↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
きっと、そばに  作者: ミソラ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/70

夜の城①3

 リオンはサージェス伯爵の実子ではない。王都が政情不穏になりつつある時、サージェス伯爵に預けられた。


 *


「父上と母上は一緒に行かないのですか?」

 十三才になったばかりのイーヴに向かって亜麻色の髪の毛と湖に空を写したような青い瞳を持つ父と、緩やかに波打つ銀色の髪の毛と緑の瞳を持つ儚げに美しい母は優しく微笑んだ。

「仕事が終わったら迎えに行く。だからそれまで待っていてくれ。」


 そしてこれからは「リオン」と名乗ること、ルーツを同じくする銀色の髪の毛を持ったサージェス伯爵のことを父と呼ぶように、そして伯爵夫人のことを母と呼ぶようにと言い含められた。


 理由はわかっているが、父母の力になれない自分が悔しくて俯いていると、父が顔を覗き込むようにして微笑んだ。

 

「迎えに行くまでだよ。それまで健やかに育て。よいな?」


 イーヴをサージェスの領地まで付き添ったのは、父の護衛騎士であったジャンだった。

「イーヴさま、必ずやお迎えに参ります。それまでお元気で!」


 ジャンは跪き、(こうべ)を垂れてイーヴに誓い、そして去って行った。


 それから一年後、長く病に臥していた当時の国王が崩御され、間もなく王都で激しい権力争いが起こり、それが争乱につながった。その中心にいたのが王弟であった父とイーヴの同い年の従兄弟ローランドだった。


 父は優しく聡明な人だった。けして甥から王権を奪うような野心を持つ人ではなかった。

 しかし年若いローランド王太子は国王の器ではなかったため母后や外戚が摂政政治を主張した。それを不安視した貴族たちに父は担ぎ上げられたのだ。

 そこには由緒正しい血を持つイーヴの存在もあった。


 だからこそ父母はイーヴ(リオン)を守ろうとした。


 サージェス伯爵はリオンの母の縁戚にあたり、リオンと同じ銀色の髪の毛を持っていることで預け先として選ばれた。サージェス伯爵も快く引き受けて『代替わり』と称してリオンを伴って南部に移住した。


 ベルジュラックの嫡男であるジョスランを害したのは王弟派の刺客であるが、ジョスランを狙ったものではなかったし子供であるリオンは関係ないと判断された。リオンの出自を知る者も限られているのもあってリオンは南部に受け入れられた。

 

 一年の闘いの末、内乱は北部のヴァリエ公爵とローランドの婚約者キャレルの母国であるヴィドルバン帝国の後ろ盾を得た王太子派の勝利で終わり、父母は責任を取って毒杯をあおったと聞いた。


 リオンは絶望したが、それを癒してくれたのは南部の土地とラウリーヌをはじめ隔てなく接してくれる人々だった。

 

 結局、順当にローランドが王位を継いだ。この闘いはなんだったのか。なぜ両親は死んだのか。

 虚しさを抱えながらも自分が生き続けるのが死んだ両親の鎮魂の祈りになるのだろう。そう考えたリオンは、覚悟してサージェスの子息として生きていくことを決心した。

 

 それから半年ほど経って王都から遠く離れた南部の貴族たちも普段の生活を取り戻しつつあった。

 

 どうにか恩のあるサージェスと南部の役に立ちたかったリオンは、「動くのはまだ早い」と心配するサージェスの養父母を説得し、メリザンドの寄宿学校へ戻ることにした。


 そしてサージェスの領地からメリザンドへ至る途中にあるオロール峠で事は起きた。


 突如、怒号が響き渡り馬が嘶いた。馬車に同乗していた従者がリオンを庇うように前に立ったが、乱暴に扉が開かれたと思ったら従者が血飛沫を上げて崩れ落ちた。

 一瞬の出来事だった。


「お迎えにあがりました、イーヴ・リオネル・ジスラールさま!」

「ジャン……。」


 リオンは目の前に立つ返り血に染まった男を睨んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。