宮本先生の素晴らしさについて
大東流と合気道についてはまた次回以降に。
筆者は合気道の歴史や人物に関する話は大好きなのだが、それは表に出て現代武道になった流派なので、武術関連・宗教関連・霊術関連の補足資料も関係者証言もいっぱいあって、その思想や技術や変遷に大いに興味も親近感も持てるし、戦前は一種の秘密武道だった所とか、実はマンガの「空手バカ一代」で描かれた某空手団体の姿に勝るとも劣らない、というか一部勝りすぎてて本気でシャレにならないようなバイオレンスな話があふれてたりとネタ的にも素晴らしかったりするが、その上で基本的には他人事だからである。
大東流はねえ~筆者は一応ある系統の流れの端っこにいるのでなあ~冷静で客観的に書こうとしても、なんちゅーかその、筆が滑りそうで。
もう本当にどうしよう。
ちょっと整理する時間を下さい。
今回は一回クールダウンの巻。
さて、宮本先生の話である。
宮本先生といえばフルネームは宮本武蔵玄信先生に決まっておるのだが、井上雄彦の漫画「バガボンド」などで今も世に知られている。
二刀流という、もうなんだかそれだけで世のキッズ達の心を震わせるものをメインで扱っている流派・二天一流の創始者であらせられる。
年取って号(ペンネームとか芸名みたいなものと思ってくれい)した名前が「二天」で、その二天先生の一流派なので「二天一流」。
「バガボンド」の話は大半がフィクションであるし、筆者が感じている宮本先生の素晴らしさをちっとも伝えていないので、以下、その話はカケラもしない。
その生涯の勝負の話も実はどこからどこまでが本当なのかはっきりしない話が本当に多くて、彼が伝えたという流派も二天一流とか円明流とか武蔵円明流とか、さらに伝える師範の系統で野田派とか山東派とか全く別々になっていて、そのそれぞれが俺んとこが一番ムサシだとか、いやいや俺んとこの方がよりムサシだぜと思っているわけで、そういう現在までに伝承されている型だとか技術についても触れるつもりは無い。
筆者が素晴らしいと思っているのは宮本先生の著作である。
古めかしい文体にまどわされたり、現代の数々の研究書で思想がなんたらとか人生哲学がなんたらとか書かれていて、読まずに色々と先入観ばかり詰め込まれているせいなのかもしれないが、『五輪書』などはあの時代を考えるとやたら具体的に書いてある。
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<大勢と戦うとき>
太刀、脇差の二本をそれぞれ左右に広く、刀の先を横に向けるように大きく構えましょう。
敵が周囲からかかってきても、一方向に敵を追い回すように意識します。
全体を観察して相手の様子を見て、一番先頭になっている敵からやっちゃいます。
左右の刀は交互に斬るのではなく、ハサミのように腕が互い違いに一度で交差するように斬っては戻し、左右に構えているところから最初に振る時は前の敵を、また左右に戻す時は横の敵を斬るようにします。
腕を交差したままの状態では止めないように注意しましょう。
魚の群れを一列に繋いだような状態に持ち込み、こちらから見て敵が重なった状態になったら、すぐに斬り込みましょう。
あまり混んでいる所にむやみやたらに突っ込んでもうまくいきません。
また、相手が出てくるごとにあっちを打ち、こっちを打ち、と待つ体勢にならないように注意。
○ワンポイント
時々練習相手に大人数を用意して、どうやって追い込めばいいか研究してみましょう。
<動揺させましょう>
動揺させるにも色々あります。
1)ハラハラさせる
2)「うわあ無理だ」と思わせる
3)予想を外してドッキリさせる
大人数同士の合戦では、これは重要です。
相手の思っても見ない所を激しく攻めて慌てている間に、有利な状況から先手先手で仕掛けるのが大切です。
1対1の場合も同じです。
ゆったり構えているように見せかけて、いきなり激しく打ちかかり、落ち着く時間を一切与えないようにして勝ってしまうようにするのは大切です。
よく研究しておきましょう。
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他にも「肩で体当たりをぶちかますと効果的」とか「近い間合いでは相手の顔に突きをかましてのけぞらせれば体勢をくずせるゾ!」などの親切なアドバイス満載である。
時間のある方は、一度きちんと読んでみるとなかなか面白いだろう。
ポイントとしては、あまり深読みせずにそのまんま読んでみること。
ちなみに「我、事において後悔せず」という言い切りの文章などで有名な文章の『独行道』、そのタイトルを筆者の友人は超意訳して「ひとりでできるもん」と解釈しやがったことがある。
「恋慕の道思ひよる心なし」を「恋なんて興味ないんだから!」などと意訳されたら武蔵先生も困るだろうが。