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エピローグ2

和也のスマートホンに着信があった。楓太同様幼馴染の美晴からだった。そのまま電話に出る。


「よ、美晴。どうした?」


「ねえ、楓太が仇討ちの刑に関わったの。あんたが絡んでるんでしょ?」


「は? 知らねえし。そんなことなら切るぞ。俺は俺で忙しいんだ」


「言っておくけどね、楓太、生き残ったから」


「そうか。そりゃよかったな。まあ、俺とはもう関係ないけどな。あいつ。純血の超人じゃねえし。で? お前はどうすんだよ?」


「ねえ、もうやめようよ。いいじゃん、このままうちらとフツ―の人たちで仲良くなればそれでよくない? うちの親もそうだし、和也のお父さんもお母さんもそうだったじゃん」


「そっか、お前も考えは変わらないんだな?」


「うん、別に今の暮らしで困るわけじゃないしさ」


「歴史を見ろ。ただの人間なんかに権力を握らせたら戦争、搾取、貧困の繰り返しだ。進歩がない。誰かがコントロールしてもっと生産性って奴を上げてやる必要があるんだよ。あいつらはもっと進歩できるはずだし、あいつらの進歩は俺たちが一つ上の次元へ進むために必要なんだから」


「難しいことはわかんないけどさ、自由と平和があればそれでいいじゃん」


「だから、俺が平和をもたらしてやろうとして苦労してんだよ。だけどな、美晴」


「なに?」


「人間なんかに自由は使いこなせないよ。どうせ楽な道しか選ばねえから、あいつら。逆に聞くけどなんでお前はあいつらに肩を持つ? 強い種は弱い種からエネルギーを奪って生きてるじゃないか。あいつらがやってる家畜なんかの例を出すまでもないだろ?」


「和也の言うあいつらが誰かなんてわかんないけどさ。うちらと普通の人のハーフにうちらが血や唾を打ちこめば、ワーウルフから元にもどせる血や唾を作れるようになるじゃん」


「まあな」


「それって結局うちらと人は一緒に生きてけるって事じゃないの?」


「お前、俺の言ったこと忘れてんなよ。俺ら含めて今の二種類の人類になるまで似たような霊長類同士で絶滅するまで生存競争がが繰り返されてきたんだぞ」


「それは覚えてるって。でも違う話じゃん」


「いいか? ちゃんと支配してコントロールしておかないといつか俺たちが支配されるぞ? 俺らの血は不死の薬つってあいつらに狩られてた時期だってあるんだからな」


「まじで?」


「マジだよ。だから俺が頑張ってんだろ?」


「ねえ、いつ聞いても教えてくれないけどさ。何やってるの?」


「心配するな。もうだいぶ俺の支配は進めてる。もちろん敵もいるけど協力者も多いからな。お前も見たんだろ? 仇討ちの刑。颯太が絡んじゃった奴」


「うん」


「俺の血で作ったワーウルフが勝った。ロボット工学の権威たちが作ったヒューマノイドや宇田川財閥が真似してつくったワーウルフよりも俺の血の方が強かったんだよ」


「そう…… なんだ」


 美晴はそれきり絶句した。その数秒後、和也は言った。


「あと、楓太のところ、新しい養子が来たみたいだぞ。イケメンだ。会ってみろよ」


「そんな気になれないって」


「そうか? あいつの母親はメッチャ気にいったらしいぜ。可哀想だよな、楓太。ずっとお母さんが可哀想だからって気を使って言いなりになってたのに」


「え? どういう意味?」


「ほら、あいつ、自分が親父さんの愛人の子だからさ。それを母親から言われてからずっと気を使って生きてきたらしいぜ?」


「え? そうなの? いつ聞いたの? そんなの」


「え? 中学に上がる前くらいかな、はっきり覚えてないけど」


「ふーん、そうなんだぁ…… 楓太ってママにメッチャ気を使ってたんだあ。ま、優しいもんね、あいつ。バカみたいに。知ってる? 一高(イチコ―)の入試の時、あいつの答案ちょっと見えちゃったんだけどさ」


「ああ」


「答えは書いてるのに名前書いてないの、あいつ。なんでだと思う?」


「別に。ただ書き忘れたんだろ?」


「違うって。絶対、わざとだよ。全教科だよ?」


「じゃあなんでだよ? ってかお前あいつの答案、全部見たのか」


「いいじゃん、そんなの。それよりさ、聞いてよ。絶対、あいつの横であたしがずっとわかんないとか解けないとか言ってたからだよ。あたしに付き合ってわざと落ちてくれたんだよ。一高(イチコ―)。答えはちゃんと書いてたみたいだしさ。まあ、ママへの反抗ってのもあるかもだけどね」


「なんだよ、お前。やっぱ、あいつのこと好きなのか?」


「は? そんなわけねえし」


「冗談だよ。俺たちとあいつは種族が違うんだからな。本気になるなよ。お前には純血の子を産んでもらわなきゃだし」


「だから別に好きじゃないって。でも結婚相手は自分で決めるからね」


「ああ、わかってるよ。じゃ、もういいか? 俺は俺で忙しいから。じゃあな」


 電話は切られた。美晴の頭に過去の思い出が過る。今思えばなぜあんなことをしたのかわからない。ただこう思うだけだ。


『そっかー。颯太はうちらと人間のハーフだたんだぁ。だからあいつ、あたしが唾を体に流し込んでもなんともなかったんだね。別に楓太のこと好きとかじゃなかったけど、あたしと二人のときにまで佐山、佐山うるさかかったからかなー。なんかムカついちゃったんだよねー』


『だけど、噛みついててよかったな。あれであいつの血とか唾はワーウルフの解毒剤になるはず。ワーウルフにされてたのは多分あの子だよね。担架に乗せられててもフツ―に喋ってたし…… 楓太があの子に……』


 颯太が美晴に解毒の処置をする姿を思い描く。傍から見たら口づけにしか見えないはずだ。


『ま、しょうがないっか。偶然でも楓太があんな可愛い子とキスなんかできるわけないし。噛みつくのはありえないし。それに楓太は自分の血や唾が解毒剤になるなんて知らないし』


 少し考えて呟いた。


「それに、あんなワーウルフの子のために颯太が苦労する理由もないもんね。何年かずっと一緒にいなきゃいけないんだから。そうだよ、それに楓太が自分のうちに帰れないんならあたしが匿ってあげればいいんだよ」


 自分の思い付きに気を取り直しすと徹夜で仇討ちの刑の中継を見た疲れをシャワーで洗い流すことにした。その中継が見られることは美晴にとって特権ではなく当たり前のことだったがそこに思いを馳せることは無かった。


 そして、シャワーを浴びるとなんかムカついたという理由で和也と佐山の関係について、楓太に大きな嘘をついたことなどすっかり忘れて楓太に電話をかける。呼び出し音が続く中、情けない声を出して縋ってくる颯太の顔を想像する美晴の口元は、隠しようがないほどに綻んでいた。


ここまで読んでくださって本当にありがとうございました。


二年半という期間に渡り、迷走を繰り返してしまいましたが、ここまで書き続けられたのは読んで下さるみなさま、また感想や評価、活動報告へのコメントを下さったみなさまのおかげです。


本当にありがとうございました。



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