武術雑話 1 「お約束」な名称
いろいろ反省したとか、今週は週末に時間が無いとかといった諸事情により軽い話題を。
最近初めて知ったのだが、ランキングというのはポイント数が反映するんですな。
2月になって(自分にとっては)異様にアクセス数があると思ったら、どなたかが10ポイント以上入れてくださって、エッセイのランキングに載っていたせいだったのだと判明。
もっとも増えているのはアクセス数だけで、新規でお気に入りに入れてくれた人は数人のみ。
以後は順調にアクセス数が減っておるので、3月になってジャンルのランキングから消滅した瞬間から、0か1の2進数の世界のようなアクセス数に戻ることでしょう。
あれはは夢じゃ、夢でござる。(by萬屋錦之助)
そんな数少ない登録者の方々にお送りする。
中国武術のちょっとした雑知識を書いていきたい。
何か世の中の役に立つとか、創作のタネになるとか、そういうことはあまりないので軽い気持ちで読んでみて欲しい。
中国で「覇王」といえばそれはすなわち項羽のことである。
司馬遼太郎の『項羽と劉邦』で知っている方とか、横山光輝の漫画版で知っているとか、光栄というメーカーの三国志シミュレーション・ゲームとの関連で漢の歴史知識があるという人は何を今更、と思うかもしれないが、紀元前232年から前202年まで生きた古代中国の人のことである。
漢の高祖(劉邦)と天下を争って敗れた人物なのだが、中国各地につたわる「おはなし」を収集してまとめられたと思える部分がかなりある歴史書『史記』の描写があまりにイカすので、基本的に昔の中国人に人気(?)な人物である。
もとは滅びた国の将軍の子孫だが、腕っ節だけで成り上がって秦の始皇帝を打ち倒すところまでいった事とか、性格が強烈で苛烈だったとか、最期近くに虞美人とかいう愛妾と愁嘆場を演じたシーンが記録に残ってたりとか、そういう人物である。
一種の「武侠」であるので、中国のそのスジっぽい人に人気である。
日本人は「○○小覇王」といった中国的表現に、ちょっと凄い奴程度の認識しか持たないかもしれないが、項羽のミニチュア版だと考えると、ヤクザにしても一地方を荒らしまわる、かなり手をつけられないレベルの奴である。
だから、中国武術で「覇王挙鼎」などという名前のものがあるとすると、その覇王はどっかその辺の覇王ではなく項羽のことであり、項羽がばかでかい鍋上の祭器である鼎を軽々と持ち上げた、という故事からつけられた名前である。
そんなわけで、日本のゲームや漫画や小説なんかの創作物で、登場人物が「○○覇王拳」とか「覇王○○剣」とかいうのは「そりゃどこの覇王だ」というかなり奇妙な感覚のセンスなのである。
似たようなもので、「大聖」がつくと斉天大聖、すなわち『西遊記』の孫悟空の事を指す。
「大聖○○拳」という武術があったら、まるで『北斗の拳』の南斗六聖拳の一種みたいだが、世の中には「大聖劈掛拳」という武術があったりする。
劈掛拳というと両腕を伸展させて豪快に振り回す技術の多い、やっている人の腕が異様に長く見える河北省や山東省あたりの武術である。
しかし大聖劈掛は少し離れた陝西省の武術で、動きが露骨に猿っぽい。
嵩山少林寺の武術の流れを汲んでと主張する「二郎拳」というものもある。
某ラーメン屋みたいだが、これは『西遊記』や『封神演義』に出てくる二郎真君からとった、由緒正しい「二郎」なんである。
八極拳か何かで「二郎担山」という技があったような気がするが、二郎真君はかなり人気な武神様なので、けっこう色々な所で名前に出てくる。
今週末はブン投げたりブン投げられたり、打ったり打たれたりする予定なので、一回分一時間もかからず書いた短い雑話をいくつか予約投稿しておきます。
ここ最近の個人の活動報告に、一回分ほどのネタでもねえなと見送ったこういうタイプの短い雑話を何度か書いてたりするので、おヒマなら一読してみて下さいな。