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黄金色の大地

10年後... 異なる世界 帝国領某所


 悪魔達との戦いに勝利した僕たちは帝国領へと帰還、帝都へ向かう途中であった...この世界に落ちてからもう10年ほどたったと思う... それほどの長い時間僕たち4人は戦い続け、誰一人かけることもなく勝利することが出来たのだ。


 中嶋隼人...日本人である彼は目が覚めるといつの間にかこの世界に存在したのである...なぜこんな現象が発生したのかは不明...気を失う前の記憶があいまいで最後に日本のどこで何をしていたのかついに思い出すことは出来なかった。もう僕は元の世界に戻ることは出来ないのかもしれない...しかしもうそれでいいと思っている、もう僕はこちらの世界で生きているのだ...仲間も愛する人も...たとえ戻れたとしてもその選択を選ぶことは無いだろう。


 まあ、元の世界がどうなったか気にならないわけじゃないけれど...平成から令和へと時代が移り変わったあの年...もしかしたら日本の世相もだいぶ様変わりしたかもしれない...あれから10年たったのだから時間の流れが同じであれば2029年から2030年ほどであろうか?当時16歳だった僕も今ではもう大人になってしまった...両親や元の世界の友人たちは元気で過ごしているだろうか? いやもう気にしても答えが出ることはないだろう。


 僕はあの始まりの村で今手元にある伝説の武具、鎧と剣に選ばれたのだ...そして魔法使いのアリスとともに西方へ悪魔討伐の為旅立った...道中エルフのマリアンナや猫型獣人のサイモンを仲間に引き入れついに悪魔の王を討ち取った...


 今はその凱旋のさなかではあるが...いまだに人種至上主義が強く残る帝国においてエルフと獣人は居づらいと感じていたのかマリアンナやサイモンは旅の途中で離脱して故郷へ足早に帰ってしまっていた...いずれ全種族が平等に生きられる世になればいいのだけれど...


 まあそれは人種である僕も例外ではなかった...元の世界に存在した差別と同じように、人種至上主義の中においてもヨーロッパ的な風土の帝国においてやはりアジア人である僕は差別を受けることもあったのだ...もっとも亜人に比べたら遥かにマシな扱いであるのだが...


 帝国において元の世界におけるアジア人に相当する人種の数は少なく、帝国に敵対している諸国の連合が存在するよりもさらに東の果てから商人や旅人が稀に訪れるのみとなっている...彼等は東の情報や珍しい品物を帝国へともたらしていたのだ。


 僕とアリスは帝国領に入ってから10年前では感じられなかった活気を感じていた...それはこの帝国領では辺境に位置する田舎の村ですら感じられたものであった。


 小麦を製粉するための風車小屋が複数建設され見渡す限り小麦農場が広がり、黄金色の大地がそこには存在したのである。こんな田舎ですらあんなに風車小屋を作るなんてこの10年で随分と発展したのだと僕は感じていた...


 10年前この辺りを通り帝国領外へと出たときはこんな大規模な農地ではなかったはず...それに人口もかなり増えているようだった。


 村の内外をせっせと背の低いコボルトたちが世話しなく動き回っているのが目に入ってきた...彼等は成長が早いらしく生まれて3年もすれば人間でいう成人扱いとなり貴重な労働力として酷使され、その短い寿命を終える者が殆どだと言う...脱走して野盗に転じるコボルトも相当数存在するのが問題になることもある...僕たちは道中悪魔の軍勢以外にも土着の危険動物やそういった野盗と戦う事も多く、当然そういったコボルト達を手にかけることもあったのだ。


 僕たち2人は村長の家があった場所を訪れるとそこには10年前にはなかった田舎にしては比較的に大きな屋敷が建設されていた。


 かつて出発の挨拶をした村長は高齢で既にこの世を去り、彼の息子が後を継いでいたのだが...


 村長は昼間だと言うのに若い女性を一人侍らせ蒸留酒を口にしてかなり酔っている様子であった。


 村長がその女性に手で指示を出すと彼女は杖で水の入った容器に呪文を投げかける...すると水は瞬く間に凍りついたのであった。その魔術師であった女性は鋭利な刃物を氷に突き立て、細かく砕いたものを蒸留酒のグラスに入れた。


 なるほど10年前よりかなりこの村は裕福になったと見える...悪魔達がこの村を襲撃することが無くなったからだろうか?いやそれだけではないだろう...


 「勇者殿とお連れの女性も1杯いかがかね?」


 「いえ、僕は飲めませんので...」


 「私も遠慮しておきます。」


 「そうかね、それは残念...いやはや農務省様様という訳でしてな...今では小麦栽培は勿論こういった酒も村でつくっておるわけで私等の懐も温かいのですよ。」


 酔った村長はここ近年で村に起きた事を調子よく語ってくれたのだ...


 9年ほど前、帝国中央から派遣されてきた農務省の役人たちが新たな栽培方法と新種の小麦の種を村へともたらし大規模な農地開発が行われたという...ウィスキーと呼ばれる新しい蒸留酒の作り方さえ指導してくれ今では帝国各地でかなり生産が始まっているという...


 この村の麦の収穫量はそれ以前とは比較にならないほど増え、それに比例して人口も増大傾向にあるらしい。


 「たしか中央の役人がハーバー...なんとか法とかいう技術を開発したとかで私にはよくわからんが小麦の収穫量を劇的に増やすことが出来るんだと説明を受けたが...本当だったというわけだな。はっはっはっ。まあなんにしても諸国連合の連中に対抗するための国策であるとか言っていたなぁ。」


 


 




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