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第四話 こんにちわ御仕事

 大体家を改築し出して一ヶ月経った頃から、問題には気が付いてたんだ。どれぐらいで俺の貯蓄が底をつくのかどうかは。底と言ってももちろん無一文に成るわけではない。食い物とかを買ったりする生活費はもちろん残しているのだが、このままではこれ以上家の改築資材が買えなさそうにないのだ。

 現在は三十万ディクスあった俺の残高は五万ディクスを切るところまで減少してしまった。日本円にして五百万円もあるのならまだまだ余裕があるじゃないかと御思いだろうが、この場所では、もしもなにかあっても俺たちは全員市民権を持っていないので、支援も助けも国からは期待できない。そう考えればこれだけあってもむしろ不安なぐらいだ。

 とても有意義に使うことが出来たので微塵も後悔はしていないのだが、いかんせんおれは三十五人家族の家長で、唯一の稼ぎ頭だ。子供たちには今までやっていたスリや盗難の類は一切やめてもらっている。働きに出れそうな人もいるにはいるが、そうなると子供たちの面倒を見る人がいなくなる。俺でさえ外出は最小限に抑えて、子守を手伝うほどだからとてもじゃないが無理だ。幼稚園のような物があれば大変助かるのだが、どうやらそのあたりは近所同士の協力でなんとかしているようで、このスラム街では期待はもてそうにない。あったとしても、たぶんこっちは頼られる側になってしまうだろう。

 なにより今外に働きに出ること自体も不安が残る。どうせならその労働環境も俺が作り出してみるのもいいと思ってはいるし、案も有るっちゃいくつかある。だがそれにもやっぱり大量の金がいる。

 まだまだ色んな問題を抱える家族だが、やっぱり何をするにもまず金だ。

 だが商売の知識なんて大して持ち合わせて居ない俺が頭をひねった所で「近所で出来て、早くて大きな金に成る」なんて都合の良い金稼ぎの方法なんて思いつくわけがない。







「というわけなんだがいい仕事ない?」


「何がどいうわけなのか全然かわからん」


 まったく考えつかないから誰かに相談してみた。相談相手は最近特に仲良くなった、武具屋の主人であるガナド爺さん。買い物に出た時は毎回寄ってだべってます。


「いやだから、街で出来て早くて稼げる仕事はないかって聞いてるんだけど」


 これに『簡単な』って付けば完全にダメ人間です。


「あのなぁそんな都合の良い仕事がそうそう転がっとるはずないじゃろ」


「ですよね~」


「街の外でって条件ならそれなりにはあるんじゃがな。希少な素材の確保、名前付きの魔獣の討伐、盗賊団なんかの賞金首の捕獲や、危険地の調査とかな」


 それは最初のほうに考え付いたけど、街を離れる必要性がある上に日にちがかかりそうなので却下。主に子供たちの心配の為に。


「今言ったのは全部冒険者ギルド発注の依頼だし冒険者ギルドに顔出してみたらどうだ?」


 冒険してお金を稼ぐ? いやいや完全にそれじゃ道楽だな。冒険者ギルドはいわば危険性のある依頼を請負い、金銭を得る荒くれを紹介し、まとめ上げる組織だ。傷を負うだけでは済まずに、命がけの物も多々依頼の中にはあるが、危険が増せば増すほどその報酬金額は馬鹿高い。頑張れば一週間で一万ディクスを稼ぐのも夢じゃないので今の俺にはうってつけなんだけど……。

 あとギルドは調べたところによると俺が登録している生産ギルド、調理ギルド、医療ギルド、錬金術ギルドに魔法ギルド、そんでもって冒険者ギルドの六つだ。なんでも噂では調査ギルドという謎のギルドが存在するなんて噂もあったが実態を掴めることはできていないな。ありそうなギルドだけどね、日本でも情報屋は実在したらしいし。

 なんでもギルドを複数重複して登録することは可能なんだとか。おすすめはできないなんて言われたが可能なこと自体がちょっと意外。あまりやる人はいないらしく、いてもどこか自分の実用的部分がかぶるように二つだけ登録するのが普通なんだとか。

 なぜ登録したらお得なことがあるギルドになぜ重複登録したがらないかというと、生産ギルドの査定のようなものはどのギルドにも存在し、それをクリアーしていくのは大変な労力のようだ。下の方のランクの査定なら簡単そうだが、ギルドを有用に使うためには最低でも五段階中三まではあげる必要があり、そこからはあがるのも維持するのも格段に難しいようだ。 しかも途中でランクダウンどころか、除名なんて不名誉を被るとあっという間に悪い噂は広がってしまう。そうなりゃ他の街にでも移動しなけりゃ商売上がったりなのだ。


「ほんとは生産ギルドの仕事して稼ぎたいけど、まだ仕事場すらないしね~。仕方ないちょっと覗いてきますか」


 そうだトウカ連れていこう! 最近煮詰まり気味だし久しぶりにデートもいいかもしんないな。グフフ。 


「それならもう一ついい稼ぎになるものがありますよ」


 午後からの予定を決めた俺の背後から爺さんの娘さんであるマリナおばさんが話しに入ってくる。


「いいのかマリナ」


「フフッ。キドーさんは信頼するには充分な程に、お人良しみたいですから」


 何の話だろうか。


「私は武器屋の店員ですけど、調査ギルドの構成員でもあるんですよ」


 な、謎のギルドキターーーーーーー!! 確かに武器屋の一店員さんにしては、妖艶なオーラ漂わしてましたけども。


「そこで私に情報を売ってみませんか? キドーさんはちょっと変わった視点をお持ちのようですからいい取引ができると思いますの」


「……」


 いや商才すらない俺に情報の価値とかわからんから。情報収集に余念はないが、あれは基本俺の為と目的のものにしてるだけで、他の使い道使えるとは思わないしな。


「なんでもキドー様は人から情報を聞き出すがお得意とか……」


 ヒィ! 俺の情報収集活動が筒抜けだー!! 壁に耳あり障子に目あり、いやそこは同じ穴のムジナか? どっちにしても専門家にはかないません。


「なにかお金になりそうな、今求めてる情報ってありますか?」


 ダメもとで聞くだけ聞くか。もしかしたら日々の活動の中で小耳に挟むぐらいしてるかもしれないし。


「そうですね……。今ですとジーニー・ボライアズ様のこれからの動向。汚職役人情報、正体不明の窃盗団。あとは一月前に起こった旧ナーブ神殿で起こった惨状に関しての情報でしょうか」


 おっと二つも引っかかりましたよ。ジーニーさんとはあれから数回お茶に招かれている。なんだか友人のように接してくれているジーニーさんとの会話は、すごく為になり楽しいものだったし、一緒に連れてったトウカやリッキーがガッチガチに固まっていたのは、とても面白かった。世間話をしたりしてるので、もしかしたらその会話を売れるかも知れない。マッ個人的にこれはパスだな。恩人を売るとかマジ勘弁だ。あと一つは……。


「ゲイロス一味が全員逮捕されたのって、街で有名話じゃないですか」


 あれだけ悪評を振りまいていた一味があっさり全員御用となったあの事件は、街中がその噂でしばらく持ちきりだったはず。


「はい、そうなんですが……。ここまで話題になったこの一年以内じゃ屈指の事件なのに、詳細な情報があまり出て来ないのよ。なぜ今まで放置していた一味が突然逮捕されたのか? 現行犯逮捕との知らせはありますが罪状不明。近辺に住んでいた人の話では捕まった日の夜中に、すごい物音が神殿内から鳴り続けていたという話もあります。しかし警備兵や騎士団が踏み込む前の話だとのことですし……。単純なはずの事件なのにとても謎が多いんですよ。つまりこれは隠したい事があるんじゃないか、という推測が成り立っているんですね」


 なーるほど。たしかあの連中に絡んでいた役人はいたはずだし、現場の惨状はとてもじゃないが説明しても信じられない。それにおそらくあの連中を締め上げれば、ゴロゴロ余罪が浮かんだはずだ。そうなったら今まで放置していた警備隊や国に批判が向かう。だから臭いものには蓋をしたか……政治的判断ってのはどこの国でも変わらないな~。


「それについてなら一個だけ知ってる事がありますよ」


「えっ!? どっどれについて!?」


 なぜにびっくりした。


「ゲイロス一味が逮捕された罪状ですよ。あれは確か誘拐罪です」


「……証拠は出せる?」


「実際に行方不明なっていて、その日次の日に見つかった人が複数いると思います。あとは直接そっちに聞けば分かるかと」


「………………」


 やばかったか?


「すごいわ、期待していたのは事実だけどいきなりこんな大物を出してくるなんて……」


 よかった感心してくれてただけだったようだ。セーフ。


「報酬は裏付けが済んでからになるから、受け渡しはこの店の奥で行いましょう」


「いくらぐらいになりそうですか?」


 なんだが業突く張りな話だけど、今は切実に一ディクスでも多く金が欲しい。


「そうね……低くても一万、高ければ四万にも届くんじゃないかしら?」


「高っ!? 噂話を確定させてだけなのになんでそんなに高額に!?」


「ふふ情報っていうのは使う人によってはすごいお金に変わるのよ」


 あっそういえばジーニーさんとこで俺も変えたな大金に。あれは俺にとって完全に運要素が百パーセントだったけど。


「それとキドー君、情報ギルドに登録する気ないかしら?」


「はい?」







 本当にこの世界は俺をどれだけ驚かせれば気が済むんだよ。知り合いが実は謎のギルド構成員でしたってだけでもかなりの衝撃だったのに、更にその場でスカウトしてくるとかとんでもないよ。……受けたけど。

 なんでも情報ギルドは査定制度がないらしく、別に仕事に励む必要がないらしい。気が向いた時に売り込みにきてくれるだけでいいそうだ。そんな制度でダイジョブか? とマリナおばさんに聞いたところ。


「いいのよ、この道は信頼こそ最も必要なものだからね」


 だそうだ。よくわからん。

 さて現在、一応の稼ぎは出したと思うが、これからのことも見据えて冒険者ギルドへの訪問は実行に移した。もちろんトウカと手を繋いでである。ヌフフグフフムフフ、何度握ってもトウカの手は俺を満たしてくれるな~。

 一月もあったんだからなにか進展したと思った? 残念私にそんな度胸はない! 今だに手を握るだけで精一杯であります! これより先は、即昏倒の可能性のある危険ゾーンです! もっと偵察をして現状把握する必要があるであります!!!

 単にすごいヘタレとも言うけど。


「あれが冒険者ギルドですよ」


 道案内を任せていたトウカが指をさす先に、大きな建物が見えてきた。黒鉄で一面を覆った生産ギルドと対称的に冒険者ギルドは支柱を除けばほぼ木製だ。カーペットや壁紙すら貼っていない木目調。なんというか荒くれ集う場所として、見てくれはらしいっちゃらしいね。それにしても―――


「でかいなぁ」


 そうでかいのだ。今までこの街でみた建築物の中では城に継いで二番目にでかい。地球でいうなら学校の敷地を二つ繋いで全部が建物だと言ったら分かりやすいと思う。


「なんでも色んな店や酒場、あと登録者専門でお貸しする安い宿屋も経営しているらしいですよ」


「なるほど冒険者たちからすれば、ここにいれば全部揃えていくことが出来る施設なわけだ」


 すごく至れり尽くせりな場所だな、それでもちょっとデカすぎると思うけど。ドアさえないあけっぴろげな正面の入り口から中へと入場、目の前には受付っぽいカウンター、右側は武器屋などの店が並び左は酒屋のようだ。昼間だけどかなりの賑わいが見て取れる。席の数が数えられないくらいとんでもない多さから想像しても、夜になったらどれだけの人が集まるかわかったものじゃない。

 まあこの街すっごく人が多いしデカイもんね。あまりに広くて、自分では把握することすらできていないのだが、一度総人口がどれぐらいかガナド爺さんに聞いてみたが。


「五百万はいるんじゃねえか?」


 だってさ。めちゃめちゃ多いしそれが全部入りきる街ってどんだけだよ。しかもその街を外壁で覆ってるんだぜ? それだけでもこの国の力が高いことがよく分かる話だ。

 さて今日は今後の参考にするために見学しにきただけだし、どんな依頼があるのかだけみようかな。その後はトウカと店でもブラブラしますか。


「キドーさん。冒険者ギルドにお入りになるんですか?」


「いや、今のとこはその予定はないな」


「せっかくあれだけお強いのに……」


「ハハハ、アレはあんまり人前では見せたくないからね」


「フフ、そうでしたね」


 恋人の関係のはずだけど、お互い緊張してか今だに敬語っぽい会話になってしまう。

 トオウカ談笑しながら依頼の貼られた掲示板へと向かう。するとなにやら受付カウンター前で言い合いになっているグループが目についた。


「チームで仕事したんだから報酬は均等に山分けだろ!?」


「ハッてめえ等みたいなガキのひよっこなんて二人で一人分で充分だろうが! わざわざ俺が駆け出しんみ付き合ってやったんだそれで十分だろう」


 新人とロートルが、どうやら成功報酬の分け前について揉めているようだった。新人側は俺より年下に見える男と女のコンビ、ロートルは剣士っぽいのが二人、槍を背負ったのが一人の構成だ。ロートルといっても全く強そうではないが。


「そんなバカな話があるか! 薬草の採取にだってミミルの知識に頼ってばっかだったくせにどこが付き合ってやっただよ! むしろそっちが付いてきてたって言ったほうが正しいじゃないか!」


 おうおう猛々しいね少年。嫌いじゃないよそういうの。


「テッメェ! ほざきやがったな、表に出ろ! ぶちのめしてやる」


 おいおいどう見ても少年は弓使い、それに盾持ちの剣士が決闘を仕掛けるとか有利すぎんだろ。ボコりたいだけだなあのオッサン。


「受けてやるよオッサン!」


「駄目だよぉジョイ――。怪我しちゃう……」


 熱くなりすぎて自分の状況がよくわかっていないご様子です。若いね~。少年の裾を引っ張って制止しようとしている女の子の方が冷静みたいだな。


「あれは、ジョイとミミル?」


「え? あの喧嘩しそうな二人って知り合い?」


「はい私達北西区とは別のスラムの子でちょっとした知り合いだったんですけど冒険者に……」


 ほおストリートチルドレンから冒険者になるとは、見上げたやつだな。


「キドーさん……助けてはあげられないでしょうか?」


 トウカの上目遣いからの頼み事だと!? こうかはばつぐんだ! どっからみても理不尽な決闘だしな、助けるのもやぶさかではない。というかトウカの頼み事を断る気なんて全くないけどね!

リアル求職中の私です

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