!」
ルナは、あれでも手加減したつもりだ、と言っていた。
この台詞に俺の背筋は心と共に震え、これから先が心配になっていた。
俺はそんな心を癒すため、日本人の最高の娯楽とも言えるお風呂へと向かっていた。
それにしても、今日は長く稽古しすぎたな。
早く風呂に
このボロボロになった体を癒すにはそれしかない、そしてお風呂に着いた俺は早々に服を脱ぎ出し、風呂の扉を開ける。
「ん?」
この一言の疑問の声を上げたのは廻ではない。
「ッ!?」
俺は固まっていた。
目の前には、純白の透き通るかの様に白い肌を見せ、大きくも小さくもなく、丁度いいくらいに成長している胸、その下から続くボディラインはとても美しく、誰もを魅了する。
細くも、締まった足、長い黒髪が、水滴と共に垂れ、その姿は女神を見ているかの様…
「じゃなくて!」
廻は扉を直ぐに閉める。
「す、すまん!ガブ!
これはその、わざとじゃないんだ!」
と、俺は赤くなった顔を右腕で覆い隠しながは、言い訳をする。
いやでも本当にわざとじゃないからね!?
ただのラッキーで!
なんと言うか、ごちそうさまと言うか、ありがとうございますと言うか…。
いや、これ以上言うと本当にわざとやった見たいに聞こえるからやめよう。
「わかってる、廻はそんな事する人じゃないもん。
それに、わざとじゃないなら謝る必要もない、元々は廻がお風呂に先に入るはずだったのに、私が我慢できなくて先に入ったのが悪いんだもん」
と、ガブは優しく言葉をかけてくれる。
その優しさと寛大さに感謝を。
てか、流石に長居はしてられないよな。
と、廻は気付く。
「じゃあ風呂入り終わったら言ってくれ。
俺は、部屋で待つことにするから」
「待って!」
廻が去ろうとすると、ガブが引き留めた。
廻は不思議に思い、そのまま扉に背を当てて「何だ?」と返事をする。
「少しでいいから話したい」
「俺とか?」
「うん…」
廻とガブリエルは扉越しに頬を染め合う。
廻はそのまま腰を下ろし、扉の前に座り聞く体制になる。
「どんな事を話そうか…。
ぶっちゃけ俺引きだしないぜ?」
俺は頬をポリポリとかきながら苦笑い。
昔、会話が行き詰まって、そのまま一時間無言になった事がある。
俺にとっては苦くも、また一つの思い出である。
「じゃあ…私が後悔した事を話すよ」
ガブは、ゆっくりとそう言った。
何かを躊躇うかの様に、けどまるで誰かに話したいと言わんばかりの声音で。
「何でそんなネガティブな話題なのかはさて置いて、いいぜ、話そう」
俺はそう返答する。
すると、ガブは「じゃあ話すね」と一言着けて、語り始める。
昔の、後悔を。
「私の後悔はお父様の事。
もう昔の話、お父様は、幼い私を残して、直ぐにいなくなってしまった。
死んじゃったの、けどそれは…私のせいなんだ」
「え…?」
その突然の発言に驚愕する廻。
「昔、お父様は私を魔獣から庇って死んだの。
そのお姿は今でも覚えてる。
私の為に戦ってくれて、血を吐いて、何度も立ち上がって、魔獣を倒した。
その時のお父様は私には英雄その者に見えた。
けど、魔獣がお父様に負わした傷は深くて、その後直ぐにね」
「そう…だったのか…」
「そして、私はお母様の悲しんでいる顔を見て、後悔した。
あの時、私が死んでいればって」
俺は自分の両の手の平を見詰める。
もしそこに、俺がいたら、俺はガブとガブのお父さんを守れたろうか?
そうすれば、こんなガブの悲しい声を聞かずに済んだのだろうか。
こんな悲しい事を言わせずに…済んだのだろうか。
「ッ…!」
廻は両拳をぎゅっと握る。
もう、昔の事、と言って切り捨てるのは簡単だ。
けど、きっと、このままじゃダメだ。
ガブをもっと、楽しい未来に導いてやりたい。
だから、ありのまま、俺が思っている事を話そう。
「ガブ、俺はお前が生きていてくれ嬉しい」
「え?」
「ガブと出会えて、凄く楽しい毎日が過ごせてる。
もし、ガブがいなかったらって思うと多分俺は夜も眠れないと思う。
ガブが生きていてくれたから、今のこの出会いがあって、今の俺がいる」
「廻…」
「だからその、上手く言えないけど、一つだけ言えるのは、生きていてくれてありがとう」
その一言が、ただ静かに響いた。
だが、響いたのは空間だけではなく、それはガブリエルの心にも響いていた。
「ッ…!私…生きてて良かったんだ…!」
声音でわかる、ガブリエルは泣いていた。
涙を流している、その涙には今まで悩みに悩んできた後悔、それらが詰まっている。
それが溢れる度に、きっとガブは新しい自分と出会える。
後悔なんて言うつまらないものより、幸せな楽しい毎日が、いっぱいガブの中にきっと入って行く。
俺はそう、信じている。
「ガブ、これからは、もっと楽しい日々を過ごそうぜ!」
守ろうこの子を、俺が変わりに。
だから強くなろう、この子の為に。
「うん…!」
涙で出ない声を、ガブは喉の奥から引っ張りだし、頷いたのだった。




