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第四話 ややこしやー

 さて道中はなんの問題もなく進行した。人に会わない場所をあえて通って来たのだ、問題があってもらってはこまるが。あえていうなら化物、この世界では魔獣と呼ばれるやつらに何回か襲撃されたがヨルガの森にいたやつに比べれば実に雑魚極まりなかった為、戦闘シーンは大幅カットだ。

 そして目的地ブロニアス王国首都、ブローナスに二度目(・・・)の侵入を、出発して3日目(・・・)に行った。







 なにを言ってるのかわからねえと思うが俺もなんでこうなったかわからない。








 まず問題としては俺のジョギングのペースは、体感よりかなり速かったというのが一点。あとフィリー直伝の疲労回復薬が予想よりかなり優秀で、一日八時間も走れてしまったのが一点。問題及び、迷子の可能性を考えての日程だったのだが、それらもほぼ無しでの行程となったのを合わせての合計三点だ。これらのことからブローナス到着はなんと二日目の夕方になったのだ。正直街が見えた時は違う場所に出てしまったと勘違いしたほどで、フィリーがその姿を知っていなければ通り過ぎてしまうところだったほど、信じれなかったよ。

 まあまあ速いことは悪いことじゃない、むしろ良い事だろうからとりあえず置いておく。そして俺は街から少し離れた森に荷物一式を隠して街へと向かった。なんでそんな面倒な事をするかというと、俺には一つの懸念があった。それはフィリーにも解決し得ない事でもあった物価の把握だ。

 俺が持ってきた荷物はそのほとんどを金にするために運んで来たものなのだが、それが安い場合は問題ない。しかし高すぎた場合が問題だ。そうで合った場合出所を聞かれたり、有名になってしまう危険性があるのだが、それは今は全力で回避したい。街道を逸れて走ってきたこともそうなのだが俺は極力目立ちたくはない。これは性格的な問題ではなく、俺が叶えたい目標のためにはわりと必要なことだからだ。そして俺が持ってきた中で魔獣を倒して得たものはフィリーの常識でいうならば安いとは全く思えないものだ。

 その内約はクマ型の魔獣の皮四爪五、猿型の皮と爪八セット、狼の皮が二十一に虎の皮が一だ。常識的に言えばたぶん熊と虎はかなり強い部類で希少性も高いはずだ。熊の皮はかなりの強度を持っていて、俺の全力の投球にも頭の部分以外だと破れることもなかった。まあ衝撃を受けてめきれずに内蔵がひどい事になってたけど。そして問題の虎だ。こいつは森で会ったなかでもダントツで強かった。正直なとこ魔法を習得し切れていない俺ではかなりの苦戦を強いられ、森で唯一フィリーの助力を借りて倒して獲物だ。その見た目は虎を二回りぐらいでかくして、その頭からは1メートルほどの曲刀が生えていると言った魔獣だ。しかも俺命名のサーベルタイガーは、見事にその大木をバターのように切り裂く曲刀をつかいこなして攻撃してくる、厄介極まりないやつだった。爪、噛み付き、曲刀の三段攻撃まじめんどくさい。

 え? サーベルタイガーは安易すぎるって? いや曲刀を使う虎とかそれ以外ありえないだろ、ネーミングセンスの問題じゃなく見たらそう思うって。

 剥ぎとったその曲刀は森での私生活に大きな実りと、幅を俺にもたらしてくれた。おもに工作的な意味で。

 

「問題が山積みになっていくのが見えてくる」


 そうフィリーにこぼしながら街に入り、一日を掛けて街を練り歩き物価を調査して、たぶん問題ないと踏んでいた狼の皮を売払い宿を確保。ちなみに狼の皮も予想よりは大分高かった。そして改めて荷物をとりに戻って現在にいたるのである。

 調査の結果俺の心配は杞憂に終わ―――らなかった。狼と薬草の類は大丈夫そうだが、その他は軒並みやばかった。猿と熊はそれなりに流通しているが、個人でまとめて売りに来るやつなどほぼいない。商団が他の街で買い集めて売りに来るのが普通だった。そして懸念どおり虎はやばかった。素材どころか倒しただけでもかなりの懸賞金が得られるほど凶悪な奴だったようで、その懸賞金2万ディクス、曲刀にいたっては5万ディクス(1ディクス約100円)という合わせて700万円相当の破格さである。あぶないあぶない、この腰に下げた刃を売ったらたちまち有名人の仲間入りしてまうとこだったぜ。確かにあいつは強かったな、フィリーと協力してなけりゃ俺もやばかったし。


「さて忍び込みますか」


 現在みなさんは夢の中へと旅立った丑三つ時の真夜中だ。なぜ忍び込む必要があるのかと言われれば、この街は城壁に囲まれていて、南北東西にそれぞれ大きな門が設置されている。街の人以外の人は入国審査ならぬ入街検査が行われるのだ。つまり荷物もチェックされてしまうわけで、そうすると荷の内容がバレる可能性があるのだ。今思えば腰に下げた虎の曲刀は、一回目の審査でよくバレなかったものだ。まあ元からのレアさに加えおれはそれに柄と鞘を作って加工しているのでたぶんわからなかったのであろう。ただおれの服装を見て奇異の目を向けていたのはどうかと思う。

 森の頃の原人ルックは勿論卒業している。現在はGパンになぜか袖が無くなってしまったシャツと、その上に原人時代にお世話になった鹿の毛皮で作ったベストを着ている。一応この世界で違和感を感じられないように着こなしたと思ったんだが。

 もしかしたらまた俺の常識が合っていない部分があるのかも知れないし、いつか調べておこう。


「ではフィリー頼んだよ」


「ぬっふっふ。首都に忍びこむとかなかなかスリルがあっていいね」


 敬語をやめるようになってから気付いたがフィリーはかなり遊び心が強い、といか満載だ。イタズラやら遊戯といった物に目がない。さすがあの神にしてこの妖精ありだな、と凄く納得できるものがあった。


「見つからないようにね」


「大丈夫よ。私くらいの妖精だと許可した相手か、よっぽど特別な力を持った人以外には私の姿は見えないもの」


 ほほう実に妖精っぽいですな、てか実際妖精なんだけどね。


「じゃあ、風よ吹き荒れよ! 『ワールウインド』」


 呪文を唱えてフィリーは街壁の方へと飛んでいく。ちなみに現在フィリーさんの呪文により一部街壁が暴風圏に陥っており大変危険です。一般市民の皆様はおとなしくお家に帰りましょう。


「よし、行きますか『ライトプラス』」


 俺が使った魔法は光を強化するものだ。簡単に言えば元からある光を更に明るくするという至極単純なものだ。この世界の魔法は、こうこう、こういう効果がこういうふうに出る。なんていうふうに決められているのだが、対象とか出力とか、例えば飛ばす時はどれぐらいの速度でどこに飛ばすか、などの効果以外の部分はわりと自由だ。どこまで自由なのかフィリーに聞いた事もあるのだが「さあ?」なんて可愛く首を傾げた仕草で返されて、壮絶に悶絶せられた。

 うむ、話がそれたね。ええっとフィリーの可愛さについてだっけ? よろしい三日三晩語り明かしてくれる。え? 違う? チッ。

 とにかく俺は初級の魔法しかまだ使えなかったので、それらを色んな方法で工夫を凝らして使っている。そこから生まれた俺式ライトプラス。プラスシリーズは元からある火とか水なんかを多くしたり出力を上げたりするものだ。ライトプラスの場合マッチの光を松明替わりにしたりするために使われる魔法なのだが、俺は俺の目に入る光を少しだけ強化するように使った。


「うむバッチシ見えるな」


 目っていうのは光を取り込むことで風景を見てるわけだ。暗い所でなにも見えなくなるのはその光の量が少なくなっているわけで、しかし基本的に全く光がないなんて場面はそうはない。だからほんの少しだけ目に入る光を増やしてやれば真夜中だって結構視界は良好だ。

 準備万端整えて俺は南西の街壁を登りロッククライミングよろしく登りだした。事前調査の結果ここがわりと手薄な警備でこの時間が最も忍び込み易いと予測した。まあほとんど勘ですけど。

 そして作戦はまず強めの風を起こすことで、俺の足音とか背中の荷物の音を悟られないようにする。そして俺の進路に合わせてフィリーが、兵隊の持つランプの灯をそっとけしていくというものだった。文化的にも進んでおらず明かりが街を一日中覆っているわけでない。正門とお城は明るかったが、たぶん高いんだろうな維持費とか色々と。ましてや今夜は三日月。例え地球と違ってその数、三倍もある月ではあるがそこまで大きくはないので、明るさは大したことがない。そんな中で手元の灯りを消されては足元すら確認するのは困難だろう。

 さすがに隠密行動なんてやったことなかったので、ある種の力技で押し通ることにしたのだ。……気配を察知するなんてスキルを一般兵が持ってないでしょうね? ないよね? 大丈夫だよね?

 すでに二人ほどやり過ごして現在壁のほぼ上段。そんなとこまで来て若干の不安を抱いていた。


「我ながら大胆なんだか臆病なんだかな~」


 この間抜けめ! と自分を(なぶ)りつつ上辺に登り着く。左右確認をすると、少し距離のある場所で兵士が急にランプが消えてしまって、あわてて火種を探している様が見える。どうやら上手く行きそうだ。


「あーあー、えーっと南西ブロックのリ-1区画になにか入ったぞ周辺の兵は至急確認求む」


 突然周辺に誰からかの声が響き渡る。学校の校内放送を思い出すそれではあったが、それが俺の事をさしているのはすぐに察しがついた。


「探知魔法とかあったりするのかな」


 さすがに首都の街壁に容易く侵入できるというのは公算が甘かったか。よし、うむ、仕方ない。必死に自分を鼓舞する。

 え? 何をするのかだって? 決まってるじゃん逃げるんだよ! なんで気合が居るかというとだな。


「ソーーーーーーーーイ」


 高さ30メートルの壁から飛び降りなきゃいけなかったからだよ!


「ぬおおおおおおおお」


 身体は強化されてるが現在巨大な荷物を背負い中。下手すりゃ両足骨折の見るも無残なことになること受け合い、良くても背中の物はバラバラチリジリなのは目に見えてるぜ。だからおれは奥の手、プランBを使うぜ! 


「『ウインドボール』! 」


 下級魔法のボールシリーズの風版。それは各種の火水風土光闇の属性の球、サッカーボール大のそれを相手にぶつける攻撃魔法だ。いや光属性のライトボールは単なる光の球だから攻撃はできないか……まあいいや。それをなぜ今出したかと申しますと、これも俺式に工夫もとい改造して使うわけですよ。

 下方向にそれを出現させ、俺はそれを四肢を使ってガッチリキャッチした。つまりウインドボールはぶつかった相手を吹き飛ばす風の塊。その力で俺の落下速度を相殺、吹き飛ばされる力は俺の四肢で抑えこみ、そんでもっておれが球を地面まで移動させれば万事解決だ! 


「ぐおおお」


 はっきり言って、実際に掴んで降りるなんて使い方をやってみるのはコレが初めてだった。ウインドボールは衝撃で相手を吹っ飛ばす魔法で、その威力を最小限に抑えてはいるつもりなんだけど。凄く痛かった。素肌で接触している部分は、まるで平手打ちを連続で叩きこまれている痛みが襲いかかっていた。

 二、三秒の出来事だったが、奥歯を噛み締めてその激痛をやり過ごし、なんとか着地に成功した。すぐさま俺は近くに予め取っていた宿へと向かい、開けておいた窓から無事に帰還を果たす。


「ハァハァハァハァ、いや~なんとかなるもんだ」


 そう一息付いているところにフィリーがやってくる。なにやら機嫌の悪そうな顔をしているが……もしや俺の身を案じてくれているのか!? 「無茶ばかりして心配したんだからね」的な。


「………………私は今まで風の魔法は、優雅で綺麗なものだと思って生きてきたけど…………キドーの風術は無理やり過ぎてなんだか……汗臭いよ」


 どうやら自分の属性の魔法のイメージを傷付けられたらしための不機嫌さのようだ。確かに力技極まりないなのは、端から見てもそうだろうし、何よりダサさは自分でもどうかと思えるレベルだっな…………あれ? 目から汗が溢れてクルヨ。

 ちなみにプランBの意味は何も無い、行き当たりばったりでどうにかする、だ。

頭の良さとしてはいいところと悪いところの差が酷い木堂君でした。

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