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規格外な魔力量で異世界成り上がり!  作者: あだち りる
第二章「滅びの魔女さんと!」
11/31

11「滅びの魔女!」

昔話をしよう。

この世界に終焉をもたらした一人の魔女の話を。

魔女は世界が憎かった。

憎くて憎くて仕方がなかった。

なのに…とてつもない喪失感だけが残った。

後悔した。

この世界に、この世界を壊した事に。

後悔だけが残ってしまった。


魔女は世界の修復を待った。

この世界は壊したところでまたやってくる、そう願って。


魔女はとあることを考えていた。

そうだ、もしこの世界が戻ったら子供を作ろう。

私みたいな奴にならないように、後悔しないような子供を作ろう。

男の子でも女の子でも構わない。

作ろう。

だけどその前に、好きな人間を作らなければならない。

好きな男の人を作ろう。

そう決めた。


魔女の願いは叶った。

世界は戻った。

どうやらまだ生きてた人間がいたらしく、世界は修復に近付いた。

世界が完全に戻り、私、魔女と言う存在はおとぎ話の中に消えていった。


五百年が経った。

魔女は、魔女とは名のらず、平穏に暮らした。

そんなある日だ。

魔女は、一目惚れをした。

木の下で一人眠る少年に好意を抱いたのだ。

今まで抱かなかった感情が、胸を動かした。


魔女は数えられないくらいの歳をとった。

だけど見た目は変わらない。

これは魔力のお陰だ。

魔女の魔力の量は人なんかとは比べ物にならない。

そこそこ魔女はいい見た目だ。

彼と恋仲になるために魔女は普通を心掛けた。


普通の人間。

普通の女の子。

とにかく普通を目指した。

そして魔女は彼に近付いた。

彼と恋仲になることが出来た。

彼は話すと、とても優しく、穏やかな少年だった。

なんとも魔女の理想の人間なのだろう。

それに顔もいいときた。

魔女と彼は平穏な日々を過ごした。

これなら…お腹に命を宿す日も遠くないだろう。


だが、その幸せは崩れた。

彼に魔女の正体がばれた。

滅びの魔女だとばれた。

終わった。

魔女と彼の関係はもう元には戻らない。

そう思った。

だけど、彼は受け入れてくれた。

魔女と言う存在を、滅びの魔女と言う許されない存在を。

彼は許してくれた。

魔女は泣いた。

何度も泣いた。

泣き喚いた。

彼の優しさに、泣いた。


魔女と彼の間に子供が出来た。

女の子だ。

なんて可愛い笑顔なんだ。

まるで天使のようだ。

名前はーーと、つけよう。

我ながらいい名前をつけられた。

この子を大事に育てよう、ーーを。


魔女は幸せだ。

幸せすぎだ。

こんな幸せが魔女に許されていいんだろうか。

彼とーーとの幸せがいつまでも続くだろう。

この優しい日々が、この穏やかな日々が。

ずっと続くだろう。


けど、その幸せは、崩れた。

彼が死んでしまった。

魔女とまだ三歳だったーーを残して、死んでしまった。

魔女は、彼の優しにもう触れることは出来ないと知った瞬間、泣き叫んだ。

それと同時に決めた。

魔女は、この子を守る、と。


魔女の子供はすくすくと成長した。

とてもいい子だ。

この綺麗な長い黒い髪は魔女と似てとても綺麗だった。

そして、十五歳のーーの誕生日。

魔女はーーに誕生日プレゼントは何がいい?と、尋ねた。

するとーーは、独り暮らしをしたい、そう言った。

魔女は理由を尋ねた。

ーーは言った。

この森は好きだけど、私はもっと世界を見たい。

旅をしたいとかそんな我が儘は言わない。

だからお母さん、独り暮らしをさせてください。

魔女は困った。

だがいい案を思い付いた。

彼の妹に頼んではどうだろう。

死んだ彼の妹とは仲が良かった。

それに彼の妹はとても広い屋敷に住んでるらしい。

一つくらい部屋を貸して貰えるだろう。

そこにーーを預けよう。

そうすれば安心できる。

ーーとの別れは寂しいけど、ーーが初めてこんな我が儘を言ったんだ。

叶えてあげなくてどうする。

だから魔女は彼の妹に手紙を出した。

彼の妹は魔女の正体を知ってる。

だが、肝心な名前の方をずっと伝えられずにいる。

仕方がない、差出人、滅びの魔女。

と書くことにした。


そして魔女はーーと一緒に、彼の妹の家まで向かった。

この森から彼の妹の家まで一ヶ月がかかる。

魔女はーーと歩いた。

ーーの幸せを、願いながら。

読んでくださりありがとうございます!

第二章の始まりは、滅びの魔女の過去話でした!

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