54時限目 ダイヤvsスペード
突如として無響さんの表情に戦慄が宿る。何が起きてどのような事態に陥ったのかは、無響さん本人にしか理解できていないようだった。
負け惜しみと言わんばかりにキレのある発言で鳴上くんを嗜める。
「やってくれましたね……」
「いやいや、そっちだってやりかねなかったっすよね!?」
「…………」
「あ、黙った」
図星をつかれたのか不意にそっぽを向く無響さん。状況がつかめないが、とりあえずスペードが窮地に陥ったのは理解できた。そして感知系と、盾一枚。最後に後退をして手番が終了した。
無響さんは暫くの間押し黙っていた。が、何かに気付いたのか、すぐにダイヤの元へ進み、アーツの分かっていない最後の一人の能力を出し惜しみなく披露する。
「アーツ――――【キャンセル】。【付加】の効果を戻します」
「っっっ!?!? そんなのアリっすか?!」
「ありもなしもないです。――――ですが思い返してみてこれで納得しました。サトル先生がどうしてこんなチーム分けにしたのかを」
無響さんの意味深な発言に、僅かに笑みが零れる鳴上くん。あの様子だと彼もまた分かっているかのような素振りだ。
チーム構成ばかりを考えていて、何故このような割り振りになったのかなんて考えてこなかった。【×(-2)】を同じチームに入れるのはまだ理解できたとしても、【同調】を同じチームに配属させる必要はあったのだろうか?
それに、ダイヤやスペードは仲の良い面子で構成されていたりする。無作為とは到底考えられない。
先生の考えていることなんて想像すらしなかったのだが……何か重大な要因が見え隠れしている気がする。
「確かに、あなたがそのアーツを持っているなら納得がいきます」
「でもこれで、無響さんの勝ち筋は正真正銘一つだけっすよ」
「そうでもないですよ? まだそちらが【パンドラ】を見つけられないなら、ワタシたちが見つけて誘導するだけです」
どこまでもやってやる、という精神を大いに表し、負ける意思は一ミリも見せない無響さん。ここまで行くといっそ清々しい。【リーチ】で盾の効果を増幅させて、三枚分の防御を形成して後退した。
ダイヤは感知以外にもう一人がアーツを使用して、残り三人はそれぞれ回復、盾と、更に進んでもないのに一歩後退を選んで終了した。
鳴上くんと氷室くんが必死に話し込んでいる様子がうかがえる。そして、一瞬だけチラリとこちらを見た。
気の所為かと思いたかったが、どうやらそうではないらしい。こちらの戦いに手伝ってくれている分文句は言えないが、何かを企んでいるように見えた。恐らく僕が王であることはバレていないだろうが、見つかるのも時間の問題だ。
そして拮抗した状態で2ターンが経過する。どちらも攻撃を食らいつつも回復を行い、盾を常に一枚以上は張り続ける長期戦にもつれ込んでいた。視線を凝らして観察するも、やはり誰が狼なのかは想像がつかない。そもそも、誰かしらのアーツを使用していて分からないのかもしれない。
(――――? 分からないってことは……)
ちょうどその時、僕らの方でハートとの決着が着いた。ハートの状況は今一よく掴めていなかったが、上手く出し抜いて勝ったらしい。
『僕のアーツは使わないのか?』
『鋼二のアーツは温存しておかないといけない。まだ戦いは残ってるんだからな』
『でも、僕の【逆境】は本来は剣司とのアーツの相乗効果で使うべきアーツだろ? 剣司のアーツが使い切られたら問題だ』
『大丈夫、なんとかやってみせるって』
僕のアーツ【逆境】……危険時にステータスがアップする能力だ。僕自身が王であるため、HPに起因しているのは分かっている。それに加えて、狼が同じチーム内に居れば恐らく自然と発動可能に至るだろうアーツ。それがないということは、僕のチームの中に狼はいないということでもある。
結果――――少し不安だったが、剣司は勝ったようだ。杞憂に越したことはないが、これ以上どこで僕のアーツの使いどころを見出すのか。
二つのチームの状況を剣司たちに伝えると、再度黙り込んで思考を巡らす面々。現在はそのまま第一勝利条件を満たすためにチームを潰しに行く方が先決だろうとは思うが……。幸い、【諸刃】も一回残っている。アーツの合技による超火力で一つのチームを屠ることだって可能かもしれない。
まぁまずは回復だろうから一巡は様子見だ。




