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第3回 ー心核と消えぬ焔ー

 ――熱い。


リュカは瓦礫の中で目を覚ました。

全身を焦がすような痛み。

それでも、動かなければと思った。


(……炎が……呼んでる。)


彼の手に握られた剣が、赤く明滅していた。

その光が道標のように、

燃え立つ王都の奥へ導いている。


崩れた街を抜け、

紅い嵐の吹き荒れる城の方角へと進む。

空気は焼け、肺が痛む。

それでも、止まらなかった。


「……レア……!」


声を上げても、返事はない。

ただ、炎の音が世界を覆っている。


彼は剣を杖のように突き立て、

ゆっくりと歩み続けた。


『……理を恐れるな。

 お前はまだ、


“灯”


を選んでいない。』


耳の奥で、紅竜の声が響く。


それは怒号でも警告でもなく――


まるで、試すような声だった。



一方その頃。

城の最上階、かつて


“祈りの間”


と呼ばれた場所。

レアは一人、炎の海を見下ろしていた。

風が吹くたび、衣の裾が焦げる。


「……何も、残らなかった。」


王も、民も、信じたものも。

紅竜の理にすがって築いた全てが、

いまや炎に呑まれ、形を失っていく。


「私は……何を守りたかったの……?」


その声に、誰も答えない。

ただ、崩れた天井から落ちてきた炎が、

祭壇の紋を焦がしていった。

やがて、扉が軋む音がした。レアが振り向くと、

そこにリュカが立っていた。

煤にまみれ、傷だらけの姿。

それでも、その瞳は消えていなかった。


「……やっぱり、ここにいたんだな。」


「どうして……こんなところに……!」


「炎が泣いてる。放っておけないだろ。」


レアは唇を噛みしめる。

その真っ直ぐな言葉が、痛いほど胸に響いた。


「……もう遅いの。

紅竜は完全に暴走してる。

王の理も、封印も……

もう誰にも止められない。」


「誰にも、じゃない。」


リュカはゆっくりと剣を抜いた。


「竜が怒ってるなら、理由がある。

それを


“聞ける”


のは、あんたしかいないんだろ。」


レアは息を呑んだ。その瞬間、床が震えた。


ゴォォォォォォォ――ッ!


祈りの間の床が割れ、

そこから紅蓮の光が噴き出した。


地の底――


紅竜ヴァルドの


“心核”


が姿を現す。

炎の結晶に包まれた巨大な影が、

苦しげに脈打ちながら、

地を揺らしている。


『……なぜ……誓いを……忘れた……』


その声に、レアは立ち尽くした。

涙が頬を伝う。


「ヴァルド……私は、まだ……

あなたを……!」


炎が吹き上がる。

空気が震え、熱風が二人を包み込む。

それでもリュカは前へ出た。


「行こう、レア。」


「……え?」


「この炎の奥に、


“本当の誓い”


がある。

まだ終わってない。」


レアの瞳が大きく揺れる。

そして、静かに頷いた。


「……わかった。

もう一度、あの炎と向き合う。」


二人は炎の中へと足を踏み出す。

紅竜の咆哮が響き渡り、空が再び紅蓮に染まった。


その中心で――


リュカの剣と、レアの印が同時に光を放つ。


紅い世界が一瞬、無音になった。


 ――焔はまだ、消えていない。


そして物語は、


次章へと燃え移る――。


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