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天才様の唯物論  作者: 上海X
諸刃狼と虚構遊戯
56/116

53時限目 勝利条件

「ついにハート撃破! やりましたネ!」

「あぁ!」「絶好調だな!」

「しかも【諸刃】を一回残した状態だし! 巌のやり方には驚かされたけど、この調子で残りの二つもやってこうじゃん!」

「あぁ、颯の言うとおりだ。しかも、ハートを倒したおかげでハートの占拠していた領域が全部こちらの領域になった」


 ハートの領域を奪えたことにより、クラブの領域は47%。因みにダイヤは21%、スペードは18%といったところだ。

 剣司を含め全員で勝利を噛み締める。この調子でいけば本当に勝利も夢ではない。

 僕こと甲 鋼二はハートとの戦いはずっと指示待ち状態だったが、その間ずっとダイヤとスペードの戦いを観察していた。


 どちらも統率の取れた完璧なチーム構成。全員が全員のアーツを把握していたわけではないが、こちらに協力してくれたダイヤの感知系アーツに、無響さんの【パンドラ】、また同じチームに属する【付加】【テーブル変更】は特徴的であったため確認できていた。


 だが、それよりも衝撃的だったのは、僕では考えられないレベルの高度な殴り合いを行っていたことだ。


「アーツ」


 鳴上くんのアーツ。これまでは【スコープ】という噂が立っていたが、最近とある大会にて出場し、そこで【フェイク】を使用しているのを目撃した。無名の出場者ならばそういった騙し討ちができるのも納得したが、僕が目撃したのはそんなものではなかった。


「……!? 私のアーツが……!」

「っ!? まさか――――」

「ははは~……。最近このアーツで人のこと騙してばっかな気がするっす。

 そうっすよ。オレのアーツは【フェイク】じゃないっす。本当のアーツは【強奪】、そこらの生半可は【コピー】とは違う代物っすよ」


 鳴上くんがボソっと小言を発して頭をかく。隣で氷室くんが苦笑を向けていた。

 彼は無響さんを騙して、スペードのチームの【付加】を奪い取っていた。奪われた本人は当然使用ができなくなっている。それになんの意味があるのかその時は理解できなかったが、無響さんは一目散に理解していたようだった。


「……やはりあなたは分かってるんですね」

「そういう無響さんこそ、その口ぶりじゃ疑われてもおかしくないっすよ」

(…………?)


 恐らくだが、この二人は王である。改めてだが、このゲームには三つの勝利方法が存在しているのは神藤先生から先んじて告げられていた。

 第一勝利条件は『マスの70%を占拠すること』

 そして王のみ知ることのできる第二勝利条件――――それは『狼を倒すこと』だった。

 なんの変哲もない条件だ。わざわざ伝えることが禁じられる理由が分からない。それは恐らくどのチームの王も同じことを思っていたと思う。ハートの王――――鬼灯さんは分からないが、少なくとも金剛は意図を汲まず第一勝利条件を優先したに違いない。この二人がどう考えているか分からないが、僕としては不可解な点でもあった。


 何故第二勝利条件を知っているのか? 理由は至極単純明快。僕が王だったからだ。

 最初こそ統率するイワさんや先生に向かって口を開いた行動的なハヤさん。頭の回る剣司などに回っていくものだと思っていたため、僕に配役されていたのを確認したときは驚いた。

 因みに王だからといって第三勝利条件を知れるとは限らない。やはり狼ではないと知れないだろうが、恐らくは『自身の所属する王を倒すこと』なのだろう。それくらいは皆、薄々見当が付いている。これも隠す理由は一切分からないが、ブラフという可能性も捨てきれない。


 話がそれてしまったが、怪しい口ぶりをしている限りこの二人は王だ。だが怪しいのは、どちらのチームも狼がいる可能性を捨てきっている訳ではないのにとてもチームメンバーを信頼しているという点。それともあれか、狼が誰なのかわかっているのに倒していないのだろうか。

 どちらにしろ、僕のチームが言えたことではないが、もう少し怪しんだ方が良いのではないかと考えてしまう。まぁ、僕のチームは()()()()()()()()()()()


 考え事をしつつも、二つのチームの行く末を見る。

 ダイヤは【強奪】を使用する前に進軍をしたのが一人。残りは盾の形成を二枚と、《侵攻》で一歩後退して終えた。


 スペードの手番。【パンドラ】を使用済みで、しかも【付加】を奪われているためアーツの使用が自然と少なくなる。誰がなんのアーツを所有しているかは相変わらず分からないが、見ておかねば損だ。


「一歩引かれて……。ヒット&アウェイでもする気ですか?」

「あぁ。君の実力は見ているからな、こうすれば対象系のアーツを打つにも毎度行動一つ分が奪われる」

「厄介な……」


 氷室くんの発言に無響さんがチッ、と舌打ちした姿が見えた気がしたが、気の所為だと思う。そうじゃないと視線で殺されそうな気がした。

 悪寒がするも、皆は目の前のハートの金剛に意識を割かれているため、誰に縋るでもなく一人で寒気をなだめていた。


 無響さんが指示をして、ダイヤの方へ進む。そしてチーム内の一人がアーツの宣言をすると、無響さんが攻撃を行った。


 通常考えるならば、真っ向から殴り合いをするよりかは、どちらも進軍と後退で二回分の行動を失う代わりに三回の行動で勝負をするはずだ。まぁ、クラブとハートの戦いは完全に短期決戦を覚悟しているため話が違うが。


 ならば、だ。三回分の行動が残り、相手は盾が二枚。どう考えても近づいたならば三人が攻撃をしないといけないのだが……アーツを使用する始末。全く行動が読めない。そう思いつつ眺めていると、やっと無響さんからの攻撃。ダイヤの盾が軽々と剥がれ、一ダメージ入る。


「っ。やっぱ痛いっすね」

「そう言っておいて余裕の表情っていうのは何かの皮肉でしょうか?」

「いやいや」


 上辺の会話を取り繕いながら、状況を確認するダイヤのメンバー。

 スペードの一人が使ったアーツは【リーチ】……効力を伸ばすというアーツ。

 通常一ポイント分の攻撃の威力を三ポイントに伸ばし、盾を貫通して攻撃を浴びせていた。残りの一回の行動は盾を張り、あとは後退をした。


「って。そっちだってヒット&アウェイじゃないっすか!?」

「戦いの基本でしょう」

「なんか納得いかねぇっす……」


 ぶつくさ言いつつも、致命傷を負うことはない。お互い形式上は狼の存在を感知しているようだ。作戦を立てて、今度はダイヤが実行に移す。当然、最初の行動は進軍。

 鳴上くんは再度アーツの宣言をして、奪ったばかりの【付加】を使用してみせた。


「―――――♪」

「っっっ!!!」


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