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きっと、そばに  作者: ミソラ


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18/70

バルティ①

 王都へ向かう馬車に乗ってしばらくした頃、ジョスランが静かに口を開いた。

 

「ラウリーヌ、宮廷に行けば色々と嫌な話も耳に入ってくるだろう。今から簡単に説明する。疑問や不安な点があれは聞いてくれればよいし、その都度きちんと話をしよう。私はなによりも君に誤解されるのが怖い。」

「え、ええ。」


 珍しく悲痛な色を伴った真剣な表情のジョスランは一度ため息をついて話し始めた。


「体が動かなくなった原因は、病ではなく毒なんだ。」

 

「……毒?」


 ラウリーヌがさっと青ざめる。ジョスランは頷いた。


「毒と言っても私を狙ったものではなかったのだがね。私が十一、当時第一王子と遇されていたローランド陛下が五才の時だ。宮廷内ではすでに権力争いが起きつつあった。なぜならローランド陛下の母は身分の低い側妃で、当時の王弟殿下と侯爵家出身の妃との間のご子息、イーヴさまがローランド陛下と同じ年齢だったことによる。」


 ローランドの母親は前国王の愛人であったが、子供を身ごもって側妃に取り立てられた。後ろ盾はお腹の子だけという、子爵家の娘だった。

 無論、側妃に取り立てられた途端に群がる者たちは湧いて出たが。


 *


 あの日、ジョスランやそのほかの高位貴族の子息たちは五才になったローランドの側近候補兼遊び相手として定期的に宮廷へ上がっていた。

 

 穏やかに晴れた日で、庭に出て遊んでいた時だ。

 ローランドと同じ年頃の子どもを守るようにジョスランたち年長の子どもは周囲に立っていた。

 

 宮殿内の王家専用の庭だったため油断していた。子どもだったジョスランたちも周囲の大人たちも危険などあるとは思っていなかった。だが、ローランドを庇ったジョスランに、放たれた矢が刺さった。


 ラウリーヌは衝撃で思わず身を引き背もたれにもたれかかった。


「光るものが見えたのだ。咄嗟の判断だった。……その矢尻には毒が塗られていた。」


 ジョスランは長い時間苦しみ、意識が戻った時には体が麻痺して動かなくなっていた。


「諸侯の息子である私がそのような状況になったのは影響が大きすぎるため、緘口令が敷かれた。だから知らないくせに好き勝手なことを言う者も多いだろう。私に対して表立って言えない分、君に嫌な思いをさせることがあると思う。

 だが、私は君のそばを離れずきっと守る。信じてほしい。」


 ラウリーヌは小さく頷いた。


 *


 二週間の行程を経て、ジスラール王国の王都、バルティに到着した。

 まだ内乱の傷跡が残る街には活気が戻っており人の往来が多い。メリザンドも多いと思っていたが比ではない。

 だが、ラウリーヌは憧れであった王都よりメリザンドの方が何倍も美しいと感じ、すでに早く帰りたいと思ってしまった。


 *


「ここがベルジュラック公爵家のタウンハウスだ。」

「素敵ね。」


 メリザンドにあるベルジュラック邸に比べれば敷地は狭いが、それでも大きく、素晴らしく凝った造りの屋敷だ。


「お帰りなさいませ、旦那さま、ラウリーヌさま。」

「うむ。ラウリーヌ、タウンハウスの家令コームだ。」

「よろしくね、コーム。」

「はい。お疲れになったでしょう。部屋を温めておりますよ。王都は南部より少しまだ寒いですからね。」


 コームは微笑みながら主人たちを先導した。


 *


 ベルジュラック家は首都にいくつかの屋敷を所有し、この屋敷は首都での本宅となる。別の屋敷にはジョスランの母親が住んでいる。

 ラウリーヌはジョスランと婚約して初めて、ジョスランの母テレーズに会うことになった。


「またそんなに緊張して。」

「当たり前でしょう?」

 ジョスランは楽しそうに笑っているが、ラウリーヌは挨拶や話の内容を何度もシミュレーションしている。

「大丈夫だ。母も喜んでいる一人だから。」

 そうは言っても、とラウリーヌは大きく息を吐いた。


 *


「待っていたわ、いらっしゃい。」


 本宅より少し小さな屋敷に着くと、玄関で前公爵夫人のテレーズが待っていた。

 ジョスランの美貌は母親譲りのようで、特に涼しげな目元がそっくりである。


「あ、あの初めまして。ラウリーヌ・ゴーチェと申します。」

「ほほ、気を楽にしてちょうだい。初めましてではないのよ? もっとも会ったのはあなたがまだとても小さい時だったけれど。」


 どうやら幼い頃にメリザンドのベルジュラック邸に行った時に会っていたらしい。

 ラウリーヌは顔がかあぁっと赤くなった。


「まさかジョスランがあの時の小さな女の子と婚約するなんて思っていなかったけれど、とても嬉しいわ。ジョスランをよろしくね、ラウリーヌ。」

「はい……っ。」


 テレーズは夫亡き後、王都に留まってジョスランができない社交をこなしている。いずれラウリーヌが担うことになるので、王都にいる間は指導してもらうことになった。


「面倒なことだな。あんな貴族たちのご機嫌をとったところで得るものはないと思うが。」

「なにを言っているの。この国は内乱が終わったばかり。まだ誰も彼もが疑心暗鬼になっているわ。ちゃんと顔を見せてあちら(・・・)を安心させるのも大切な仕事よ。とにかくうまく立ち回ることが大切よ。……あなたたちは目立つだろうから。」


 それから、メリザンドでも習った宮廷マナーに加えて、テレーズから具体的な対処法を学ぶことになった。

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