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天才様の唯物論  作者: 上海X
雷君子と弾幕遊戯
13/116

12時限目 雨ニモマケズ、神ニモマケズ

「うーい、授業やるぞ~」


 ガラガラと扉を開けて教壇へ進む。眠たげで瞼を閉じていたせいか、ちょうど左目しか見えていなかったせいか、生徒の反応に気付くことが難しかった。

 皆唖然とした表情で俺を見ていることに。


「せ、先生……どうしたんですか……」

「メンヘラにでも刺されたんですか?」

「え、メンヘラ…………良いなぁ……」


 包帯で右目の辺りをぐるぐる巻きにしていたのを察知して、彼等は一様に驚いていた。

 気がついてなんとか誤魔化す。


「そう大して問題ないから安心しとけ。それよかお前ら、次のゲームについてだが」


 生徒の悶着を素通りして我が事を優先する。

 平常運転だったため、そんなに違和感を持つことなく傍聴の姿勢に戻った。


「前回はボードゲームで試行錯誤の一方だったが、今回からはfpsをやっていくつもりだ」

「っしゃ、賛成~!」

「ぅえぇ……ちょっと不安……」

「ヤンヘラも…………アリ……」


 じゅるり、とでも言いそうなヤンヘラに垂涎の顔をして恍惚そうに明後日の方向を見つめている男子生徒一人を放置し、決を取る。

 案に決を採ると、結果は半々と言った所だった。

 特に、fpsが好きな女子生徒が多い訳でもなく、男子生徒とて全員が満場一致という訳でもない。


 困ったな……想定以上に綺麗に割れてしまった。俺が今この眼の状況である以上、無理に酷使するわけにもいかないが、決が取れて速攻fpsに移行しようとしていた計画が丸つぶれである。

 そうこう決めあぐねていると、金髪の男子生徒が挙手をした。


「? どうした、鳴上」

「オレ、弾幕ゲー(stg)やりたいっす!」

「──────良いな」


 決を取り、一気に賛成が九割を越える。

 残る生徒も特段嫌そうな顔をしている訳ではなかった。

 弾幕ゲームならfpsほど眼の酷使はしないだろうし、大丈夫だろう。


「んじゃ、授業を始める」

「──────サトル先生」


 だが、俺の言葉を遮り、一人の女子生徒は席を立った。



 ×××



「そういえば拓真さん、結局言わなくて良かったの?」

「……?」


 空は見たところ曇天……というよりも、今にも雨が降りだしそうな悪天候だった。

 開店準備をしながら、妻の発言に疑問符を浮かべる。

 だが、内容を聞くまでもなく、すぐに知の生徒の件だと気付いた。


「あぁ、トップにいる彼女のことか」

「多分だけど…………あの娘、今の彼を見たら泣くか、戦うかだと思うけど……」

「だろうね。だけど、それも一興だとは思わないかな?」


 コップを白い布で吹きながら、妻は天井を見やり暫し考え込む。ファンは回っているも、昼間から照明をつけていることは珍しく感じられた。

 だけれどやはり、渋面を作った妻は首を横に振った。

 此方は情けなく、微笑を作る。


「此方としてはね、知がどう戦うか、楽しみで仕方ないんだ」

「例え負けたとしても……?」

「アイツが? 無理無理、負けれるハズがないんだから」

「全くもう…………」


 ×××


 ───────一方。


 教室内は騒然としていた。

 モニターに投影されていた、シューティングゲームの有り様。

 二分されており、片方は先生の、もう片方はとある生徒のである。


 勝敗は決していた。


 そしてその生徒は悠然と、瞳を閉じて唇を横一文字に閉じていた。

 決して負けて悔しがっているような様ではない。だが、勝っているような表情にも見えなかった。

 黒髪ストレートを一揺すりもすることなく、真っ黒な双眼を呼吸とともにゆっくりと開ける。


 神藤先生はというと、いつものように椅子に腰かけてスマホを手にしていた。

 が、表情は読みとくに値しないほどに、眼を腐らせ顔を俯かせている。

 まるで教師とは思えないほどに。


 雨が強く降りだす。

 灯りもつけないその教室では、薄暗がりでモニターの僅かな発光に眼を奪われるだけだった。


 生徒達は唖然と、黙りこくるしかない。

 今の彼等にとっては、時間という概念はどうでもよかった。場所という概念は考えることでもなかった。


 とある生徒が立っている側の画面には、大々的に『WIN』の文字が投影され、


 彼の前には──────『LOSE』の文字が、浮かんでいたのだから……

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