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きっと、そばに  作者: ミソラ


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バルティ②3

「当時、宮廷内は激しい派閥争いが続いていた。中立を守って繁栄を続けている南部はローランド陛下が即位されてからは微妙な立場に置かれている。」

 

「それで当時、毒からローランド陛下を庇った見返りとして、内実は公爵家を王太子派に引き込むためアンジェル殿下を降嫁させようとしたわけだ。だが先代公爵は断った。」


 ジョスランはお茶のカップに口をつけた。

「それに関しては深い意味があったわけではないだろうよ。単に畏れ多いと思っただけだろう。私は寝たきりだしアンジェル殿下も幼かったし。」

「今となっては年齢的にはラウリーヌ嬢とそう変わらん。」

「確かに。」

 ジョスランが柔らかく笑い、ラウリーヌは赤くなった。


「で、でも矢を放ったのは王弟派だったのでしょう?」

「まずは証拠がなかった。それから中立でいるためには、あからさまにどちらかを敵と認定するわけにはいかなかった。王家は王太子を守ったことに対して、王弟は私を巻き込んだことに対して後ろめたく感じている。それを利用して中立を保つことができたわけだ。

 それに誰も体の動かない私がベルジュラックを継げるとは思っていなかった。爵位を誰かに譲り、このままひっそりと生きていくのだろうと。

 多分、王家は私を脅威に感じてなかった。だから王女を降嫁させることによって南部を併合しようとしていたのだと思う。」

 

 当時、アンジェル王女はまだ三才だった。知らぬ間に決まった婚約者が無気力で体が動かない男など、政略だとしても残酷だ。ほかにもよい嫁ぎ先があるだろうと、先代のベルジュラック公爵が言葉を尽くして断った。

 

「体が動くようになり南部を守るために伴侶を得たいと考えた時、本来ならばアンジェル殿下と婚約すべきだったのだろうが、既に隣国の王太子との婚約が決まっていた。その頃に私にも色々と縁談話が舞い込んだ訳だ。」

 ラウリーヌの頭にマデリンが思い浮かんだ。確か彼女はローランド国王の参謀である北部ヴァリエ公爵の遠縁だった。

 

「だが、私の伴侶となる人は一緒に南部を守っていける人がいい。」

「それで成長するラウリーヌさまを見守っていたと。」


 レノーが笑いながら口を挟む。

「そうなのか?」

 ユベールが興味津々な顔をしてレノーを振り返った。


「ええ。馬に乗れるようになると最初に遠乗りに行ったのがゴーチェ領。速歩(トロット)で片道二時間ですよ。」

「ええっ、いつ来ていたの? というか見てたの?」

「気持ち悪いですよねえ? それに南部を守るかラウリーヌさまと婚約か、卵が先か鶏が先かの問題のようですが、実のところ先にラウリーヌさまという存在があったのです。」


 ジョスランはすんと目を逸らした。

 ユベールはくすくす笑った後、真剣な目をしてジョスランを見た。


「だがとにかくだ。国王陛下とアンジェル王妹殿下には気をつけろ。あの二人は欲深い。再び豊かな南部を手に入れに動くかもしれない。それに……。」

「それに?」

 ユベールは言いづらそうにジョスランとラウリーヌの二人を見た。

「あの二人は美しいものが大好きなんだ。兄妹で指向は違うが……。とにかく、すぐに南部に戻れ。」


「高位貴族の婚姻には国王の印がいる。婚姻誓約書のサインを後日受け取ることになっているが……。」

「激しい内乱を制して即位した国王陛下の権勢は凄まじいものがある。決して一人では行くな。」

「……わかった。ありがとう、ユベール。」


 それでもユベールの不安そうな表情は消えることがなかった。

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