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ベルジュラック②2

 最初の休憩の時、ジョスランの身の回りの世話をしていたレノーが馬車内での様子を聞いて諭すように言ってきた。

 

「こちらはジーナ殿からラウリーヌさまの好みなどを聞いて粗方わかったので、今度はラウリーヌさまからジョスランに質問すればいいんですよ。例えば体のこととか。」

 

 ラウリーヌが驚いて目を丸くすると、レノーはからからと明るく笑った。

「結婚相手が知らなくてどうするんですか。ジョスランはなんでも答えてくれますよ。ねえ? ジョスラン。」

「ああ。まあ、聞きづらいだろうから私から話してもいいが。」

「ダメだよ、会話しなきゃ。いいですかラウリーヌさま。馬車に乗ったら必ず質問するんですよ。体のことだけじゃなく聞きたいことがあればなんでも。屋敷に着いたら確認しますからね?」


 主従共になかなか難しいことを言ってくる、とラウリーヌは心の中で思った。


 *


 休憩が終わって再び馬車に乗り、向かい合わせに座る。色々と衝撃的で目を泳がせているとジョスランが噴き出すように笑った。

 その笑顔はまるで少年のようでどきりとする。


「驚いただろう。レノーはいつもあんな感じだ。乳兄弟で生まれた時から一緒に育って遠慮がない。それに、変に気を使わなくてよい。単純なことだ。子どもの頃の病気の影響なんだよ。昔は寝たきりに近かったが、これでも動くようになったのだ。」

「そ、そうなのですね……。」

 

「……私が克服しようと思ったのは、君の影響だよ。」

「え……?」

「ああ、もうすぐ着くな。またゆっくり話す。時間はたくさんあるからな。」


 南部最大の街メリザンドは、街自体が堅牢な壁で囲まれており、大きな門をくぐると賑やかな城下町が現れる。

 ベルジュラックの屋敷は門を入ってすぐのところにある。敷地の一部には役場や議場なども兼ねた建物も建っており、付随する食堂やカフェなどもある。まるでそれ自体が一つの街のようだ。

 

 その建物群を抜けると高い柵に囲まれた邸宅が見えてくる。朧げに記憶に残るより美しく、よく手入れされた庭に囲まれた大きな邸宅だ。

 ラウリーヌは(もはや城では?)と改めて気圧された。

 

 馬車から降りる時、レノーがやってきてジョスランに肩を貸すようにして降りる。それからジョスランが向き直ってラウリーヌに手を貸してくれる。

 出された右手にそっと手を乗せ馬車を降りると、アプローチに使用人の方たちがずらりと並んで出迎えてくれた。


「お帰りなさいませ、旦那さま、ラウリーヌさま。」

 壮年の男性が声を出すとザッという音が聞こえそうなほど揃ってお辞儀をされ、ラウリーヌがたじろいでいると、ジョスランがこつんと杖を石畳みに突いて音を立てた。すると皆が揃って顔を上げた。


「案内を。」

「はい、こちらへどうぞ。」

 ふんわりとした雰囲気の女性が前に出る。

「彼女はブノア夫人、私の乳母だった人で今は侍女長をしている。わからないことがあればブノア夫人に聞けば良い。私は一旦執務室に戻る。レノー。」

「はい。」


「ラウリーヌさま、荷物を運び込み終わるまで居間にてお待ちください。お茶をご用意しております。」

「ありがとう。もしかして、レノーさんの母君ですか?」

「ええ、愚息がなにか失礼をしておりましたか?」

「いえ、気を使っていただき感謝しています。」

「それはなによりです。ああ、愚息のことはどうか呼び捨てで。それに私に敬語は不要です。」

「でも子爵夫人なのですよね? 私にとっては目上です。」

「いいえ、ラウリーヌさまは旦那さまの婚約者でいらっしゃいますから。」

 ブノア夫人はにこりと笑ってドアを開けた。

 

 中は趣味のいい落ち着いた調度品で整えられた部屋だった。

「こちらはベルジュラック公爵ご家族専用の居間となっております。」

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