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メデューサの恋人

作者: 葉沢敬一

毎週日曜日午後11時にショートショート1、2編投稿中。

Kindle Unlimitedでショートショート集を出版中(葉沢敬一で検索)

 彼女が出来た。同僚のメデューサ娘から告白された。僕のことがずっと前から好きだったという。僕も彼女のことは好きだったので、OKした。


 ただ、視線を合わせられない。うっかり合わせてしまうと石化してしまうからだ。だから、目は普段、前髪というか前の頭の蛇で隠されている。


 この国は、獣人や魔族が人族の中に普通に紛れて暮らしている。街中でも普通に歩いていて、外国人が、ワオ! とか言って驚いていたりする。


 だから、学校にも異種族が居たり、会社にも居たりするのは普通のことである。当たり前すぎて、外国で異種族にも人権を! と言う運動が奇異に見えるくらい。そして、この国も見習うべきであるというお節介というか、明後日の方を向いた運動がなされている。大きなお世話だと異種族の人たちは言っているが我が国は人権後進国だそうなので、聞く耳持たないのが現状である。


 今日は彼女が僕のマンションに遊びに来た。


 玄関先で彼女を抱きしめる。頭にやった僕の手を蛇がかぷりと甘噛みしてくる。そういうのが堪らなくかわいい。


 実は彼女の顔は見たことがある。なんのことはない、伝説通り鏡に映っている顔を見せて貰っただけ。彼女は美醜を気にしていたけど、かわいい顔で、愛嬌のある笑顔をする。


 異種族と言うけど食べるものは同じなので、彼女と一緒に料理を作ることにする。僕がパスタ茹でて、レトルトを温める。彼女は横で、サラダを作る。大した料理じゃ無いけど二人で食べる料理はおいしい。ワインを空けたけど、お互いお酒には強くないのでボトル一本で終わり。そして映画を見る

「ねぇ、隣の課のNちゃんだけど」

 彼女は唐突に言ってきた。ちょっと酔ってるのかもしれない。

「前付き合っていたって、本当?」

「うん、一時だけね。でも合わなかったから別れた」

「なぜ?」

「彼女、学歴や家柄に拘るんだ。僕は私に合う相手じゃないって振られた。なんで知ってるの」

「噂になったから」

「職場恋愛って怖い」

「私もそうなるかもね」

「そうなるって? 覚悟して付き合っているんだけど」

「え?」


 彼女は目元がよく見えないけど首筋を赤くして聞き返した。

「この先も考えているし、君に石化されてもいいと思って付き合っているよ」

「きゃー!」


 彼女は両手を頬に当てた。

 その手を取って、キスをした。お互い目を瞑ったまま。


「種族違うのよ。期待して良いの?」

「もちろん。今の気持ちはこれだよ」


 実際、今のところ価値観に大きな差があるわけでないし、お互い尊重しあっているので問題はないと思う。

 人権がどうのこうのいう国よりも実態は異種族同士溶け込んで暮らしているのである。

全ての著作権は私、葉沢敬一にあり、勝手な書籍化、マンガ化、ドラマ化、映画化などは禁止します。

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