2「勘違いは誰にでも!」
「マジでか…」
あまりの実感のなさに俺は少し目の前にある光景を嘘だと思い目をこする。
「幻覚じゃないんだよな…やっぱ…」
俺はそこでとある事を思った。
もしかして…俺の願い叶った…?最高のイベントキタ…?
「異世界召喚…キタコレエェェェェェェエ!!!」
俺は、異世界人の目など気にせずに叫んだ。
この最高の展開に、最高のイベントに感謝を込めて、叫んだ。
「ッ~!!」
神様~!!神様神様神様神様ー!!
ありがとう!あんなにも貴方様に愚痴を言ったのに、神様なんてどうせやる女がいない童貞野郎とか言って本当にすみませんでした!貴方様はとても素晴らしい童貞でございます!童貞の中でも貴方様はエリートでございます!本当にありがとうございます!!
と、廻が神様のことを貶してるんだか褒めてるんだかわからない事を頭の中で言っていると…
「おい、ガキ…てめぇ何ひとんちの宿に金も払わずに勝手に寝てんだあぁん!?」
「ヒイィ!?」
いきなりガタイのいいちょびヒゲのおっさんが俺に怒鳴って来る。
てか怖ッ!!なんだこれ!?異世界来て早々こわー!!
このおっさんの台詞から察するにここは宿屋なのだろう…そして恐らく俺は金も払ってない見知らぬ客ってことか…ヤバいどうしよう…この世界の金なんて持ってねぇし…てか全部俺の部屋に置いてきたし!
「えっと…その…あの…何ていうか…はは…」
無理だー!!怖すぎる!てかなんだよこの愛想笑いキメェ!
「ちょっと待ってくれないか?」
その可愛らしい声は突然と現れた。
おぉ?!とうとうメインヒロイン登場ですかい!?
展開は王道だがそれもまたよし!さぁてどんな可愛い子と旅ができるのかなっと!
俺はでかい図体をしているおっさんの横からヒョコリと顔を出す。
「その人は僕の連れなんだ、お金はちゃんと払うから見逃してくれないか?」
その可愛らしい声の主の見た目、それはとても幼い、勿論顔と体両方だ、お?これはロリッ子ヒロインキタか?
気になる容姿は金髪で少しボーイッシュな髪型をしている。
んん~…ここは俺的には金髪のゆるふわウェーブが理想なのだけれどまぁよしとしよう。
服装はまるでどこかの貴族のおぼっちゃんが着ていそうな服だなぁ…ん?おぼっちゃん…?
「ん~??」
俺は再びその容姿をじっくりと見た。
「……」
男じゃねぇか!!そう、男だった。
廻を助けたのはショタな貴族っぽい格好をした男の子だった。
てかおいふざけんなよ!こんなBL展開求めた覚えはねぇ!!嫌だよ?!ショタとふたり旅なんて絶対に嫌だ!!こんな展開異世界召喚されたJKにやらせたらいいだろ!なぜにい俺!?
などと廻が文句を頭の中で垂れ流している内にどうやら話は済んだらしい。
「いやぁありがとうございやす!」
「いや、当たり前のことをしたまでさ」
先程まであれだけ不機嫌だったおっさんの顔が嘘みたいに緩みきっていた。
あれ…完全に買収されただろ…
「大丈夫ですか?」
と可愛い顔と声をした、男、が俺の方へ近ずき、潤んだ目で心配をしてくれた。
え、何この子超可愛い。
廻はこの瞬間だけ性別の壁を越えられる気がした。