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きっと、そばに  作者: ミソラ


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ベルジュラック②

 暖炉の薪がパチパチとはぜる音も心地いい夜、ベルジュラック邸の居間では薬師のクレマンがジョスランの左手をマッサージしていた。

 それをラウリーヌが熱心に見ている。


「あんまり見られているとやりにくいね。」


 最近ではラウリーヌに対するクレマンの口調も砕けたものになってきていた。クレマンは元々平民で、ラウリーヌに敬語で話そうとすると辿々しくなってしまうので、ラウリーヌとしても話しやすいように話してくれる方がありがたい。


「最近、マッサージの回数が増えているような気がするのだけど。」

「寒くなってきたからね、血の巡りをよくしないと。」

「なるほど。ジョスラン、痛い?」

「我慢できないほどではない。」


 そう言うジョスランの眉間には皺が寄っている。

 

 ベルジュラックに来て二か月。ジョスランの忍耐力と努力する姿には驚く。

 兄が言っていたように、昔は今より体が動かず屋敷に閉じこもっていたというのに、今は自力で歩いて街の視察にも頻繁に出掛けている。おまけに騎士団の剣の鍛錬にも参加している。

 それには毎日地道に行っている厳しい鍛錬や痛みが伴うマッサージが必要なのだ。

 

 そばにいると、ジョスランは恐ろしいほどの美貌と優れた頭脳を持っているが、完璧な人間ではないと思い知らされる。

 そんなジョスランのことを知るたびに、ラウリーヌはなぜか泣きたいような気持ちになる。


「私もしてみていい?」

「もちろん、どうぞ。」


 クレマンと場所を代わり、ジョスランの左手を取る。


 暖かくて大きいけれど、使われることがないその手は、繊細で美しい形をしている。

 

「腕は終わったので、指を一本ずつ伸ばして、そうです。」


 繊細だが大きくて暖かい手。ジョスランを苦しめているだろう、動かない手。

 ラウリーヌはなるだけ優しく、指を伸ばすようにマッサージした。


「クレマンにしてもらうよりよほどいい。」

「そりゃそうだろうよ。」


 優しい笑みのジョスランと、真っ赤になりながらジョスランと向かい合ってマッサージするラウリーヌを、レノーとクレマンはニヤニヤしながら見守っていた。


 *


 南部にしては珍しく雪が積もったある日、ベルジュラック邸に一通の書簡が、仰々しい使者によって届けられた。


「どうしたの? ジョスラン。難しい顔をして。」

「春の社交シーズン最初の、宮廷での舞踏会にラウリーヌの披露も兼ねて出席しろとの命令だ。」

「宮廷での舞踏会?」


 田舎の子爵家の娘には縁遠い話だと思っていた。

「ジョスランは列席したことがあるの?」

 父母は議会のために、兄は王都の学園に通っていたから列席したことがあるとは言っていたが。

 

「いや、議会での議決権も王都にいる叔父に委任してあるし、舞踏会など更に関係ないしな。興味あるか?」

「まあ……。でも宮廷での舞踏会なんて夢のような話だと思っていたから。」

「ふむ、結婚証書に国王のサインも必要なことだし、気は進まないが行かぬわけにはいかないからな。」


 国王から大きな権力を委譲されている諸侯は、警戒される立場でもある。貴族院での議員として、また重責を担う立場として、本来ならば年の半分以上は王都に留まる義務がある。

 しかしジョスランは体のこともあり、公爵位を継いでから多額の納税と引き換えに出仕は免除され、議員としての議決権は叔父に委任している。

 

 が、直々の書面が届いては宮廷に上がらないわけにはいかない。諸侯の妻は国家にとっても重要事項なのだ。


「今から準備せねばなるまいな。レノー、ドニと夫人に伝えてくれ。仕事関係はクリフに。」

「わかった。」

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