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『黎明の理譚Ⅰ 〜紅竜の誓い〜』  作者: 桜井りゅうと
第2章 焔の剣と竜宝印
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第1回 ー紅竜、目覚めるー

紅い月が、王都を照らしていた。

街は静かだったが、


その地下では――


炎が蠢いていた。

リュカとレアは、

王城の裏手にある地下通路を進んでいた。

レアの案内で、彼女しか知らない


“聖炎の封印層”


へと向かっている。


「……この先に、

紅竜ヴァルドの魂が封じられている。

でも、近頃おかしいの。

祈りを捧げても、炎の反応が鈍い。

まるで、別の何かに力を

奪われているようで……」


リュカは壁に手を当て、耳を澄ませた。

どこか遠くで、

鈍い唸りと金属音が響いていた。

その音は、竜の息ではなく、人の機械のようだった。


やがて、通路の先で光が差す。


彼らが見たのは――


紅竜の炎を利用した巨大な装置。

球状の水晶が竜の炎を吸い上げ、

幾本もの管が剣や盾に繋がれている。


「……何だ、これ……?」


リュカの声が震えた。


「“竜導管りゅうどうかん

 

 ――紅竜の理を武具に注ぐ術式。


王が命じて造らせたの。」


レアは唇を噛む。


「祈りを力に変える


“神の奇跡”


だと……そう言われたけれど、

 

本当は、


竜を縛る鎖。」


炎を奪われた竜の咆哮が、遠くで響く。

その音は苦しみそのものだった。


「……理を、武器にしてるのか。」


リュカは拳を握る。


「こんなことをして、誰が得をする?」


その時、背後から足音がした。

響く硬質な靴音。

二人が振り返ると、

黒い外套を纏った男が立っていた。


「それを決めるのは、我々だ。」


男の名はヴァルク=ドラニス。


王国直属の宰相にして、

紅竜の研究を指揮する科学官。

理を信仰ではなく


“資源”


と見る冷徹な男だった。


「竜はもう神ではない。

理を制御し、利用する者こそ、

人の頂点に立つべきだ。

巫女よ、竜宝印を渡せ。

王の剣に組み込む。」


レアが身を強ばらせた。

リュカは一歩前に出て、

剣の柄に手を置く。


「やめろ。

そんなことをすれば、竜は完全に壊れる。」


「ほう……

貴様が、巫女を惑わす


“異邦の少年”か。」


ヴァルクの声が冷たく響く。


背後から兵士たちが現れ、彼らを囲んだ。

炎の光が揺れ、金属の鎧が赤く染まる。


「……レア、渡せ。俺が止める。」


リュカの声は静かだった。


「竜宝印カードを、渡してくれ。」


レアは目を伏せた。

その手の中には、

紅く淡く光るカードがある。

紅竜の命の象徴。


「……できない。

これは、竜が私に託した


“命”なの。


渡せば、竜は……死んでしまう。」


沈黙。

炎の唸りだけが、遠くで鳴っている。


ヴァルクが嘲笑を浮かべた。


「くだらぬ感傷だ。

竜はもはや祈りの対象ではない。

この国の未来は、力によって築かれる。」


「力に頼った未来は、いつか焼け落ちる。」


リュカの声は低く、

しかし確かな熱を帯びていた。


「……俺は、それを見た気がする。」


「見た、だと? 

貴様のような旅人が、何を知る。」


「知らないさ。


 でも――


炎が泣いてる音は、誰にだって聞こえる。」


一瞬、空気が揺れた。

レアの炎の印が、かすかに明滅する。

竜の鼓動が、地下を震わせた。


ヴァルクの顔に焦りの色が走る。


「……いけない、封印層を離脱しろ!


紅竜の反応が――!」


地鳴り。

壁が裂け、赤い光が迸る。


リュカがレアを抱き寄せた瞬間、

地の底から、

紅蓮の咆哮が世界を震わせた。


「――紅竜が……目を覚ました……?」


轟音。

炎が天井を突き抜け、王都を貫いた。


夜空が赤に塗り替えられ、


理が――


悲鳴を上げる。


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