ガンシップ
惑星Xz 南の群島...
大陸より南に位置するラパン王国は複数の島を自らの領土に持つ群島王国である...地球で言う所の熱帯雨林気候に属するこの国は殆どの島が熱低性植物がうっそうと茂っており、巨大な湖や主要河川は王国民の主要な交通手段でもあった。諸国連合には所属してはいないが敵対はしておらず少なからずの交易は行われている...
人間の国家同士の対立と言う意味ではこの国は現在どの勢力とも敵対しておらず、平和な地方であると言えるだろう...もっとも熱帯雨林や河川には地球では見られないような狂暴かつ巨大な生物が生息しており、王国民の命を脅かしていたが彼等はそれを自然と結びついた宗教的価値観にて受け入れていた。
そのような平和を謳歌していたラパン王国に今異界からの脅威が忍び寄っていたのであった...
ラパン王国 とある島...
大小さまざまな島々が所属しているラパン王国にて比較的小型に属する島...その島から1匹の巨鳥が1人の少女を乗せ北へと飛びだっていたのだ...
奴らは一体何なんだ...あんな連中今まで見た事も聞いたこともない...
奴らは突然やってきた...どこから来たのか? そんなことは私には分からない...だが連中は魔法では説明できないような術を使う...龍やロック鳥より速く空を飛び、オグル(オーガ)より巨大で力の強い巨人すら使役していた...そして名状しがたい人の形をしたアレはそれ以上の恐怖を島民にもたらしていたのであった。
彼等は森を焼き払い自分たちの村落を作ろうとしていた...島民たちは彼等と戦ったがまるで歯が立たなかった...島の主である私達が古から崇めてきた巨大蛇、ナーガ様ですら簡単に倒されてしまったのだ...
私はロック鳥に跨り島を脱出した...この島より北に行けばもっと大きな島がありそこには王国の戦士たちが沢山いると村長から聞いていた...
でも、助けを求めるべきだろうか?たとえ大勢の戦士を連れてきても連中に勝てるとは思えない...私がすべきことは警告を発することなのかも...
その時、私の近くの海面が大きな水飛沫を上げたのだ...その正体は1MWの出力を持った不可視の攻撃...レーザー砲を装備したeVTOLガンシップが彼女とロック鳥を狙ったものであった。
XZテクノロジーズが開発したeVTOLであるMQ-420スターアタッカーは米軍にも採用実績のある無人攻撃機である。全長13m、4基可変ピッチローターを備え高効率ターボファンと超電導モーターにより動作し最大速度550km/h SMES...超電導磁気エネルギー貯蔵装置など先進的な技術を複数搭載した高性能ガンシップはレーザー送電システムにも対応しており、これらの先進技術はXZ社が開発した人型ロボットなど様々な機械群にも搭載されている。
固定武装として1MWレーザー砲1門と対ドローン用低出力100kwレーザー砲1門を装備...オプションとしてロケット弾ポッドやガンポッドに対戦車ミサイルを装備可能。
本格的な衛星の支援が受けられない現在の惑星Xzにおいて事前に収集した地形図をロードしており、また気球を利用した簡易衛星の支援により無人運用を行っていた...
グレーに塗装された機械仕掛けの怪鳥が異世界の巨鳥に襲い掛かったのである...
1MWの出力を持つレーザーが海面を叩き水飛沫が上がる...急速に加熱された海水は蒸気化し、まるで海面に噴水が出現したかのようであった...
連中に見つかった...少女はその攻撃の正体について全く見当は付かなかったものの己の生存本能に身を任せロック鳥にランダムな回避運動を行わせる...海面スレスレで曲芸飛行を行っているようなその行動は大変危険なものではあったが、少女はそうしなければ訪れるのは自らの死であると言う事を理解していた...
ロック鳥は大変気高い生き物である...少女とこの巨大鳥は幼き日より共に過ごし硬い信頼関係で結ばれていたのだ...そしてロック鳥は自らの主である少女を守る為必死で海面を踊った...
しかし最後の時が訪れる...ロック鳥の体表を覆っている羽をレーザー砲は一瞬で焼き尽くし、体皮を貫いた...
海面へと少女が投げ出される...己の体を貫かれながらもロック鳥はその翼を広げ少女を守ろうとていた...
巨大鳥は生命尽きる寸前まで主を守る為行動したのであった...そして海面に投げ出された少女が透明度の高い海を泳ぐ姿を目にしたとき心なしか安堵の表情を浮かべ己の命を散らしたのであった。