22「宝の持ち腐れ!」
「なにこれ…。
僕が何度も実験した時は一度もこんな文字…それに、この測定機は魔力量五万までは耐えられる…廻、もう一回試してみて!」
ネスは突然と語り出し、俺に言葉を投げる。
「わ、わかった…」
俺は咄嗟に言われて、手を再び翳す。
だが、何度も何度も試したが、測定不能としか出なかった。
「これってどゆこと?」
俺は苦笑いを浮かべて、ネスに訪ねる。
ネスは、額に汗を流して、驚愕の顔をする。
「考えられるのは一つだけだ。
廻の魔力量は…五万を越えてる」
「「ッ!?」」
俺とガブは驚きを隠せない。
え?マジで?何でそんなに魔力あんの?
確かに前々から、いくら魔術を放っても全然疲れないとは思ってたけど…もしかしてこれが俺の主人公補正!?
「ん…?」
俺はとある事に気づいた。
ロクに魔力のコントロールが出来ない俺にこの魔力量って…宝の持ち腐れじゃね?
「その顔、廻自分で気付いてる?」
ネスは苦笑いを浮かべてこちらに視線を向けた。
やめて、そんな可哀相な子を見る目で見ないで…。
「廻…」
ガブまでそんな哀れみの目を向けないで。
もう俺の体力はゼロよ。
俺はこの魔力測定器に、とてつもないメンタルブレイクをされた。
何で俺の異世界召喚ここまで報われないの…?え?何?いじめ?ちゃんと設定作り直した方がいいぞマジで。
だって、考えてみてくれ?
俺を召喚した美少女も、魔術も、最強設定も、無双展開も、ないだぜ!?
あぁマジでキツい…泣きたくなってきた。
そんな文句を垂れつつ、俺は剣術の稽古へと向かった。
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「アハハハ!何それ!アハハハ!あぁやばい…お腹いたい…!プッ…!アハハハ!」
ルナにあの事を話したら大笑いされた。
クッソ…殴りてぇ…。
俺はとぼとぼと歩き、庭の木の下に体育座りをする。
ルナは一息ついた所で、俺がショボンと体育座りしてる横に座る。
「こんな惨めな穀潰しに何か用ですか?」
「な、なんでそんなに卑屈になってるのよ…まぁ魔力のコントロール何かその内出来るようになるって、あのネスでも魔力を完全にコントロール出来るようになるまでに一年かかってるんだから」
「え?ネスが?」
俺は驚き、つい顔を上げる。
すると、ルナは、空を仰いで、微笑みながら語る。
「そう、ネスは昔、まったく魔術が出来なかった。
けど、とある事を切っ掛けに、ネスは強くなろうと、努力したの。
その努力が実ってネスは今十二歳にして国級魔術師、私は凄いと思ったわ。
もう充分だとも思った、けどネスはまだ上を目指してる。
上を目指してるから、努力をしたから、今のネスが前を向いて歩ける。
だから廻もきっと、努力して、前を向けば、魔力コントロールなんかちょちょいのちょいだよ!」
ルナは、指を跳ねてジェスチャーする。
クッソ…メイド美少女の励ましはかなりキュンと来るなぁもう!けど!
俺は立ち上がる。
「ありがとうルナ!
めちゃくちゃ元気沸いてきた!
それじゃ剣術の稽古を始めよう!」
「どういたしまして!」
ルナは満面の笑みをこちらに向けた後、付け加えて「今日は手加減なして行こうかしら?」と、ニヤリと笑いながら呟いていた。
俺は木剣を腰の所にしまい、頭を深く下げる。
「勘弁してください」
結局、ボコボコにされた。




