19「紛らわしい!」
ふぅ…危なかった。
ネスとルナが止めてなかったら俺は確実にあの幼女の顔に一発ぶち込んでいた。
そんな廻を止めるのに疲れたのか、ネスは一息ついて、席に戻る。
「ま、まぁ色々あると思うけどとりあえずそう言う事だから、エリエルさんは明日からメイドとして姉さんに教えて貰ってください」
「はい」
ネスがそう言うとエリエルは笑顔で返事。
うむ美しい、眼福眼福、おじさんご飯三杯はいけちゃう。
ネスは視線をガブリエルに変える。
「それと、ガブリエルさんは明日から廻と一緒に魔術の訓練、魔術の勉強に関しては今日の夜するから、いいね?」
「はい…」
ガブリエルは辛辣な返事をする。
その態度にネスは苦笑いを浮かべ、頬をかきながら「僕も嫌われた物だなぁ…はぁ…」と、溜め息混じりに呟いた。
まぁ元気出して、ネス。
俺はネスの味方だぜ!
勿論、ガブリエルの味方でもあるがな!
そして、今後の方針が決まった。
食事も終了し、俺とルナは立ち上り、庭へと。
一応言っとくと、前に使った魔道具はネスの手元にある。
ルナが勝手に使って怒られたらしい。
何か魔術師以外が使えばたまに訳のわからない空間に繋がったりしてまだ不具合があるらしい。
つまりまだ未完成だった、と言う事だ。
まぁあの空間での練習も中庭での練習も変わりはないだろう。
廻が、部屋から退室しようとした瞬間「あの」と、後ろから呼び止められる。
振り返ってみると、そこにいたのはガブリエルだった。
「ん?何?」
俺は少し動揺した後、ガブリエルに問う。
「えっと…その、少し、お話しいいですか?」
「え~…っと…」
俺は了承を得るための視線をルナへと向ける。
「いいわよ、私は中庭で待ってるから」
「ありがとう」
ルナは、仕方ないわね、と言う笑みを見せて中庭へと向かった。
俺とガブリエルは場所を変えて、先程エリエルさんと話していたソファに座る。
何か今日めちゃくちゃお話ししてるなぁ。
いやま、美少女からのお誘いは大歓迎ですよはい。
それがガブリエルちゃんとなるともう本当に、今すぐぎゅっと抱き締めてペロペロしたい。
あ、お巡りさーんこいつです。
「それであの」
と、話を切り出そうとするガブリエル。
一体なんの話だろうか?と言う俺の疑問と共にガブリエルは言葉を続ける。
「私達ちゃんと自己紹介してないな…と、思いまして」
それな。
確かに、夫婦が自己紹介をしていないのは可笑しいよな。
あ、気が早すぎるか。
とりあえず、俺から。
「すまん、自己紹介が遅れたな。
俺の名前は、加藤 廻」
と、俺は笑顔で答える。
俺の嫁に愛想の悪いやつだと思われるのは嫌だからな。
「じゃあ廻さんと、呼ばせて貰いますね!
それじゃあ私も、私の名前は、ガブリエル、と申します。
長いので、ガブ、と、お呼びください」
「わかった、じゃあガブ、これからよろしくな」
「はい!」
こうして、俺とガブの自己紹介も終わった。
そして、今日も今日とて、ルナから一本も取れる事なく、剣術の稽古が終わった。
俺は風呂を終わらせ、ネスの部屋へと向かう。
今日も授業のお時間だ。
「はぁ…今日もボロクソにやられたなぁ…」
一本どうやったらルナから一本取れるのやら。
けど反省点と多々ある。
あそこの踏み込みがもう少し強ければルナの間合いに入れた、もしあそこで剣を降り下ろさずバックステップをしていればフェイントにやられる事もなかった。
うぅ…未熟者すぎて何も言えねぇ…。
まぁ今考えても仕方ない、とりあえずネス大先生の元へ行かねば!
待っててマイスイートハニー!
俺が君を迎えに行くからね!
「ふふ~ん♪」
俺が鼻歌を歌いながら、ネスの部屋の扉を開けようとした瞬間
「や、やめてください…」
ガブの声が扉の向こうから聞こえた。
「ほら…ちゃんとその口で…ほら、早く」
そして、次に聞こえて来たのはネスの声。
んん?え?どゆことー?
「やめ…やめて…」
え?この状況ってもしや、ネスとガブがピンク色の展開してんじゃね!?
「じゃないと僕から…」
その言葉を耳を立てて聞いた瞬間、廻は抑えきれずその扉を、バン!、と勢いよく開け、叫ぶ。
「ちょちょちょっと!おじさんそう言うの早いと思います!そう言うのは大人になってか…ら?」
廻が、何故、急に気力を失い、ポカン、とハテナマークを浮かべているのか。
「あ、廻」
「あ、廻さん」
その声は同時に聞こえる。
廻の目に写っていたのは、本を片手に持っているネスと、椅子に座っているガブリエルだった。
「えっと何してんの?」
と、俺が聞くとネスが、本を閉じて答える。
「聞いてよ廻。
ガブリエルさんったら僕から魔術の事を教わるのは嫌だって言うんだ!
だから、僕が言ったことを復唱するだけで良いって言ったのにそれすら聞いてくれないんだよ!?」
「当たり前です!
お母様にあんな酷いことを言った人の言うことなんか聞きたくありません!」
ガブはプイッと頬を膨らませながら横を向く。
ネスは涙目になりながら、困っていた。
あぁ…二人とも可愛いなぁ…いやぁ…勘違いってやっぱ誰にでもあるよね。
あの、今俺が思ってること言ってもいいか?
いやてか、言わせて貰う。
『紛らわしい会話しないでくれ』
廻は心の底からそう思った。




