51時限目 犠牲はつきもの
「金剛、てめぇを潰す準備は整った」
「ホウ☆ 是非とも教えていただきたいですね☆ スペード、ダイヤ、クラブの三チームが協力してまで潰しにくるというその方法とやらを☆」
「言うかよ馬鹿が」
イワさんが挑発するように金剛に向かって罵倒する。
ワタシもムカついてたため、何か一言いいたいくらいだった。
改めて確認しておくと、ハートの戦力状況としては
戦力として数えないのが一名(術師で無為に占いをしているか《侵攻》を行っている)。
銀杏姉妹、アーツは【×(-2)】、どちらも盾。
金剛肉雄、アーツは【金剛殴殺】【トレース】、盾。
盾三枚であるため、通常攻撃は受けることはないが、合技を食らえば致命傷だ。
それに対してワタシたちクラブは
イワさん、【同調】、騎士
ハヤさん、【同調】、術師
ケンジ、【諸刃】、騎士
コウジ、【???】、術師
そしてワタシが【フライハイ】を持った盾。
ハートを負かすための情報共有が完全に終わり、いざ実行に入る。
向こうも完全に臨戦態勢なようで、殺る気満々といった感じだった。
ハートからの四倍威力となった【金剛殴殺】を受け止めた後で、HPが1となった王をハヤさんとコウジで回復する。
そして空かさずケンジの【諸刃】でHPを2に戻し、盾を二枚形成。ワタシも追随するように盾を張り、再度【金剛殴殺】を受けても差し支えない体制を作り上げた。
そして最後にイワさんの行動のみが残る。
『橘、俺に少し考えがあるんだが――――』
『……?』
イワさんと橘が二人で内緒で話し込む。会話の内容はワタシたちには聞き取れなかったが、会話を終えるとケンジが鬼の形相でイワさんを睨みつける。
ピリついた空気が伝わってきて、息をのんでしまう。
『却下だ。それよりも他に良い方法がある』
『いいや、橘の【諸刃】を使い切るより、こっちの方が勝率が高い』
『相手に気付かれたら終わりだ。しかも、それだとアンタが――――』
『頼む、行かせてくれ』
イワさんの覚悟に、ケンジが気おくれしていた。その後はどうなったのかは分からない。ケンジこそ、ワタシたちに無断で己のアーツを使用していたのだから文句は言えなかったのだろう。
「アーツ――――【同調】」
イワさんがその瞬間、アーツを宣言する。
イワさんのみが変化に気付き、確かな感触を感じたのか口角を上げていた。
誰に向かい、誰に作用しているのかはわからない。
イワさんの状態を誰かに同調させたのか、はたまた誰かのもつ状況をイワさんとリンクさせたのか。ケンジは何をイワさんに言ったのだろうか。
それはチーム内のメンバーにも教えてくれなかった。
そしてクラブの手番が終わり、ダイヤの手番。
「い、言われたとところ、しっ調べてみたけどなな何もなかったよ」
「ありがとう! 続けてさっき言ってた場所も頼む!」
「う、うんっ」
一つ目はスカだったらしい。残りは三回。どうにか見つけられることを祈るしかない。平気な顔でケンジはダイヤの協力者に軽快な声をかける。どんな心境かは分からないが、恐らくは決断を後悔しているのだろう。
そして計画の二巡目。ハートは相変わらず攻撃の手を止めない。なりふり構わず殺すつもりだ。当然、残り三回で見つけられなければ終わりなのだから、殺しにかかるに決まってる。あちらのアーツの使用制限はわからないが、攻撃を続けている限り、余裕はありそうだ。
こちらも応戦して回復と盾の形成。イワさんの行動をいつの間にか終えていたらしい。見た所違和感は感じないし、表情も相変わらず毅然としている。
『本当に四回で倒す手段はあるのか?』
『……? ねぇよ?』
『はぁっ!? どうすんのよ!? 見つけられなかったらあたしたち負けなのよ!?』
『八マスの中に【パンドラ】が入っていて、それを見つけだす。しかも場所はランダムで一つ――――うん、詰んでる』
『詰んでるって場合じゃないでしょ!?』
『まぁ寿命を延ばすって手段もあったんだがなぁ…………』
ケンジは遠い眼を向けて乾いた笑いを見せてきた。ハヤさんはそういった歯切れの悪いことにとても敏感で、すぐにキレ散らかしていた。
「こっここ今回のもダメみたい……つ、次も試してみるね」
「すまん、感謝する!」
「おやおや☆ あれだけ啖呵を切っておいて随分と余裕のない表情で☆」
「うっせぇよ金剛。ってか初対面でこれだけ周りにキレられるのも大概だぞお前」
「勝利に対する美徳と言ってください☆ あなたたちにはそれが足りない☆」
「ハッ。言ってろ。最後に勝つのはオレらだ」
ケンジは金剛を挑発しつつ、頬に垂れる汗を拭っていた。今のところの一番の功労者はケンジだ。ワタシはせいぜいアーツを使ったに過ぎないし、他の面々も頑張っている。会話をしつつ思考を回していると、すぐにも手番が回ってきた。
またも回復と盾のループを行い、イワさんは単独で誰にも気づかれないように行動をする。
――――その時、一瞬だけイワさんの行った行動が見えた。チーム内ですら分からない小さな小さな声で、呟いたのは。
「――――《役職》」
そう、聞こえた。




