↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

乙女ゲームのヒロインに転生しましたが、学校に向かう途中で異世界に退場?!

作者: Ash
掲載日:2015/11/07

以前、異世界に勇者召喚されてしまった悪役令嬢を書いたので、今度は転生ヒロインに異世界トリップしてもらいました。


転生ヒロインは電波で親を舐めきった性格がつきものですが、このヒロインなら作者も好きになれそうです。

ようやく、ここまで来た。


二時間後にゲームの舞台である成功学園の入学式を控えたあたしは制服を手に感動に浸っていた。

手にしている真新しい制服は前世のゲームの中で見た物。

ああ、これでやっと乙女ゲーム『君と過ごす日々』の成功学園に入学できるんだ。


思えば、『君と過ごす日々』のヒロイン、観音崎あかね(デフォルト名)に転生して15年。

観音崎あかねは母子家庭だったが、母の再婚で成功学園に入学できるようになるとはわかっていたけど、ゲームの中ではほとんど語られなかったこの15年は長かった。


まず、観音崎あかねの父親。

コイツはDV夫だった。

何でもかんでもママのせいにして、暴力や暴言でママを虐めていた最低な奴。

ママがコイツと結婚したのはあたしの為だ。あたしの実の父親に捨てられたママはまだ赤ん坊だったあたしを抱えて困っている時に優しくしてくれた男と結婚。

それがDV夫で戸籍上、あたしの父親になった男だ。


女性支援シェルターに一緒に行った時には子供心ながらホッとした。

それからママがDV夫とよりを戻さないように頑張ったり、他の駄目男やクズ男に引っかからないように頑張った。


ふう。あたし、良い仕事した。


そしてゲームで出てきた観音崎あかねの父親、つまりお義父さんを見た時には急いで二人をくっつけようと即席キューピッドになって悪戦苦闘したのも良い思い出だ。

頑張ったけど、これには5年はかかった。


積極的に動いて5年って、どういうことよ?!

もっと早くても良いんじゃない?

これって、ゲームの強制力?


どちらにしろ、あたしは今日から成功学園の学生。


ゲームの中のヒロインなら違和感のないものも、いざ自分が着るとなると躊躇してしまう。


ゲームの中と同様に似合っているといいけど・・・。

今日はママとお義父さんが入学式で最前列の席に着きたいって言っていたから、早く支度しなきゃ。




□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□




「ママ、本当に似合っってる?」


何度も訊くあたしに苦笑するママとお義父さん。


「似合っているから大丈夫よ。ほら、早くしないと最前列であかねの晴れ姿を見られなくなっちゃうわ」

「そうだな。勇姿をしっかりとカメラに収めるには最前列をとらないと」

「勇姿って、あなた・・・。あかねは女の子なのよ」


そう言いながらも幸せそうなママの顔に、あたしはゲーム通りになって良かったと思う。


お義父さんはママを大切にしてくれている。お金持ちだとか名家の生まれだとか、そんなものが付属品に感じるほど、そこは重要な点だ。でも、ママにとってお金や家の問題はネックになっていた。

自分みたいなコブ付きがとか、若くもないしとか。

大丈夫だよ!と何度も言って励ますしかなかった。


駄目男とクズ男なら尻込みしないのに、どうして優良物件で尻込みするのかな~?

相手が優良物件だから?


そんなこんながあったけど、今じゃ、ラブラブカップル!

イチャつく二人にリア充爆発しろ!とか、バカップルめ!とは一度も思ったりはしない。

ママがとても苦労してきたのを知っているから。

なんかもう、乙女ゲーの開始よりもママの幸せな顔を見ているだけで充分な気がする。


攻略対象を追いかけ回して放課後を過ごすより、帰宅部に入ってママと過ごすほうが魅力的に思えてくるわ~。


え? せっかく、乙女ゲーのヒロインに転生したのにもったいない?

もったいなくなんかないわよ。

この分じゃ、悪役令嬢だって転生しているかもしれないし、返り討ちやヒロイン乗っ取りなんかされるかもしれないじゃない。

でも、攻略対象たちと直に会えるっていうのも面白そうよね。


「あかね、早く」


リボンが曲がっていないか最終チェックをしているあたしに、先に玄関の外に出たママが声をかける。


「はーい。すぐ行く!」


あたしはママたちを追って玄関に向かう。

新しい革靴をつっかけるように履き、ドアの外に足を踏み出したその時――


足を下ろす地面がなかった。ポッカリと空いた闇だった。


そのまま体勢を崩して、あたしはソコに落ちていく。


「「あかね?!!」」


ママとお義父さんの驚いた声が頭上から聞こえてくる。


「ママー!!」


あたしの叫び声も虚しく、それ以降、ママとお義父さんの声は聞こえなかった。



ヒョロヒョロヒョロリロー・・・



変な鳥?の声が聞こえる。

周りは闇の中だと思っていたのに、薄暗い森の中だった。



・・・

・・・

・・・



「もしかして・・・、もしかしなくても異世界トリップ?」


熱くもなく寒くもないポカポカ陽気。


「ちょっと待って、乙女ゲーのヒロインなのよ?!」


サワサワと吹く風。


「今日がゲーム開始一日目なのよ?!」


そよぐ草木。

その足元で風に揺れるクローバーに似た白い花。


「それでなんで異世界トリップ?!」


風がやみ、あたりは物音一つしない。


「教えて、神様ー!!」


見上げた空は雲一つない晴天だった。


「どうして、乙女ゲーの世界にヒロイン転生したのに、異世界トリップさせんのよー!!」


あまりの理不尽にあたしは叫ぶ。涙が出てきた。


やっとママが幸せになれたのに、あたしが目の前でいなくなっちゃうなんて、運命はどこまでもママを虐めたら気がすむの?


「ママー!!!」


ヒョロヒョロヒョロリロー・・・


どこまでも抜けるように澄んだ青空にあたしの叫び声と謎の鳥の声だけが響いていた。

続きは思いついていないのでありません。


ママを助けるために頑張ってきたマザコンの彼女なら、異世界でも充分やっていけると思います(キリッ)。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 続編の拍手ボタンを押そうとしたら絶妙な位置に前作へのリンクが。悔しい!でも面白いです!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。