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きっと、そばに  作者: ミソラ


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ルノヴァン宮殿①3

 アンジェル王妹は、そんなラウリーヌに気づかないようにまっすぐにジョスランだけを見つめ、可憐に微笑む。

 

「もったいないお言葉です。」

「そんな体になったとしてもあなたの価値は変わらないでしょうに。」

「いいえ、このような華やかな場所にそぐわず恥ずかしい限りです。」


 そう話すジョスランに対し、アンジェルは扇で口元を隠してラウリーヌを見た。

「ふふっ、美しい婚約者さまですこと。せっかくの舞踏会で婚約者と踊れないなんて寂しいわね? でもどうぞ楽しんでいらしてね、ゴーチェ嬢。」

 ラウリーヌは慌てて膝を折り頭を下げた。


 アンジェルは綺麗な笑顔を浮かべ、ゆっくりとジョスランを見やってから去っていった。


 その後ろ姿を見送っていると、一人の貴公子がアンジェルのエスコートをするために近づき、こちらに顔を向けた。


 気怠げで優雅、そしてはっとするような美しい貴公子で、感情の読めない灰色に青が混ざったような髪の毛と瞳が冬の氷のようだ。

 男は小さく会釈をしてアンジェルと共に遠ざかっていった。


「あれは?」

「ランベール・ヴァレリー侯爵だ。陛下の戦友であり側近。まあ、一番のお気に入りだな。」

「ああ、陛下と同じ年の。私が宮廷にいた時に一緒になることはなかったな。」


「……それにしても、厄介なものに目をつけられたぞ、ジョスラン。」

「目をつけられるようなことをした覚えはないがな。」

「王家からの婚約を断ったんだ。それにあのこともあるだろう。」

「あの時私は候補の一人に過ぎなかったし体も動かなかった。それに王女殿下はまだ幼かっただろう。この度アルエスタ王国への輿入れが決まったと聞いているし、関係ないのではないか?」

「いや、あのお前との婚約話は罪滅ぼしの意味もあった訳で……。」

「ユベール。」


 ジョスランが静かに遮ると、周囲の視線が集まっておりラウリーヌが青い顔をして立っている。

「ラウリーヌ大丈夫か?」

「え、ええ。」

「控室に行った方がいいだろう、ジョスラン。レノーは来ているのか?」

「ああ。ラウリーヌ、行こう。」

「出て行っていいの?」

「そのために控室がある。さあ。」


 *


 ベルジュラック家に用意された部屋は大広間から近く、豪華に整えられていた。


 控えていたレノーがお茶の準備をし、さりげなく毒味をする。


「大丈夫かい? ラウリーヌ嬢。あのむせかえるような香水の匂いと熱気は、私も未だに慣れないよ。」

「大丈夫です。あの……。」


 ジョスランが人差し指を立てて口に軽く押し、言葉を止める。

 ユベールが声をひそめて囁いた。


「どこで誰が聞いているかわからないからね、静かにお茶でも飲もう。」


 ラウリーヌはわずかに目を見開き、頷いた。


 *


 その後もう一度大広間に戻り、ジョスランの叔父や南部から来た貴族と話し、国王と王族に挨拶をして宮廷を下がった。


 馬車に乗り、やっと二人きりになる。

「……聞いてなかったんだけど?」

「すまぬ、忘れていた。」

「忘れていた?」

 王女との婚約を忘れることってある?

 ラウリーヌが訝しむようにジョスランを見ると、苦笑まじりにため息をついた。

 

「婚約はしていない。打診があったが断ったのだ。私が十一、彼女が三才の時。あの事件の後でね。私に伝わる前に父が断った。」

 

 南部の支配者ベルジュラックの息子を害したことに危機感を募らせた王家が王女を降嫁させようとした。

 だがそれを断り、南部がこの件について多少の賠償を受けたのみで収めたため婚約は成らなかった。

 

「なるほど。」


 *

 

 ベルジュラックのタウンハウスへと戻った頃にはラウリーヌはへとへとに疲れ切っていた。

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