妹
「兄ちゃん。なんかあったの?」
はっ、と洋平は顔をあげた。そこには妹の未羽がいた。時計の短針はもう八と九の間をまたいでいた。いやなんにもないよ、と洋平は未羽に言うと未羽は特に興味もなかったらしく、あっそ、と素っ気なく返した。未羽はこの学校に入学する時、心配だからと未羽に対する両親の過保護っぷりが発揮し洋平と同じ部屋に強引にされてしまった(洋平や未羽の知らないところでお金を動かしたとか、、、)。もちろん男子寮棟と女子寮棟が分かれているため、そのまま洋平の部屋に引っ越す訳にも行かず、茶道部の和室のうち距離的に女子寮棟と男子寮棟の大体間にある平屋をそのまま部屋にしたらしい。昔、発表会や学園祭の時に使っていたらしいが畳の下から札が出たや、壺の中に変な文字が書いてあるなど奇妙なことばかり起こったため沢山変な噂が流れ、いつの間にか封鎖されてしまったいわく付き物件である。物件もそうだし周りからの目もあることから洋平は結構抵抗があったものの未羽が、お父さん達怒らすと面倒だからいい、構わない、といい今はいわく付き物件で二人で暮らしている。ただ他の寮の部屋と違いトイレとキッチンがついている上に部屋もまた二つのあるため、今となったらむしろ居心地が良いと洋平は思っていた。
「なぁ未羽。今噂されてる怪物ってどう思う?」
洋平は野菜を切りながら、フライパンを持って今日のおかずを炒めている未羽にそう聞いた。
「特にそんなに意識してない。何もしなければ何もないだろうし。もし私が標的にされた時、私は何もできないだろうからどう仕様もないわ。」
そう言いながら炒めたものを皿にうつしテーブルの上においた。洋平は遅れないようにご飯をサイズの違う二つの茶碗によそい、切った野菜を皿に盛り付けテーブルの上においた。
「淡白なやつだな。女の子らしくない。」
洋平は軽口を言うと、
「誠さんには叶わない。」
と返され、そりゃそうかと洋平は苦笑した。
洋平は正直悩んでいた。妹に小悪魔に言われたことを言っていいものかどうか。おそらく現実主義者の未羽にいうと、怖くて幻覚でも見たんじゃない?、と隠しきれてないニヤケ顔で自分のことを小馬鹿にするだけだろうと洋平は感じていた。洋平もあれは幻覚だと信じたいのも山々だが、見たものにしかわからないあの異質さは本当にあったことだと自分の中で裏付けするのは容易だった。誠にこの悩みをいっても同じ返答が来そうな上に、大声で馬鹿にされることが目に見えていた。
はぁ、とため息に聞こえないように息を吐いた。頑固な両親の元で育ったためか、そもそも悩みを口に出したところで具体的な解決にはならないことは洋平は良く知っていた。
「今日の兄ちゃん、やっぱりおかしい。」
未羽はぼそっといい、ごちそうさまと言って女子寮棟へ風呂に入りに行った。食器を片付けが終わり洋平も男子寮棟に風呂に入るため向かった。向かったはずだった。向かいたかった。玄関をあけたら屋上でみた小悪魔がいた。
「お前はどう言ったタイプの変貌を遂げたい?」
小悪魔はそういった。
「怪物になるとかならないとかの話か?簡略的過ぎて良く分からない。できれば説明が欲しい。」
洋平はそう返した。いつもだったら洋平はこんな気味悪いモノが玄関にいたら飛び上がって逃げていただろうが、こういったまるで親しい先生と接するように冷静に対応することができているところが小悪魔の魔法かなにかなのだろうか。
「つまり一気に怪物に変身するか、徐々に怪物に変身するかだ。」
「いつ怪物になるか俺はわかるのか?」
「いや俺もわからない。一気にタイプは大体でいうなら一週間足らずだな。徐々にタイプは人間である期間が長いやつが多いぞ。ただ徐々にタイプは本人は大体いつ自分が変わるか分かるらしい。かなりの恐怖らしいぞ。自分が怪物になっていくことがわかるからな。」
ここ一番の笑顔を見せた小悪魔に対し、洋平は小悪魔に対し軽蔑の眼差しを向けた。
なぜこんなことをする?
ここから出して!
助けて!
をいう気になれなかった。直感でそういうのを喜ぶタイプであることは分かった。洋平は根本的に聞きたいことだけを聞いた。
「お前は何だ?この学園で何がおこっている?」
小悪魔はいった。
「俺たちある研究をしている。そのサンプルにこの学校はもってこいだっただけ。」
といい小悪魔は左頬を吊り上げた。
「それより早く答えろ。3秒以内に答えないと徐々にタイプにするぞ!」
ドスのきいた声で言った。洋平は何も言えなかった。左頬を吊り上げ小悪魔はいった。
「お前は徐々にタイプだな。」
そういい洋平の体に同化するように絡みつき腕にすうっと見たことのない文字が入った。その場で座り込み形容できない感情が溢れた。
ガララと玄関があき未羽が帰ってきた。
「?まだ風呂入ってないの?そしてそこで何してるの?」
体育座りでぼーっとしている洋平に声をかけた。なんでもない、すまん、といい男子寮の風呂へ向かった。
(やはり何かあったんだろうか?)
昔からあまり助けを求めたりしない兄だからこそ未羽は心配していた。兄のあけたドアをしめたのは誰かを知らずに。