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天才様の唯物論  作者: 上海X
諸刃狼と虚構遊戯
54/116

51時限目 犠牲はつきもの


「金剛、てめぇを潰す準備は整った」

「ホウ☆ 是非とも教えていただきたいですね☆ スペード、ダイヤ、クラブの三チームが協力してまで潰しにくるというその方法とやらを☆」

「言うかよ馬鹿が」


 イワさんが挑発するように金剛に向かって罵倒する。

 ワタシもムカついてたため、何か一言いいたいくらいだった。


 改めて確認しておくと、ハートの戦力状況としては

 戦力として数えないのが一名(術師で無為に占いをしているか《侵攻》を行っている)。

 銀杏姉妹、アーツは【×(-2)】、どちらも盾。

 金剛肉雄、アーツは【金剛殴殺】【トレース】、盾。

 盾三枚であるため、通常攻撃は受けることはないが、合技を食らえば致命傷だ。


 それに対してワタシたちクラブは

 イワさん、【同調】、騎士

 ハヤさん、【同調】、術師

 ケンジ、【諸刃】、騎士

 コウジ、【???】、術師

 そしてワタシが【フライハイ】を持った盾。

 

 ハートを負かすための情報共有が完全に終わり、いざ実行に入る。

 向こうも完全に臨戦態勢なようで、殺る気満々といった感じだった。

 ハートからの四倍威力となった【金剛殴殺】を受け止めた後で、HPが1となった王をハヤさんとコウジで回復する。

 そして空かさずケンジの【諸刃】でHPを2に戻し、盾を二枚形成。ワタシも追随するように盾を張り、再度【金剛殴殺】を受けても差し支えない体制を作り上げた。

 そして最後にイワさんの行動のみが残る。


『橘、俺に少し考えがあるんだが――――』

『……?』


 イワさんと橘が二人で内緒で話し込む。会話の内容はワタシたちには聞き取れなかったが、会話を終えるとケンジが鬼の形相でイワさんを睨みつける。

 ピリついた空気が伝わってきて、息をのんでしまう。


『却下だ。それよりも他に良い方法がある』

『いいや、橘の【諸刃】を使い切るより、こっちの方が勝率が高い』

『相手に気付かれたら終わりだ。しかも、それだとアンタが――――』

『頼む、行かせてくれ』


 イワさんの覚悟に、ケンジが気おくれしていた。その後はどうなったのかは分からない。ケンジこそ、ワタシたちに無断で己のアーツを使用していたのだから文句は言えなかったのだろう。


「アーツ――――【同調】」


 イワさんがその瞬間、アーツを宣言する。

 イワさんのみが変化に気付き、確かな感触を感じたのか口角を上げていた。

 誰に向かい、誰に作用しているのかはわからない。

 イワさんの状態を誰かに同調させたのか、はたまた誰かのもつ状況をイワさんとリンクさせたのか。ケンジは何をイワさんに言ったのだろうか。

 それはチーム内のメンバーにも教えてくれなかった。


 そしてクラブの手番が終わり、ダイヤの手番。


「い、言われたとところ、しっ調べてみたけどなな何もなかったよ」

「ありがとう! 続けてさっき言ってた場所も頼む!」

「う、うんっ」


 一つ目はスカだったらしい。残りは三回。どうにか見つけられることを祈るしかない。平気な顔でケンジはダイヤの協力者に軽快な声をかける。どんな心境かは分からないが、恐らくは決断を後悔しているのだろう。


 そして計画の二巡目。ハートは相変わらず攻撃の手を止めない。なりふり構わず殺すつもりだ。当然、残り三回で見つけられなければ終わりなのだから、殺しにかかるに決まってる。あちらのアーツの使用制限はわからないが、攻撃を続けている限り、余裕はありそうだ。

 こちらも応戦して回復と盾の形成。イワさんの行動をいつの間にか終えていたらしい。見た所違和感は感じないし、表情も相変わらず毅然としている。


『本当に四回で倒す手段はあるのか?』

『……? ねぇよ?』

『はぁっ!? どうすんのよ!? 見つけられなかったらあたしたち負けなのよ!?』

『八マスの中に【パンドラ】が入っていて、それを見つけだす。しかも場所はランダムで一つ――――うん、詰んでる』

『詰んでるって場合じゃないでしょ!?』

『まぁ寿命を延ばすって手段もあったんだがなぁ…………』


 ケンジは遠い眼を向けて乾いた笑いを見せてきた。ハヤさんはそういった歯切れの悪いことにとても敏感で、すぐにキレ散らかしていた。


「こっここ今回のもダメみたい……つ、次も試してみるね」

「すまん、感謝する!」

「おやおや☆ あれだけ啖呵を切っておいて随分と余裕のない表情で☆」

「うっせぇよ金剛。ってか初対面でこれだけ周りにキレられるのも大概だぞお前」

「勝利に対する美徳と言ってください☆ あなたたちにはそれが足りない☆」

「ハッ。言ってろ。最後に勝つのはオレらだ」


 ケンジは金剛を挑発しつつ、頬に垂れる汗を拭っていた。今のところの一番の功労者はケンジだ。ワタシはせいぜいアーツを使ったに過ぎないし、他の面々も頑張っている。会話をしつつ思考を回していると、すぐにも手番が回ってきた。

 またも回復と盾のループを行い、イワさんは単独で誰にも気づかれないように行動をする。

 ――――その時、一瞬だけイワさんの行った行動が見えた。チーム内ですら分からない小さな小さな声で、呟いたのは。


「――――《役職》」


 そう、聞こえた。

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