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第二話 仕様なの? ワザとなの?

 はいどうも~神々に弄ばれた木堂 正志だよー。


「はあ~」


 いやため息の一つも出るっしょ普通。確かに悪くない話で願ったり叶ったりなわけですが、まさかあんな大雑把なままの説明でこの世界に産み落とされるとは思いませんでしたよ。

 もしこの世界にあの神様の像があったら絶対ラクガキしてやる。

 まあ切り替えよう、もし今度話せる機会があったらなにかせびってやるとしてだ。


「どこだよここ……」


 ボッシュート最中に気を失い、次に目を覚ましたのはどこかの森の中。アトレアに無事着いたのはなんとなくわかったよ、だって紫とかなり黄色い太陽が空に2つ見えてますからね。だが地理の知識も世界の常識も知らない状態でこんな深い森の中に居るのは。


「遭難スタートとか難易度高いよ……」


 無闇に歩くのも体力消耗の危険を伴うのでとりあえずそこらにあった岩に腰掛けて思考する。地球ですらアウトドアに行ったことがない俺にとってはまさに大ピンチ。持ちうる知識を使って解決策を導き出す。











 考える像そっくりなポーズで考え出してからだいたい20分くらいしてだろうか、近くにあった茂みが揺れ動く。瞬間に立ち上がり準備していた木の棒で構えをとる。

 剣と魔法の世界なんて単純に説明されたが、俺の知るなかではほぼ確実に魔獣やらモンスターなんて呼ばれる人を襲う化物がもれなくセットでついてくるのがごくあたり前だ。たとえそうでなくても狼などの肉食動物がいる可能性は高い。その危険性を一番先に思い立ち、先の尖ったそれなりに太さのある木の棒と幾つかの大きな石をポケットに忍び込ませてある。元から体を鍛えていたから大型犬程度ならなんとかなる……はず。だがなるべくなら今は出会いたくは―――。


「グルルルルル」


 なかった。てかデケェ! なんか頭が妙にでかいが熊っぽいそれは茂みを出た時には既に俺のほうに視線を向けていた。俺の美味しそうな匂いがしたから来たんですねわかります。

 こいつを体長2メートルの熊と同じ戦闘力と仮定して一瞬でシミレーションしてみるが、ダメ。まったく勝てる要素が見当たらない。


「難易度高いどころか無理ゲーじゃないか」


 脳裏には俺が四神に囲まれていじめられている図が浮かびがるが、信憑性が妙に高い可能性があるものの直ぐに否定しておく。あの神様をディスッた回数ごとに不運度が上がっている気がする。ならもしかしてあの神様達を崇めれば幸運度が上がるのでは……とおもったがあの神様を崇める部分がないので諦める。


「グオーーーーー!!!」


 組み易しとみたのか熊公がこちらに迫ってくる。獣の見た目ほどは早くないなこいつと思いつつ右側に大きく回避。命のやり取りで緊張したのか踏み込みすぎて若干よろけるものの回避は成功。熊に目をやるとおれに向けて放った右爪が座っていた岩を砕いていた。


「熊ってどころじゃねぇ!」


 それを見てすぐさま木の入り組んでいる方の森へと逃げこむ。こいつはパワーのわりには早くは見えない。ならば足の速さと小回りさを活用して逃げきるまでよ。


「あばよ、とっつぁ~ん」


 人生で一度は言ってみたい俺語録、第4位の台詞を置き土産にスタコラサッサですよ。5分ほど走った後であることを思い出す。無闇矢鱈に走るのがまずいからあそこで留まって考え事をしていたという事を。

 ということで現在崖にぶつかり、しかも二匹増えた熊さんが前と左右を見事なチームワークで塞いでおられます。


「困難どころか詰んでるじゃねえか……」


 もちろん愚痴が言えているあたりはまだ若干の余裕がある。この熊の攻撃は俺からすれば遅く、避けるだけなら簡単だったからだ。まあ一匹だけならの話だけど。そこでおそらく同時にかかってくるであろう熊の右手側の顔面に石礫を投擲、ひるんだところでその脇から再び逃走する算段だ。え? 倒さないのかだって無茶言うなよ人間が素手で熊を殺せるか! 手に持った木の武器はってか? そんなもんはさっき走りだした時に真っ先にぶん投げたわ!


「グワッ!!!」


 予想通り三匹同時に掛かってくる動作を見て右側に全力で石を投げつける。よしっいいコース直撃間違い無し――――――。

 カアァァァァァンと厚めのガラスが砕けたような音と共に右の熊さんの頭が跡形もなく弾け飛ぶ。


「は、はいぃぃぃ!?」


 投げつけたと同時に走りだすつもりではあったのだが、あまりにもショッキングな映像に足を止めてしまう。


「グワァァァァ!!」


 俺と同じように真ん中の熊も驚きのあまり動きを止めていたが、左側の熊はそれに気付いてないのか俺に襲いかかる。隙だらけではあったが熊の攻撃は所詮のろくて単純、軽々と避けてみせる。

 投擲のとんでもない結果と、さっきから感じる壮大な違和感を照らし合わせて、その答えを得るために避けたあと熊の横に回りこみ、速さを重視して軽く(・・)突きを打つ放つ。触れたと同時に即退避。だがその軽いはずの突きで俺の体重の数倍はあろうという熊の体が、僅かに揺れた。


「うっわぁマジですかい」


「グウウゥ」


 苦悶の表情を浮かべてこちらを睨む熊。その隣に気を取り戻した中央の熊が並んでこちらに身構える。あっちも驚いた様子だが確実に俺の方がおどろいてるから! だってさっき熊を揺らした正拳は俺の全力からみれば2割程の突きだ。さっきから熊が遅く見えることと、走ってきたのにまるで切れない息。そしてさっきの石投げと突きから考えるに……。


「いや答え合わせはこいつらで試すか」


 ニヤリと笑って見せると足元にあった拳大の石を持ち上げる。そして全力で振りかぶって熊の片割れに投げつける。受け止めようと腕を突き出すがそれごと熊は数メートルふっ飛ばされていった。


「はい大正解でしたー」


 ふっとぶ熊に振り返ってしまった、もう一匹の熊の足元に駆け寄り、その胴体に正拳三段突きをお見舞いする。殴られた場所が風呂桶ほど凹んで血反吐を吐きながら熊は転倒していった。


「これは……神さんの言ってた特典の一つか?」


 非現実的である身体能力であるにも関わらず今の今まで違和感なく受け入れられていた事を考えるに、これが神の仕業と考えたほうが辻褄が合う。正直度肝を抜かれたが、まあそのおかげで助かったんだ感謝はしとこうかな。なーんて思いながらニヤついて、手を開いたり閉じたりして異界で不思議な魔法の世界。元の世界の常識では有り得ない事が平気で起こる世界なんだという実感を確かめていた。

 がそれが油断大敵雨あられ、って古いか。


「ウキャーーーー」


 熊の血の匂いに釣られてか崖の上から大きな猿型の怪物が襲いかかってきた。気づくのが遅すぎてその爪が体にあたりそうになる、正直こんな森では軽傷だって下手をすれば命取りだ。


「ヤバッ」


 しかし猿はその爪が俺の服に当たった所で細切れに切り裂かれた。……おうショッキング映像の次はスプラッター映像かよ……今空腹でよかった。胃酸だけ逆流しそうになったがしっかり飲みました。


「油断大敵雨あられ、遅ればせながら風の妖精フィリー主の命によりここに馳せ参じました」


 こっちも古い。血の舞い散る森の中、羽根の生えた手乗り少女が満面の笑みでおれにお辞儀をしていた。スプラッター+美少女……これはまさかヤンデレフラグか!? やだー。


八白万の神々の中にもふざけた神様っていらっしゃるんだろうか?

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