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武術とお金の問題(教わる側編)

 タイトル直球。

 ゼニや、ゼニが重要なんや!


 さてみんな、先生におべんちゃらを言って流派の後継者を狙ってるいけすかない金持ちのおっさんがいて、古くから師事して実力も一番の高弟が後継者から外れた、という話を聞いたことがあるかな?


 一人の指導者が立ち上げたそれなりの大きさの団体で、後継者指名があってお弟子さんが継いだのに、その指導者の死後、それまで一切関わっていなかった家族がいきなり団体名の使用権についてゴネはじめ、別のお弟子さんが新代表に名乗りを上げる、そんな話を聞いたことが、あるかなー?


 そういったもろもろの話も後半入ってくる、重要な金の話。

 「武は実力」などというが、そんな霞を食っている人みたいなことを言ってお金をあなどると色々と見誤るから気をつけよう。

 むしろ武術を長く続ける、そしてなおかつ人より抜きん出た実力を得たければ、お金があるとか安定した収入があるとか、お金をどこからか引っ張ってくるとか、そういう才能がないと無理だよという話をしてみよう。


 前半は、教わる方のゼニが必要なんや、というお話。

 さて、そもそも武術とか武道というのは色々きちんと長くやっていこうとするとそれなりにお金がかかるものである。


 学校の部活のような補助金も出る、もともと色々な便宜があるものは今は除外していくが、子供対象の武道でも月々の月謝というものがある。

 子供向けのスポーツ少年団ぐらいですでに月5000円ぐらいはかかるわけだが、子供に「強くなって欲しい」「礼儀を身につけて欲しい」と漠然と考えて入会させたお母さんなんかは、最初はまあそんなものかしらと考える。

 だが、道着だ防具だというとそれぞれにお金がかかる。

 お子さんだと成長によって道着も防具も新しくしていかなくちゃならない。

 大会があれば大会参加費が発生する。

 このごろは少子化だの、順位付けは子供を傷つけるだのという話があり、すごいところは体重別・年齢別などで細かく参加クラス分けをした上に、6位ぐらいまでは賞状なり記念盾なりが出るようにして、参加者が何かしら入賞できるようにするため、その記念品用のお金が大会参加費に入ってくる。(さすがにこれは極端な例だけど)

 昇級・昇段審査だってタダじゃない。

 帯の色が変われば新調しなくっちゃ。

(これについては、級位者の場合は初心のモチベーション上げのため、細かくはげみになる目標を手の届くところに用意しておかないと挫折しやすい、というきちんとした理由も書いておかないとフェアじゃないかもしれないが)

 そういった団体がらみで子供の合宿やキャンプがある、となったらお金どころか人手として召集がかかったりもします。


 時々大学生か高校生ぐらいの人間が、ネット上の掲示板なんかで「強くなりたい」と希望を述べた後に「安いところを教えてください」と抜かしやがられているのを拝見するが、今日び子供の練習ですら色々かかるのに、ちょっとバイトでもすれば出費が可能な金額にひるんでいるのを見るとこれはきっと行かんな、行っても続かんな、と思ったりするわけである。

 情熱や熱意がある、などと口走っているのだが、武道武術以外の自分が遊ぶ時間やゲームや漫画に費やす金を犠牲にしたくない、という前提が思いっきりある時点でかなり浅い情熱だということは自覚していただきたい。

 いや、それが悪いといっているのではない。

 単に客観的に見てどう考えても武術や武道に対する優先順位は低い、「気の迷い」「若気の至り」レベルなのでよしたほうがいいいよ、という事なのだ。

 社会人になったら今度は経済的な余裕が発生するかわりに時間の捻出に苦労するようになって、自然と縁が切れてしまう人が大量発生するのだが、学生時代の暇な時間がかなりある時点ですら引っかかっていると社会人になった時に当然のように脱落してしまう。

 もっとも社会人になって改めて新しい距離感で武道武術に踏み出す人もいるわけで、否定的な話ばかりではない。

 学生時代は興味があっても全く踏み出せず、社会人になってようやく始められたという人だってある。

 ただまあ、そんな人は多くない。

 そういう話である。



 とある大きな空手団体が社会人の入会金と月謝をそれぞれ1万円やそれ以上取るようになってから、間口の広い加盟道場や教室の多い団体でも、月謝をそれぐらい払わなければならない所が増えた。

 すごく努力して低い金額でやってらっしゃる所もあるが、自前の立派な施設を持っている所はそれなりに必要があるし、武術武道の指導専業でそれなりの人数を食わせていこうということになったらやっぱり先立つものが必要であって、月謝が高いから悪いという話では決してない。

 例えば某大手の中国武術団体でも武術クラスであれば1万円以上の月謝となり、拝師しているような上級者はいつでも施設が利用できて師範クラスの指導を仰ぐことができる代わりに数万円の月謝がいる、という話を所属されている方から聞く。



 「本物」を求めて、中国や海外に学びに行く人もいる。

 もはや中国にしか真の功夫は存在しない、という時代ではないが、それでも未知のもの、自分が求めるものを追求して海を渡る人はいる。

 留学生として入り、その地で老師を探す、というのは難しくない。

 そこからは直接人と人の繋がりであり、武術を学ぶのには確かに熱意が必要だ、といっても良いだろう。

 だが留学生期間が終わり、日本で仕事をしつつ師と弟子の関係を続けるのは大変だ。

 以後の渡航にもお金はかかる。

 向こうにいる間の生活費もある。

 当然、「おみやげ」は用意しなければならない。

 素朴な人もいるが、商売っ気の強い人もいて、この辺はまあ日本人とも変わらない。

 ただし、田舎に行くとマジで日本人は基本的に悪人だと思っているので、メジャーな門派で外国人が習いに来ることがあるような所ならともかく、そうでないなら心許してもらうまでが大変。

(日本人が中国人を刀でぶった切ってる悪鬼みたいな銅像が入り口の門のそばに立っている、そんな小学校に通って育つということを想像してみて欲しい)


 各地の武術学校に行くという手段もあるが、よほどの熱意(お金という目に見える熱意を含む)か才能を見込まれ、そこで教えている指導者やその人の老師に個人的な繋がりを持つ、という手段もある。

 中国的な時間・人間感覚に慣れるとなかなか快適ではあるらしいが。


 武器に手を出すと本当に大変。

 もっともどんなスポーツだって道具にこだわり出すとお金がかかるわけだから当然なのだが、肉体ひとつでなんとかなると思っていたら色々出費で、あれ・・・?ということになったりする。

 模造刀だとか木刀だとか棒だとか棍だとかヌンチャクだとかなら市販のものがいくらでもあるが、マイナーな特殊武器になると頑張って自作するとか、図面持ち込んだら作ってくれるという工場に注文するとか、色々手間もお金もかかります。

 競技用の規格のあるものならともかく、その流派門派の特殊武器になるとサイズは応相談ってやつである。

 海外のサイトで通販という手はあるが、平気で鉄板のへりを研いで刃にしました、みたいなものを送りつけてきやがるので、試しに軽めの注文をいくつかやっておくのが無難である。

 アジアのネット通販を日本のネット通販と同じと考えてはいけない。

 といっても、今はだいぶマシになっているから大丈夫かもしれないが……。

(むかしは交渉中に平気で現地の業者が雲隠れしたりとか、何度もまっとうな対応があったので信用していたら突然連絡がとれなくなったとか、何年も音信不通だと思っていたら商売復活したのでまた注文をよこせとか)



 そんなわけで、みんな入会金と月謝と初期費用で武術や武道をやろうというのは別に悪くないが、


 そしてなおかつ強くなりたい


というムシのいい願いを叶えるためには、お金はそれなりにあった方がいいよ!

 日本のどこかで何かの武術を教えている人の所に、何かお話を聞きたいなあ、ということがあるとしよう。

 弟子になるわけではない場合。


 まず封書で手紙を出す。

 相手からの連絡を待つ。

 返信が来る。

 希望する日やらお聞きしたいことやらを書いて前もって伝えておく。

 返事が来る。

 おみやげ(地方の銘菓とかいう手抜きをしてはならない)を持参して訪問する。

 お話を聞く。

 まとまった額の謝礼をお包みする。

 帰ったら必ず御礼状。(もちろん封書)


 こんだけ色々手順を踏む。

 場合によっては賀状なんかの季節ごとのやりとりも入ったりするが。

 こういった前時代的なものはアホらしいと思うかもしれないが、きちんとした大げさな手順を踏んで来られると、先方は「何この大げさな人」と思いつつも、適当なこと言って帰すわけにはいかんなあ、という気になってしまうものなのだ。

 そういうのが狙い目。

 だいたい、武道・武術を伝えている人間で大組織の役職付きというクラスの人はあまりいないし、口先以上の敬意を払われた経験のある人、というのはほとんどいないといっていいだろう。

 何やら世間では、真の武術家がどうのこうのとかいう作品があるらしいが、そんな敬意をあらわしている奴になんか会ったことねえ、というのが筆者の正直な感想である。


 お子さんとかお孫さんに本当にカケラも敬意を払われていない宗家の人とか、流派の代表の方とか、リアルに知ると本当に切ない。

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