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天才様の唯物論  作者: 上海X
諸刃狼と虚構遊戯
47/116

44時限目 人狼陣取り


「─────は?」


 そんな声が出たのは不覚にも私だった。


「期末試験って……この教科に存在したの?」

「当然だ。これはあくまで授業――――点数がつき、優等生と劣等生に分けられる。どんな科目でさえ、怠けてる、技術力の乏しい奴は落第生だ。

 だがまぁ、ペーパーテストなんて面白くないからな。ここはゲームでジャッジさせてもらおうと思って判断した。勿論、難易度は常人レベルとは思うなよ」


 その上から余裕そうな口調で説明する先生に、私は少し落ち着くと同時に、またも嫌味のある表情を向ける。


 他の生徒も、これ以上無闇に時間を食うのを嫌ったようで、先生からのルールの概要を待った。

 ……相変わらず、話の早いゲーム狂いの人達である。


「ルールとして、人狼と陣取りゲームを組み合わせたモノだ。

 一つ、メンバーは騎士(攻撃)(防御)術師(回復 兼 占い)から選ぶこと。また、このクラスの中でランダムで選ばれたヤツは追加で王と狼の役職を得る。王はチームに一人、狼は全体で一人、それぞれ匿名性でな。

 二つ、ハート→スペード→クラブ→ダイヤの順で八×八の陣取りゲームを行う。

 役の説明は省くが、勝利条件は三種類。一つは全てのマスの70%を自チームの色に染め上げること。二つ目は王のみが、最後は狼だけが知っている。また今回、後者二つの勝利条件を他人に口外することは禁止とする。敗北条件は王が倒されることな」

「…………ふむ」


 淡々と述べられる説明に、付いているものと付いていけないものがちょくちょく現れる。かくいう私とて全てが理解できている訳ではなかった。因みに私のいるチームはクラブのようだ。


 それを端に、スペード(五人中五人女子という圧倒的姦しさ)から手をあげた人物――――無響透乎は、妖艶な笑みを浮かべて先生に質問をする。


「サトル先生。狼、というのは」

「あぁ、狼に関してだけは先に言っておこう。まぁ、よくある()()()()だ。狼の勝利条件は伏せさせてもらうが、当然チームにいればリスクや害をなす存在だ。《叛逆》という行動を持っていて、手動で対象を選択し、王に当たればHPを1ポイント奪える。

 因みに王のHPは3ポイント、狼は1ポイントな」

「要は、陣取りで戦いながらチームの内側では狼とも睨み合わなきゃいけない、と」

「その通りだ。夏燐(かりん)


 的確な発言で補助をする女子生徒は、返答に正しくこくりと頷く。

 後々に出てくる詳しい事柄は自力でなんとかするとして、先の思いやられそうなゲームに冷や汗を垂らすのみであった。



 ♣️♣️♣️



「さて、まずは役の選択デスネ!」


 そんな朗らかな声で先導したのは、柔和な表情で碧眼を向けるリルク。話していると発音は普通のそれとは若干異なっていて、会話をしていると違和感が沸いてくる。


 おおよその自己紹介を終えたあと、戦略と方針を決める。

 自ターンではそれぞれ、《侵攻》《役職》《アーツ》が行えるらしい。行動数はチームの構成人数と同じ…………つまりは五回だ。


「じゃあ、今の内にアーツと役の確認ぐらいはしないか? そのくらいなら許されてるし、何より戦略の幅も広がる」


 チームの中の一人、甲という男子生徒が喋る。

 アーツというのは固有の端末に存在する特殊なスキルというもの。スペードにいた彼女こそ、規格外なモノと言えるが、私に関してはまだ常識的だろう。


 その甲の声に私を含めた四人は注意を割く。敵チームに知られれば多少のデメリットになるが、基本的には味方のアーツは知っておいて損はないだろう。

 だが、それはあくまで自チームの中に裏切り者()がいなければ、の話である。


「アタシは反対。だってこの中に狼がいる可能性がある訳でしょ? 四分の一の確率でこの中にいる。それなら敵に情報を回すこともできるじゃない」

「颯の意見に賛同する気は毛頭ないが、オレも大いに反対だ。このゲームに限ったことではなく、将来的に敵に回った時に損失になる。晒したいなら好きに晒していればいい」

「っおいおいお前ら……」


 館石という思わぬ賛同者がいたことは意外だったが、言わないにこしたことはないだろう。橘と甲は口を結んでなにか言いたげな様子だったが、私たちの反応を見て言葉にするのを止めた。リルクは相変わらず空気の読めない様子でニコニコとしている。こういうタイプが一番苦手なのだが……言葉にするのは止めておく。


「もー二人はホントツンデレですネ~。じゃあワタシはアーツ伝えておきまス! ワタシのアーツは【フライハイ】。対象を選択して飛ばすコトができるアーツでス! 見てみると分かりまスが、いろいろなコトに使えますヨ!」


 最初の言葉に苦言を呈さざるを得ないが、これ以上ギスギスするのもどうかと思ったので言わないでおいた。ちょうど、館石も私と同じで眉間に皺を寄せている。

 残りの二人も緊張しい様子から、少し柔和な表情に戻った。リルクと一緒にアーツの情報共有を行っている。いくら同じチームになったからと言って、少し油断しすぎなんじゃなかろうか。

 言葉にしないだけでどんどんと表情に出てしまう。他人といるとよく不機嫌そうな顔になってしまうため、誤解を生みやすい。思考を振り払うように頭を振って、今回のゲームのルールを改めて確認した。先生から送られた『遊戯』専用のゲームステーションが入ったタブレットから、今回のゲームの概要をスクロールして見る。


「勝利条件が三つって言っても、大方狼専用の勝利条件が一つを占めてるだろうから、私たちが狙うのは二つってことになるわね」

「王のみが知る勝利条件っていうのも、少し不可解だが……おおよそ『狼の追放』か、それに類似した条件が妥当なところか」


 私の発言に合わせて勝手に補足を入れてくる館石に、ムッとした表情を向ける。仕切りたがりはこれだから嫌だ。

 気付けば残りの三人も私たちと同じように概要を確認している。ただ一人、橘のみが訝しんだ様子でタブレットを注視していた。他の二人は、相変わらず能天気だ。


「そう簡単なら先生もわざわざ隠すようには言わないと思うけど……」


 ぽつり、と橘がそんな言葉を発する。言い方からしてとても王のように見えるが、実際はどうだかわからない。また、今回のゲーム、攻撃や防御などは自他のチームの王に自動で照準が当てられるようだ。通常のルールを知らないためどうこう言えたことではないが、何か引っかかる点がある。


 周りのチームを見る感じ、どこを見ても調和のとれたチームである。怪しい様子の生徒はあまり見受けられない。それもそのはず、二、三ヶ月も没頭するほどゲームにのめりこんでいる人たちにとってブラフや駆け引きはお手の物だろう。

 そんなことを考えていると、先生の方からゲーム開始の合図がきた。


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