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ゴブリンの巣

惑星Xz 諸国連合所属国家某所 魔鉱石鉱山跡地


 この場所はかつて魔鉱石採掘で栄えた地方である...最盛期には周囲に人々が溢れ活気に満ちていたのも過去の話...この世界に溢れている魔力を...空気中の魔力をただの石へと定着させる技術が開発されてからというもの各地に存在していた魔鉱石鉱山は全て閉鎖されたのである。


 鉱山が無くなり栄えていた周辺の都市は急激に廃れていったのである...


 そしてそのような廃坑や廃墟には魔獣などの様々な生物が住みつくことが多々あり周囲の人々を悩ませることが多々存在した。


 ダークグリーンの地肌、歯並びの悪い口からは醜悪な唾液が垂れ、雑多な布と手に持った廃材を武器として扱う事から最低限の知能を保有していることを伺わせる2足歩行の化け物ことゴブリンたちがこの廃坑に住みついていたのだ。


 人型とは言ってもゴブリンやオークやトロルなど知能に劣る種族は亜人には分類されず魔物、あるいは魔獣にカテゴライズされる存在である...その中でもゴブリンは下級のモンスターではあったのだが...


 どうやらこの廃坑に住みついているゴブリンたちは何かしら特別な力に従っているようでありその勢力は非常に大きいものになろうとしていたのであった...


 彼等は自分たちだけでは繁殖することが出来ず人間や亜人の雌が必要であり、周囲の村落を襲撃する習性を持っていた...通常ならこのレベルの群れに成長する前に討伐されることが多いのだが今回はどうやら事情が異なるようである...


 廃坑の中をゴブリンの醜悪な声が木霊する...その中に女性のすすり泣く声や悲鳴が時折混じり合いまさに地獄のような環境がここには存在したのである。


 捕らえた女性を監禁するための牢屋の鉄格子の付近に一人の女性が座り込んでいた...彼女はかつて諸国連合に参加するとある王国の貴族に仕えた騎士であり、かつて討伐部隊を率いてゴブリンと戦ったが敗北してしまい現在へと至る...


 牢屋の中には数十人の女性が存在しており、ある物は正気を失い、ある物はもはや無気力状態へと移り変わり己の境遇に皆絶望していた...その中でもこの元女性騎士は自らの強い意志で正気を保っており脱出の機会を伺っていたのである。実は彼女が仕えた貴族が治めていた地方都市すらゴブリンたちは陥落させており、既に仕えた主も連中によって命を落としていたのであった...その知らせは既に後続で連れてこられた女性から元女性騎士の元へと届いていたのだが...


 それでも私は絶望しない...これほどの規模となったゴブリンたちを本国は無視しないだろう...いずれ救援隊が到着するはずだ...


 その時、牢屋に近づいてくる複数の足音が鳴り響くのが確認できた...女性たちは皆恐怖した...また言葉にするのも悍ましい行為をゴブリンに強要される為に牢屋から連れ出されるのではないかと思ったからだ...


 しかし今回はそうではなかった...人間の真似事なのか、比較的大柄で鎧を身にまとったゴブリンが手下のゴブリンを引き連れて手に縄をされた女性を牢屋に連行してきたのであった。


 牢屋の扉が開くと鎧のゴブリン、ゴブリン・ナイトが女性を中に押し込み再び扉を閉じようとする...すると小型のゴブリンが今の女性へと手を出そうとする...あのおぞましい発情の表情が女性に迫ったのだがゴブリン・ナイトが手に持っている剣で発情したゴブリンを切り捨てたのであった...その一幕を目撃した他のゴブリンは怯えたような表情で今しがた処分された仲間の死体を片付け始めたのだ...


 この牢屋は上玉が集められる監禁場所であり、ゴブリンの王やそれに使える上位種専用...下級のゴブリンがここに集められた女性へと触れることは許されないと言うことなのだろう...


 死体を片付けたゴブリンたちは牢屋を後にして再びどこかへと立ち去って行ったのだ...


 連れてこられた彼女はブロンドヘアーを後ろで束ね後頭部にまとめた髪型であり、身長は高く180cmほどはありそうな美しい女性であった。


 私は彼女を見たときなにか違和感を感じたのである...周囲を無表情で観察するこの女性は落ち着きすぎているのだ...ゴブリンに捕まったばかりの女性と言うのは普通泣き叫ぶなどの感情を露にする...しかし彼女は違ったのだ。


 私は彼女へと駆け寄り言葉を投げかけた...


 「随分と冷静だな...ここがどういう場所か理解しているのか?」


 そのブロンドの女性は私の方へと顔をゆっくりと向けると数秒の間をおいて話し始めたのだ...


 「ここでは...魔鉱石はまだ採掘できるのか?」


 私はその問いの意味を理解するのに数秒の時間を必要とした...なぜ今この状況でそのような事を気にする必要があるのだろうか?私には理解できなかった。


 「魔鉱石?...枯渇したわけでは無いからまだ取れるはずだが...それがどうしたというのだ?」


 「そう...この地域にはどうやら鉱物資源が豊富のようだ。」


 「???」


 彼女は立ち上がると牢屋の鉄格子の前に立ち手を触れた...いつの間に手の縄を外したんだ...?


 そして驚くべきことが起きたのだ...なんと彼女は鉄格子を素手で引きちぎり破壊したのである。


 ありえない...ただの人間が...いやオーガやトロルだってあの鉄格子を素手では破壊できるかどうかというのに...

 

 牢屋の女性は皆その彼女の行動に釘付けになった...そしてしなやかかつ力強い足取りで牢屋を後にする彼女の後を私を含めた女性たちは付いていったのであった...

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