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きっと、そばに  作者: ミソラ


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ベルジュラック①8

 夜会も無事に終わり、公爵夫人としての勉強も本格的に始まった。結婚するかどうかは別として早めに始めないと間に合わない。

 

 広大な領土を有する南部を統括しているベルジュラック家は、海や国境に面しているため騎士団を三つ所有し、警備隊も区域ごとに設置している。

 ラウリーヌの実家のゴーチェ家も、その騎士団を構成する一つだ。普段は自領を守り、有事の際にはベルジュラック家の騎士団に合流する。

 

 貿易に関しては公爵家とジョスラン個人所有の商会として分離されているのでラウリーヌの仕事の範疇から外れるが、それでも頭がぱんぱんになるほど覚えることはある。

 

 今日は夜会に来た客から送られた、大量の招待状への返事を書くことに追われていた。

 ジョスランが社交嫌いのため「行く必要はない」と言ってくれるが、南部貴族の長の婚約者として悩む。

「こちらに来てもらえばいいのです。ベルジュラックの屋敷なら私も家令もいますし、向こうも喜びます。」

「そうなの?」

「ええ。ですから全て断り、落ち着いたらこちらから招待すると書きましょう。」

 実際はベルジュラックの次期夫人となるラウリーヌの品定めなのだから、ベルジュラックの屋敷の者がラウリーヌをどのように扱っているかを見せるだけで目的は達成される。

 ブノア夫人は内心燃えていた。


 ラウリーヌは断っていいのか、と思いつつもその方がありがたいので次々と返事を書いていく。


 ブノア夫人に教えられながら机に向かっていたラウリーヌだったが、今まで勉強よりも体を動かす時間の方が長かったラウリーヌにとっては先が不安でしかない。


 頭がぴしぴしと痛んできたので、気分転換に外を散歩することにして一旦勉強は終わることにした。


 *

 

 今日は初めて行く場所にしようと裏手の方へ周った。


 背の高い植え込みの向こうから剣を打ち合う音が聞こえ、その音を懐かしく思い近づいてみると騎士たちが訓練の最中のようだった。

 ゴーチェ家より人数が多くて体も大きく迫力がある。精鋭揃いなのがすぐに理解できた。


 騎士たちがいる向こう、すらりと背の高い黒髪の男が立っている。

 

(ジョスラン?)


 左腕を折り曲げて胸の前にベルトで固定し、右手には杖ではなく剣を握っている。


(姿勢、綺麗……。)

 重心は右に偏っているはずなのに、力を抜いて立っている後ろ姿は美しい。


 騎士の一人がジョスランに向かって行く。ラウリーヌは思わず手をぎゅっと握った。


 ジョスランはほぼその場から動くことなく相手の力を流すように剣を捌き、驚く速さで相手の脇に打ちつける。

 次の騎士の剣は斜め上へ弾き飛ばし、その次の相手はわずかに動いてかわした後、喉元に剣先を突いた。

 

「怖いですって!」

「刃を潰してある。大丈夫だ。」

「それでも勢いがあれば刺さりますよ。」

 

「ジョスランさま、水をどうぞ。」


 ジョスランが汗を拭き水を受け取ろうとしている時、青い顔をして両手を胸の前で握りしめているラウリーヌを見つけた。


 *


「……驚いたわ。」

「皆優しいのだ。けして私の弱点である左側や足は攻撃してこない。それでは訓練にならぬと言っているのだがな。」

 それはそうだろうと考えているとジョスランが「ラウリーヌもウズウズするのではないか?」と聞いてきた。

 

「し、知っているの?」

 

 考えてみれば当たり前だろう。婚約するにあたり、身辺調査は行っているはずだ。

「あいにく、この格好では無理だわ。」

 視線を下げてドレスを見る。

「では買いに行こうか。」

「はい?」

「視察ついでだ。君が動きやすいような服を買いに行こう。」

 ラウリーヌは目を丸くした。

「……私が剣を振るってもいいの?」

「前にも言ったね。私は南部を共に守ってくれる女性がよいと。私はこういう体だし、結婚相手は自分で自分の身を守れる人がよい。」


 明るく笑うジョスランの額から頬に流れる汗でさえも輝いて見え、ラウリーヌは胸の鼓動が高まるのを自覚し観念したのだった。


(ああ、私はこの人に惹かれているのだわ……。)

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